3月8日、日本ユニシスは、インバウンドビジネスに向けた取り組みについての説明会を開催した。同社は訪日外国人の急増にあわせ、告知、ストレスフリー、インフルエンスというフェーズにおいて、ICTを活用した観光サービス向けソリューションを提供。訪日外国人をワンストップで「おもてなし」する環境を整える考えだ。
訪日外国人の急増で「おもてなし」の強化が急務
説明会に登壇した日本ユニシス エコシステム推進事業部・藤田優事業部長は、「東京への人口一極集中が進み、大都市と地方の格差拡大が顕著になる中で、日本ユニシスでは、地方における安定した雇用を生む産業、企業の創出のほか、地方への新しい人の流れを作り、若い世代の結婚、出産、子育ての希望をかなえること、そして、健康寿命の延伸といったことを実現するための『地域プラットフォーム』が必要であると考えている。しごと、ひと、まちという観点から、デジタル/ライフイノベーション関連事業に取り組んでいるが、しごとの領域においては、越境EC事業、観光エコ事業の提案を行なっており、地方創生におけるインバウンド施策に取り組む」とした。
政府は、2020年までに訪日外国人数を2000万人にする目標を掲げていたが、2015年には、すでに1974万人に達している。前年は全世界で22位だった外国人訪問者数は、今年は13位ぐらいにまで一気に順位が上昇すると予測されている。
また、日本における観光名目のGDPは25兆円に達し、構成比は5.2%。建設業と同等規模に当たるという。観光による雇用誘発効果は419万人で、全就業者の6.5%に当たる。調査によると、訪日外国人の一人当たりの旅行期間中消費額は17万6000円。前年の15万1000円から2万5000円も上昇。特に「爆買い」といわれる中国人観光客の場合は25万円前後にのぼるという。2015年の消費総額では3兆4771億円となり、前年比71.5%増と急速に増えている。
国をあげた観光立国実現に向けた施策も活発化している。政府では、観光立国推進閣僚会議を立ち上げ、現在、観光立国実現に向けたアクション・プログラム2015を実行し、このなかで、全国13地域において観光圏を認定。さらに、広域観光周遊ルート形成促進事業により、テーマ性、ストーリー性を持った魅力のある観光地を結んだ7つの周遊ルートを制定。これらを通じて、地方創生に向けた観光地域づくりを目指しているところだ。
「現在の成田空港~東京~箱根~富士山~名古屋~関西~関西国際空港を巡るゴールデンルートに代わる、新観光ルートを創造するための地域組織として、DMO(Destination Marketing/Management Organization)が注目を集めており、新しい観光施策が生まれようとしている。民間主導型、行政支援型のDMOなど、新たな社団法人の設立や、いくつかの地域が連携して組織化するといった動きも出ている。また、地方創生加速化交付金の交付も、DMOの動きを活発化させることになるだろう」(日本ユニシス エコシステム推進事業部サービス事業企画部・高橋潤一部長)とし、これも地方活性化につながると予測している。
厳しい財政、言葉の壁、雇用のコストなど壁は山積
だが、これまで国や自治体の観光施策は、単純なプロモーションが中心であり、受入体制の整備は外国人数の増加に追いついていないのが実状だ。また、地域の観光を促進する観光協会では、地域で推奨する店舗などについて公平性が求められるため最適な案内ができにくい環境があること、地方に行くほど財政面で厳しい状況にあり、投資に限界があること、観光協会にマーケティング立案やグローバル対応に長けた人材がいないといた問題が浮き彫りになっている。さらに、隣接する地域が観光面で競合し、連携した提案が行なわれていないという課題も出ている。
一方で、訪日外国人が来日の際に期待しているのは「日本食を食べること」、「ショッピング」、「自然・景勝地観光」、「日本の歴史、伝統文化体験」が多い。また、困りごとでは、「無線LAN環境の整備遅れ」、「言葉の壁によるコミュニケーションの難しさ」、「公共交通情報が入手しにくい」といった点が上位にあがっている。さらに、観光協会では、「提供する情報の多言語化」、「外国語対応が可能な職員の確保」、「最新観光情報への更新」などが課題になっている。
「受け入れ事業者にとっては、外国人を積極的に受け入れたいとする回答は、24.9%に留まっている。調べてみると、メニューを英語化すると、外国人からさまざまな質問を受けることになり、外国人への接客に時間がかかる。回転率が悪くなり、顧客単価が下がる原因につながるという背景がある。また、多言語対応できる従業員の雇用に、コストがかかるという点も見逃せない。こうした課題を解決するには、単にメニューを英語化するだけでなく、メニューから注文までを自動化するなど、外国人の快適さと、従業員の業務負担の軽減が求められている」とした。
観光立国を実現する日本ユニシスのソリューション
日本ユニシスでは、増加する外国人観光客への対応とともに、観光立国を目指す日本における課題を解決するために、各種ソリューションを提供している。
告知という点では、書籍「武士の食卓」のコンテンツを、Facebookを活用して海外ユーザー向けに発信。2015年9月時点で約94万人が参加。さらに海外ユーザーに対して、電子書籍の有料販売を開始している。また、ミラノ万博の日本館アプリを提供。展示との連動だけでなく、帰ってからも楽しむことができる事例として注目を集めた。
また、ストレスフリーの観点では、次世代観光ガイドサービスを提供。デジタルサイネージやタブレットを活用して、観光情報や地域情報を提供。さらに、観光事業者からのリアルタイム情報をダイレクトに提供することで、旅行者が当初予定していなかった「プラスワントリップ」の提案を可能にするという。
次世代誘客・接客サービスでは、「Wavi Savi Navi(仮称)」により、食文化や商品価値を提案するようなストーリーを交えたメニューを提供。サービス事業者側にとっても、負荷を軽減しながら価値提案が行えるという。これは今後製品化していくことになるという。
さらに、国際プリペイド決済サービスでは、大日本印刷との連携により、カード製造、発行、BPOおよびマーケティングなどの関連サービスを、カード発行会社向けに提供。国際ブランドプリペイドのイシュア機能をクラウドサービスとして提供するほか、Visa、マスターカード、JCBといったマルチブランドに対応。PCI DSSの認定を取得した安全性の高い設計、運用、管理を提供できるという。
一方で、インフルエンスとしては、扇子を用いたICTソリューションの実証実験を静岡で実施。涼むという扇子本来の機能のほか、カメレオンコードを埋め込むことで、各種情報や支払いなどの付加価値を、扇子を通じて提供するという。さらに、海外販路開発プラットフォームにより、訪日外国人や海外消費者によるJAPANブランド企業の接点を高め、来日前に興味を高め、来日時の体験や買い物による接客と、海外ECによる販売を促進するプラットフォームを提供しているという。