ビデオは写真と両立できる
iPhoneのカメラで特筆すべき機能と感じるのはビデオです。iPhoneのビデオは手軽でキレイを両立している点で、使わない手はない、と思います。
iPhone 6sシリーズには写真に合計3秒の動画がくっつくLive Photosが搭載されました。なんとなく、iPhoneのビデオ機能を今以上に使ってもらうべく、写真とビデオの橋渡しをしようという意図も感じられます。iPhoneでのビデオ撮影は武器になると踏んでいるのでしょう。
ビデオは撮影も、見栄え良くする編集も、ハードルが高いものだと思いがちです。しかしながら、別に編集しなくてもよいんじゃないか、とも思います。iPhoneのカメラロールに写真と混じってビデオが保存されていても、写真をめくりながら時々ビデオが再生されるという感覚で、十分そのときの思い出を振り返ることができるからです。
ビデオを撮影しながら、画面下部にあるシャッターボタンを押せば、そのまま静止画も撮影することができますし、撮影したビデオを再生しているときにポーズをかけて、画面キャプチャをすれば、手軽に静止画を切り出すこともできます。また、短いビデオであれば、メッセージなどに添付することもできます。
ビデオで撮影しやすいと感じた被写体は、やはり動く対象である動物や虫、そして海の風景なんかも楽しむことができました。
iPhoneのカメラにそろそろ欲しい機能とは
手元にある道具でなんとかする、という点もまたクリエイティビティを発揮する一つの方向性ではないかと思います。単焦点レンズの一眼レフカメラが写真を上達させるように、iPhoneのカメラによる制限も、創意工夫の源になっているように思うからです。
その一方で、その道具ではいかんともしがたい問題もあります。たとえば動画非対応のカメラで動画を撮ろうとしても、もちろんなんともならないでしょう。ちょっと極端な例ではありますが、どんな機能が加われば、新しい可能性が開けるかを考えるのはなかなか面白いと思いました。
単純に考えて、写真→ビデオで時間の概念が生まれました。前述の通り、Live Photosは「もっとみんなビデオを撮ろうよ」あるいは「もうビデオを撮っておけばいいじゃん」という雰囲気を醸し出しています。4Kの動画から静止画を切り出せば、800万画素の写真になりますしね。時間の概念を持っている映像の方が、一瞬しかない写真よりも優位なことはわかります。
同じように、写真の他の要素で、静止画よりも優位になりそうなのは、奥行きじゃないでしょうか。Lytroで盛り上がった、ライトフィールドカメラ機能を搭載する、というのはどうでしょう。単純な話、iPhoneで撮影する際、ピントを手前から奥へと動かしながらすべてを記録しておき、あとから好きなところにピントを合わせられる、仕組みはどうでしょう。Live Photosの挙動を観て、できるんじゃないか、と思った次第。
また、これも前述したAir Dropによるその場での写真の共有を観ていると、たとえばタイミングを合わせたビデオや写真を集約して、マルチアングル化して共有、みたいな機能もiPhoneに備わると良いですね。
Macのプロ向け動画編集アプリ「Final Cut Pro」には、複数のカメラのタイミングを合わせる機能があります。もともとはプロ向けではあるのですが、みんなでビデオを撮る機会が増えれば増えるほど、断片的ではありますが、その場のいろいろな人の視点が記録されることになります。だったら、それを束ねられたら良いのに、と思いました。
いずれにしても、当面スマートフォンで驚く機能は、カメラ周辺からやってくるんじゃないか、という予測をしております。もしかしたら、生活を一変させるアイディアも、登場するかもしれません。写真に撮って捨てる、みたいな断捨離系アプリとか、ないんでしょうか(切実)。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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