全日本ラリー選手権最終戦の
新城ラリーでも2位入賞のMIRAI
昨今、自動車に環境性能が重視されているのは皆さんもご存じのとおり。環境性能というのはいかに有害物質を出さずに自動車を走らせられるかという性能で、そこには窒素酸化物や微粒子などのほかに二酸化炭素も含まれる。
いわゆるエコカーといわれる自動車たち。ディーゼルエンジンが最近注目を集めているのも、微粒子問題を解決して黒煙を出さないクリーンディーゼル化し、燃焼効率の良さからガソリン車よりも二酸化炭素を排出しにくい、つまり低燃費であることがクローズアップされたからなのである。
また異論は多数あるだろうが、発電や製造過程のことを棚上げして考えれば、自動車そのものから有害物質を出さない電気自動車や水素を燃料とする燃料電池車は究極のエコカーといえる。
そんなエコカーの中でも、特に最新のカテゴリーと言えるのが水素を燃料とする燃料電池車。日本ではトヨタのMIRAIが他社に先駆けて昨年、一般市販車として登場したことは記憶に新しいところだが、そのMIRAIの競技車両が存在することをご存知だろうか。
2015年の10月31日~11月1日にかけて愛知県で行なわれた全日本ラリー選手権最終戦の「新城ラリー」でJN-1クラス2位に入賞したのがこの燃料電池車「MIRAI」だ。
MIRAIの競技車両は一昨年の新城ラリーで競技車両が走り出す前にコースを競技に準じた速度で走行してチェックする「0(ゼロ)カー」としてトヨタが提供し、その後東京オートサロン2015などで展示されたものがあるが、今回取材したクルマはそれとは全くの別車両。
このMIRAI、自動車評論家の国沢光宏さんが、自身で購入したMIRAIをラリーカーに仕立てたもので、なんと納車当日にラリー車にするべくショップに持ちこんだという。
国沢さん曰く「エコカー同士のレースに出るよりも、既存のガソリン車と戦ってこそ、そのエコカーの真価や問題点が見えてくる」。その言葉どおり、以前は日産の電気自動車「リーフ」で全日本ラリーに出場し、2013年の新城ラリーではJN-1クラスの優勝をはたしている。
このMIRAI、基本的に外観はほぼノーマル。リアにカーボン製のウィングが装備されている程度だ。
タイヤはなんとエコタイヤ、YOKOHAMAの「ブルーアース」! マーキングがしてあることから、競技で使ったタイヤであることがわかる。「Sタイヤ(競技専用タイヤ)も用意したんだけど、こっちが調子よくて、結局Sタイヤを使わなかった」と国沢さん。
これが水素流入口。水素タンクを積んだトラックを用意し、補給はそのトラックから他の競技者の給油と同じタイミングで行なったとのこと。「電欠の心配が無いから電気自動車よりは気を使うことは無かった」という。
このゼッケンは、WRC(世界ラリー選手権)のドイツラリーで0カーとして走ったときのもの。このMIRAI、デビューはなんとWRCだったのだ。