シリンダー型デザインから試行錯誤が始まった
ちなみに追加モジュールは当初の考えでは、下部に装着するのではなく、下部を筒状にして、そこに側面から抜き差しする構造を検討していたのだという。となると外見的にもYOGA Tabletに近くなっていたはずで興味深い。
ただそうすると、取り付けのためのスペースが大きくなり、携帯性(特に薄さ)を損なうことになる。そこで今回のようなコンセプトが選ばれた。YOGA Tabletはコスト面で有利な筒状バッテリーを置く際、ヒンジと一体化すれば有利になるという点がデザインのスタートになっている。発想としては対照的だ。
ThinkPad X1 Tabletでは、筒を本体に一体化すると大きくなるので、筒(実際には直方体になったが)ごと取り外せるようにしてしまおうと考えている。
強度と着脱のしやすさを検討するため、モジュールの固定にはラッチを使用している。エアータイトコネクションデザインと名付け、スーツケースの構造を参考にしているとのこと。
ちなみにThinkPadシリーズではおなじみの拷問試験はこのモジュールを取り付けた状態でも同様の基準で実施している。弱くなりがちな接合部分が折れてしまわないかに加えて、スタンドの開閉試験や誤って手をついてしまうなど、不慮の負荷がかかってしまった場合を想定した試験なども取り入れているとのことだ。拡張性の確保はThinkPad X1 Tabletの特徴だが、それをThinkPadの品質でやるという点が重要なのだ。
薄さと放熱性の両立、ハイブリッドカーを目指す
次にパフォーマンスについて。まず注目したいのはファンレスであるという点だ。これはCore mを搭載したことが大きいが、同時にチャレンジとなったのが、ファンなしでどれだけパフォーマンスを落とさずに設計できるかだという。
Core m選択の理由として木下氏はPCMarkのようなビジネス系アプリケーションではCore iとCore mの性能は僅差である点に言及。3D系は当然劣るが、ファンが不要で消費電力も10~20%低減できる。用途を考えればCore mのメリットが大きいとした。木下氏の言葉を借りるなら、ハイパフォーマンスだが燃費が悪い自動車ではなく、エコなハイブリッドカーを目指したという。
放熱に関しては、ヒートシンク部分にベイパーチャンバー(Vapor Chamber)を使用。中空構造のヒートシンクの内部に揮発性の高い液体を入れ内部を循環させる(熱源では気体、放熱される部分では液体に戻るを繰り返す)。ヒートパイプよりも薄型化するために選択した。この厚さは非常に薄く0.5mm程度。仕組みとしては、効率よく冷却できるが、コストは高い。Helixでも用いていたが、含水層を追加した3層構造としている。
cTDPは4.5Wに設定している(Skylake世代ではTDPをカスタマイズできる)が、クラムシェルとして、テーブル上やデスクトップ環境で利用する場合は本体に手で触れないし、放熱面でも有利であるため、より高い数値に設定しているという。