3月2日、EMCジャパンは2016年に注力するオールフラッシュの戦略に関する発表会を開催した。超高速な共有ストレージとして長らく開発が進められたDSSDがいよいよ登場したほか、基幹系ストレージのVMAXにもオールフラッシュの新製品が投入された。
パフォーマンスを再定義するDSSD D5の革新性
今回、発表されたのは超高速な共有ストレージ「DSSD D5」とVMAXのオールフラッシュモデルである「VMAXオールフラッシュ」の2製品となる。
開発に約5年を要したというDSSD D5は、最大1000万のIOPS、100GB/sのスループット、平均100マイクロ秒の低遅延を実現する超高速なオールフラッシュアレイ。5Uの筐体に36枚単位のフラッシュモジュールを複数搭載することで、最大144TBまでの拡張が可能になっている。また、NVMe PCI Gen3ケーブルで最大48クライアントと直接接続できる共有型ストレージとしての特徴も持ち、クライアントのメモリからのダイレクトアクセスを実現。超高速と言えるパフォーマンスと共有ストレージのメリットを両方とも享受できる。
米EMCのDSSD部門のマイケル・レオン氏は、DSSDの開発背景を説明するため、データへのアクセス時間についての課題について説明する。
アクセス時間を考えると、データはCPUに近い方がよい。CPUからSRAMキャッシュへのアクセス時間を1秒で表わすと、DRAMへのアクセスは10秒、従来型のストレージへのアクセスは1ヶ月かかる計算となる。しかし、CPUに近ければ近いほど置けるデータ量が小さくなるのが課題。CPU内のキャッシュでは10K、SRAMでは10MB、DRAMでも1TB程度だ。
これに対して、現在ではオールフラッシュアレイとサーバーアタッチフラッシュという選択肢がある。しかし、CPUからSRAMまでを1秒とする相対的なアクセス速度で見ると、オールフレッシュアレイをもってしても1週間程度のアクセス時間がかかるという。もちろんサーバー内蔵型のフレッシュであれば10時間程度で済むが、複数クライアントでの共有はあきらめなければならない。こうした課題を解消する超高速なオールフラッシュアレイがDSSD。レオン氏は「どうすればCPUの近くにデータを配置しつつ、共有ストレージのメリットを享受できるがテーマだった。5年間、絶え間ない技術的な努力が行なわれた」と語る。
リアルタイムな分析やシミュレーションに効果を発揮
DSSD D5は高速フラッシュのアレイ化やPCIe Gen3との直結などハードウェア面での工夫のほか、ソフトウェアやカーネル、ハードウェアなどでの処理をバイパスし、オーバーヘッドを排除するアーキテクチャの採用で、こうした課題を解消する。データベースを前提とした高速なブロックストレージとして利用できるほか、HDFSとして利用するためのHadoopプラグイン、DSSDの能力を最大限に引き出す各OS用のFlood APIも用意される。
ハードウェアの冗長性はもちろん、共有ストレージとしての高い信頼性も徹底している。独自の「スペースタイムガベージコレクション」を採用することで、搭載されている1万2000個以上のNANDフラッシュにデータを分散し、フラッシュの長寿命化を実現。また、NANDチップ単位で利用状況をコントロールするほか、三次元RAIDを採用することで高い信頼性を確保しているという。
実際、Oracle RACで検証したところ、530万(8K)IOPSを叩きだし、従来の最速に比べて3倍の速度を実現。性能を稼ぐために多くのストレージを用意しなければならなかった従来に比べ、1/25のスペース、2/3のTCOで済む点も大きい。また、Hadoopにおいても1/3のストレージで、10倍の速度を実現。こうした革新的なパフォーマンスによって、不正検知やリスク分析、予測モデリング、金融や官公庁、石油・ガス、ライフサイエンスなどでのあらゆるシミュレーションなどがリアルタイムに実現できると、レオン氏はアピールする。
拡張が容易なVMAXのオールフラッシュも投入
一方の「VMAXオールフラッシュ」は、同社の基幹システム向けハイエンドストレージSymmetrix/VMAXシリーズのオールフラッシュ版。「VMAX 450」と「VMAX 850」の2モデルが用意され、フラッシュに最適化されたパッケージで提供されるという。
VMAXオールフラッシュは、従来のVMAXのようなサービスレベル(SLO)に応じたパッケージではなく、エンジンとフラッシュをパッケージ化し、拡張を容易にした。小さく始めて、大きく使うことができ、柔軟なスケールアップ/スケールアウトが可能になっている。また、ソフトウェアもOSや管理、各機能がパッケージされており、「450F/850F」がおもにローカルレプリケーション、「450FX/850FX」がおもにリモートレプリケーションに対応するフィーチャーが搭載される。インラインのデータ圧縮や暗号化などのサービスも今後サポートされるという。
発表会で登壇したEMCジャパン 永長純氏は、同社のオールフラッシュ戦略を説明した。昨今のモダンデータセンターにおいては、Software-Defined、スケールアウト(Scale-Out)、クラウド対応(Cloud Enabled)、信頼性(Trusted)などの要素と共にフラッシュの活用が重要になると説明。特にフラッシュの低コスト化が進んだ2016年はオールフラッシュ元年となり、HDDは大容量なアーカイブ用途のみになると予想する。
同社は2000年代前半からエンタープライズ向けフラッシュの導入を進め、フラッシュとHDDとの階層化を技術的に進めてきたが、現在はTCOの観点を立っても、オールフラッシュ化を加速させる時期に差し掛かっているという。「フラッシュのMTBFはすでにスピンドル系のHDDに比べて3倍くらい高くなっている。もはやSSDをフル搭載した方がTCOが安くなる。オールフラッシュ化を使わない理由はない」と永長氏は語る。
とはいえ、既存のストレージをそのままフラッシュ化すればよいわけではないという。「いろんな業務要件によって、適材適所のオールフラッシュが必要になる」とのことで、スケールアウト型、低遅延型、信頼性重視型などさまざまなオールフラッシュアレイ製品を取りそろえているという。