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前田知洋の“マジックとスペックのある人生” 第9回

Apple Payでバスと地下鉄が無料?券売機、クレジットカードなど、オールドテクノロジーのスペック

2015年12月08日 17時00分更新

文● 前田知洋

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 駐車場に停めた車に乗り込む前に、iPhone6sでメールをチェックをしながら精算機の列に並んで、機械にお金や駐車券やサービス券を投入していく。ふと思ったのですが、これってすごいオールドテクノロジーじゃあ…。

 一番多いのが、ショッピングの精算時にもらったレシート集めておいて、別の総合カウンターでレシートの裏と駐車券の裏にスタンプ押してもらって、駐車場の精算機に通して現金で精算するパターン。

 「一万円、五千円札は使えません」なんてことも当たり前だし、駐車券を持っていかないといけない場所は置きっ放しでもいい所など、量販店やデパート、ショッピングセンターごとにシステムがバラバラです。

 「駐車券を売り場に持っていく」「レジで割引券をもらう」「清算所でまとめてレシートを見せる」…。うっかり忘れちゃうと、車に戻ったり、また売り場に行ったりして。まるで、見えるけどいけないドラクエのダンジョンの宝箱状態(笑)。

 毎度のことなので「メンドウ!」と意識することは少ないですが、冷静に考えれば、ゼンゼン21世紀っぽくありません。もし、殺人現場に駐車券が落ちていたら、5~6人の指紋が混在しまくりで、事件が難航すること間違いなしなはず。

意外に多い、オールドテクノロジー

 まぁ、車で移動するのは少数派なので、誰かにクレームを言うつもりはありません。駐車場じゃなくても、そんなケースが意外にありますしね。

 例えば、仕事で疲れてJR湘南新宿ライン(横須賀線)のグリーン車に急に乗りたくなって、ホームのグリーン専用券売機でグリーン券をSuicaに登録。ただし、新幹線じゃないのでグリーン車の席とチケットが紐付けされていない。来たグリーン車が満席なら、別の電車を待つか、グリーン券を持っていながら通路に立つか…(グリーン券は当日のみ有効)。初めてなら絶対戸惑うし、たまにグリーン券がムダになる理不尽なシステムです。

 だいたい、非接触カードでありながら、チャージやグリーン券の登録はSuicaをカードフォルダーから外して機械に入れるのも面倒です。

 Apple Watchなどのウエアラブルで、「ピッ!」とクレジット口座から引き落としされたりできないのでしょうか。Apple Watch持ってないけど…(笑)。

 いまどき、磁気ストライプにしろ、ICカードにしろ、プラスチックのカードに支払いを依存するって、人間は一途です。駐車券なんて、磁気が塗られた紙だし、承認がスタンプだし…。

 あっ!確か、ETCが普及し始めの頃、「将来は、駐車場やドライブスルーのサービスも普及予定」なんてアナウンスもありましたが、2001年からETCが実用になってるのに、ゼンゼン普及してない!

 wikiで調べてみたら、丸ビルの駐車場など、3カ所で利用できるらしい。しかし「別に個別の駐車場ごとに会員登録が必要」らしい。丸ビルに車で何度も行ってるけど、ゼンゼン知らなかった。あんまり周知もされてる気もしない。

 サービス開始してもう14年も経ってるのに、3カ所って…。もうね、財布の中はプラスチックのカードでいっぱいです。

英国では25万カ所でサービス開始…

 英国では、MasterCardとApple Payの併用で11月末から12月の中旬の月曜日(計4日)は公営バス、地下鉄、トラムなど、ロンドン市内の国営インフラが1日29.90ポンド(約5600円)までがキャンペーンで無料になるそう(MasterCardからのキャッシュバック)。

 アメリカでは、Square社により、Apple Payの非接触式リーダー(読み取り端末)兼ICチップリーダーが全米100店舗に提供が開始されました。1台目のリーダーは無料で、2台目からは一台49ドル(約6000円)。手のひらサイズの無線のリーダーの様子は、下の動画からもご覧いただけます。

 

 ICチップが封入された非接触式リーダーとしてはEasyPayがあります。ガソリンスタンドで利用でき、ハイオクや軽油など、燃料種別も記憶されています。

EasyPay

問題はシステムの囲い込み

 空港のeチケットもそうですが、利用者にとって厄介な問題は、駐車券やレシートなどの紙類。eチケットを使うたびに謎なのですが、カウンターへのバッグのチェックインで1枚、セキュリティゲートで1枚、乗り込みゲートで1枚、飛行機のシートに座る頃には、eチケットを含めて4枚の紙が手元に残ることになります。ボーディングパスの時代よりも紙が2枚増えてるじゃん!(笑)

 こうしたチケットレスの普及を阻むのは、クレジットカード文化(利用の仕方)の相違だとするアナリストもいますが、筆者は、悪しきシェア争いと独自規格の自社システム囲い込みだと勝手に分析しています。

 いや、わかるんですよ。ぜーんぶ自社でやった方がセキュリティでもメンテナンスでも有利なことは。しかし、消費者の利便性を考えれば、そんなビッグデータの縦割り行政っぽい考え方はやめて、車のナンバーをコード化したものなどをレジでピッとやって割引承認されちゃうシステムの構築って難しくないと思うのですよね。航空だったら、パスポートナンバー(もしくはその代用番号)を利用。ポイントは、当日現場で発行する紙を使うのではなく、鍵のように消費者自身を識別できるものをユーザーが持参する発想の転換。

 JRだったら、せめて非接触でチャージやグリーン券購入できるくらいにしてほしいものです。

前田知洋(まえだ ともひろ)

 東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。

 著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。現在、ビジスパからメルマガ「なかマジ - Nakamagi 3.0 -」、「Magical Marketing - ソシアルスキル養成講座 -」を配信中。

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