世界のレコード店にアーティスト自ら卸販売できる「Store Delivery」
日欧200店舗の規模から、16年春には全世界へ
トウキョウ・デジタルミュージック・シンジケイツ(TDMS)は、世界のレコードストアにアーティストが直接作品を卸販売できるサービス「Store Delivery」を、1月26日から開始する。
同社は、レコード製造販売プラットフォーム「QRATES」を運営する会社。QRATESでは、サービス上に無料で作成できる専用ページから自分の音楽作品をデジタル配信にて公開し、作品を気に入ったファンから購入予約と代金を事前に集めることで、レコードプレスにかかる費用をカットし、完成時に収益も受け取れる。
2015年4月のローンチ以来、1000件以上のレコードのプロジェクトが、欧米のアーティストや音楽レーベルから投稿されており、次々と製品化されたレコードがファンの手元に届けられているという。
今回、新サービスとして「Store Delivery」を開始する。QRATESで予約募集・販売されるレコードを、世界のレコードストアのバイヤーが自らのお店の商品として卸売価格にて買い取れる「卸販売システム」。アーティストはQRATESを通じてファンへの直接販売と同時に、レコードストアからの注文も受けられるようになる。
アーティストにとって作品がレコードストアの棚に並べられるのは、やはり、新たなファンと出会う大切なプロモーションとなる。ただ、従来の店舗への流通は、各地域やジャンルごとに点在する小さなオフラインのネットワークを介して行われており、作品の存在をバイヤーに気づいてもらうことからして難しいという。
Store Deliveryならアーティスト自らが卸販売価格を画面上で設定することで、提携ストアの専用視聴システム上に作品の情報が届く。そして、バイヤーが気にいればその場で取引が成立する。
ストアへの流通をシンプルに、多くの収益をアーティストへ――これがStore Deliveryの目指すコンセプトだ。
バイヤーが注文した作品は、プレス完成時に工場から各ストアへ直送されるので、アーティストは面倒なレコードの出荷手配の手間やコストを減らし、創作活動やプロモーションに専念できる。
また、どの地域のどのストアが何枚購入したかなど、卸販売に関する詳細な情報がシステムを通じてフィードバックされるため、アーティストはこれらのデータを使ってより緻密なマーケティング分析が行えるという。
Store Deliveryはまず、日本と欧州の店舗を結ぶネットワークとしてスタートする。日本国内では、Jetset、HMV Record、Techniqueなど有力なストアと直接提携し、欧州のパートナーとしては英国のJuno Recordsと提携。Junoのオンライン店舗での販売と、同店を通じた欧州の主要ストアへの2次流通も可能となり、当初、日欧合わせて200店舗以上のストアのバイヤーにリーチできるとのこと。
さらに、2016年春には米国を含む全世界のストアとの提携を計画しており、2018年度までには1000店舗規模の販売ストアネットワークの構築を目指すとしている。