NECパーソナルコンピュータが、「Intel RealSenseテクノロジー」をテーマにした”ハッカソン”「HIGH TOUCH PROJECT インテル RealSenseテクノロジー Hackathon」を実施、その授賞式を公開した。開催場所は、クリエイティブスペース「FabCafe MTRL」(ファブカフェ マテリアル)を利用した本格的なもので、約25名が参加していた。ハッカソンとは、エンジニアさんやデザイナーさん、プランナーさんなど(主に)ソフトウェア開発に関する専門家が集まって、短期集中でテーマに沿った開発を行なうといったイベント。1日限りのものもあれば、1週間程度にわたって開催されるものもある。
NECパーソナルコンピュータが突如そんなイベントを催した理由は、2月25日発売予定の11.6型「LAVIE Hybrid ZERO」(HZ300/DA)がきっかけ。HZ300/DAは背面に3Dカメラ「Intel RealSenseカメラ」を搭載しており、今回のハッカソンではまさにこのテクノロジーを使い新しいユーザー体験を創造するというテーマが採用されている。「Intel RealSenseテクノロジー」は表情認識、ジェスチャー認識、3Dスキャン、音声認識など様々な機能を備えており、デバイスの特性を活かしたソフトウェアのプロトタイプの作成が求められたのだ。イベント全体の流れは、2016年1月16日にアイディア出し(アイディエーション)を行ない、アイディアに沿ったチーム編成を実施。各チームはここからプロトタイピングを実行開始。2日目は授賞式のあった1月23日で、プロトタイピングの続きおよび各チームによるプレゼン、審査員による審査が行なわれた。
審査員による評価方法は、「ビジネスおよび実用面」「技術面」「独創性・アイディア」の3点をみるもので、これらすべての評価が高いソフトウェアが「GRAND PRISE」(総合優勝)となった。また、NECパーソナルコンピュータによる「NECPC PRISE」、インテルによる「Intel PRISE」、ロフトワークによる「Loftwork PRISE」が用意されていた。主催者であるNECパーソナルコンピュータの商品企画本部 コンシューマ商品企画部 森部浩至氏は、優れたソフトウェアに対して開発を支援し、実際にアプリケーションのリリースまでサポートを行なうとしていた。
「GRAND PRISE」は「Magical Mirror」
「GRAND PRISE」に見事輝いたのは、チーム「Oniyammma」(石田さん、後藤さん、前本さん)による「Magical Mirror」。
「Magical Mirror」は、"玄関に置かれた鏡"のように、ドアなどに貼り付けた「Intel RealSenseテクノロジー」対応タブレットをイメージしたもの。出かける時や帰宅した時の表情を写真アルバムとして自動的に残せるほか、外出前に天気予報表示などを行なえる。また、表情をユーザーの気分を表すものとして部屋の照明(Hue)に反映させたり、今回は開発が間に合わなかったが、顔認識で家族を識別した上でのロギングも想定していた。iOSアプリなどを使って、他の家族の様子も確認できることも考慮していた。
フロント側については、Unityを利用して「Intel RealSenseテクノロジー」の機能を活用。キャラクター類の映像表示、ジェスチャーや顔、音声の認識を行なっている。ロギングなどバックグラウンドは「Node.js」+MVCフレームワーク「Express」+「mongoDB」を利用。SVM(Support Vector Machine/機械学習)による人物認識については、まさに実装中とのことだった。
「NECPC PRISE」「Intel PRISE」をダブル受賞した「Swipy」
扇谷さん、岡本さん、金田さん、堀川さんの手による「Swipy」が、なんと「NECPC PRISE」「Intel PRISE」をダブル受賞した。技術面、ビジネスおよび実用面の両方から高く評価され、「Intel RealSenseテクノロジー」の特徴を活かしている点も受賞理由となっていた。
「Swipy」は、「Intel RealSenseテクノロジー」で対象ユーザーの顔をスキャンし、顔の3Dデータを生成。メガネフレームのデータベースから、そのユーザーに似合うメガネをサーチし、バーチャルでメガネを試着できるというソフトウェア。かけているメガネをジェスチャー操作で切り替えたり、メガネフレームの種類を選択可能。似合うメガネを見つけるロジックとして、メガネフレームと顔の縦幅(眉、顎までの距離など)といった複数の要素をスコアリングして、対象ユーザーに似合っているかどうかを判断する。
「Loftwork PRISE」は「Rapsense」「3Dスナップ」の2作品
「Loftwork PRISE」は、「Rapsense」「3Dスナップ」の2作品が獲得。「Rapsense」は鍛さん、斎藤さん、堀之内さん、若狭さんのチームによるもので、「3Dスナップ」はサムさん、武井さん、松山さん、矢作さんが手がけた。
「Rapsense」は、”ラップ”をベースとしたエンターテインメントソフト。表示される歌詞の一部が空欄になっており、他部分に合わせ"韻"を踏んだ歌詞を歌っていくというもの。プレイヤーふたりによる対戦形式になっており、歌った歌詞はオープンソースの音声認識エンジン「Julius」により認識される。韻を踏んでいるかどうかの採点機能も別途自作したという。また、「Intel RealSenseテクノロジー」を利用して、手の形と動きで様々なエフェクトを表示させることも可能だ。
「3Dスナップ」は、手の形(輪郭)を"影絵"として認識させて撮影し、厚みを持たせたデータ(3Dデータ)を生成できるというもの。「Intel RealSenseテクノロジー」の性能を活かした、子供向け知育ソフトといった雰囲気だ。手の形状の認識およびデータ化を行ない、3Dプリンターによって出力できるようにしていた。次のステップとして360度スキャンや変形機能、3Dプリンターとの連携などを挙げていた。
また今回は受賞はならなかったものの、「Voice-it」「クレイジープレゼン」も興味深いものだった。「Voice-it」は、音声認識したキーワードをリアルタイムで表示させるというブレインストーミング用ソフトで、音声認識を活用することでキーボードによる文字入力の煩雑さをなくし、ブレインストーミングのさらなる効率化とスピードアップを狙ったもの。認識されたキーワードは、データとして保存できるのはもちろん、自在に整理できる。「クレイジープレゼン」は、PDFデータを読み込めるUnityベースのプレゼンソフト。ジェスチャーによるページ移動が可能な上、指で示した場所をエフェクトで強調するという演出も可能だった。