エンドユーザーにも管理者にも愛されるSharePointを実現!
AvePoint、Office 365の波に乗る!ドキュメント管理システムを武器に
2015年11月24日 10時30分更新
AvePoint(アブポイント)は、Microsoft SharePointにコンプライアンスやデータガバナンスの機能を追加するドキュメント管理システム(ECM)を提供する。創業者CEOであるテン・イー氏に製品概要や特徴、そしてOffice 365などのクラウドとの連携で実現できる価値について聞いた。
管理者にもエンドユーザーにも愛されるSharePointを
アブポイントはインターネットバブルが崩壊した2001年に米国で設立されたソフトウェア企業。創業者の1人は同時多発テロの標的となったツインタワーで働いていたという経験を持っており、当初技術的に理解のあったExchange Serverをベースにしたコラボレーションソフトを作るためアブポイントを立ち上げる。しかし、このときExchange自体の市場がすでに飽和状態だった。そこで、Exchangeと同じ形式のストレージフォーマットを使えるSharePoint(当時「Project Tahoe」と呼ばれていた)のドキュメント管理ソフトにシフト。SharePointの急速な伸びに合わせて成長を続け、同社もSharePointで最大ISVにまで成長しているという。
なぜSharePointにフォーカスするのか? 共同創業者であり、アブポイント共同CEOを務めているテン・イー氏は、「SharePointはポータルとしても、ドキュメント管理としても、SoR(System of Record)としても使える汎用的なプラットフォームだ。しかし、調査会社はSharePointはIT管理者には愛されているが、エンドユーザーには敬遠されているというレポートを出している。つまり、なんでもできるゆえ、エンドユーザーにとってわかりにくいというわけだ。顧客のニーズに個別に応えるには、われわれのソリューションが必要になる」と指摘する。
AvePointでは生成、共有、アーカイブ、廃棄など一連のライフサイクルに則って、ドキュメントの管理を行なえるソリューションを用意している。こうした中で、エンドユーザーが意識しないで、コンプライアンスやガバナンスが確保できるというのが、AvePointの大きな売りだ。
たとえば、AvePointではOutlookに添付されたファイルが自動的にリンクに置き換えられ、ファイル本体を管理する製品が用意されている。また、「Compliance Guardian」というソフトを使うと、すべてのファイルをスキャンすることで内容を精査し、タグが自動的に付与される。「たとえば、米国の社会保証番号やIDの有無、フッタやヘッダなどを精査し、どういった種類のドキュメントかを分類し、SharePointにメタデータを格納する」(イー氏)。
このタグをベースにポリシーに応じた監査が行なわれるので、エンドユーザーは意識せずにセキュリティを確保できる。こうした機能が伝統的なECMや既存のファイルサーバーに比べた大きな差別化だ。実際、この自動タグ付けが評価され、2014年度はマイクロソフトパートナーアワードを受賞できたという。将来的には機械学習のテクノロジーも導入される予定で、より精度の高い自動化が実現されそうだ。
業界ごとに異なる要件に答えられるのもAvePoint Compliance Guardianのメリット。各業界によって規制が異なるので、企業はポリシーに応じた共有設定や破棄などが自動的に行なえる。こうした機能を活用することで、いわゆる情報漏えいの防止にもつながる。「DLP市場を分析したGartner社のレポートの中で、今後注目すべきDLPベンダーの一社にノミネートされた。昨今は外部からの攻撃が注目されているが、実は70%以上が内部からの漏えいになる。悪意のある漏えい事件が目に付くことも多いが、実際は誤操作で漏えいさせることの方が多い。これに関してはきちんとガバナンスが効いていることが重要だ」とイー氏は語る。ユーザーが使い慣れていないものを触るから漏えいなどが起こるのであり、普段使っているアプリケーションできちんとガバナンスが効いている環境を構築する必要があるというのが、イー氏の主張だ。
Office 365と連携!さまざまなクラウド形態に対応できる
4年前からはクラウドにシフトしており、Microsoft AzureをベースにしたSaaSに大きな投資を続けている。「われわれはオンプレミス、ハイブリッドクラウド、パブリッククラウドのすべてに対応できる。最大のAzureユーザーでもあり、Azureのパートナーでもある」というこのSaaS事業は、すでに300万以上のユーザーを得ている。AzureやOffice 365マーケットプレイスにも同社のソリューションが用意されており、SharePoint Onlineの利用拡大を促進したいマイクロソフトの意向とも一致しているようだ。
しかも、クラウドとオンプレミスとのハイブリッドクラウドで統合したポリシーに置くことで、階層化されたドキュメント管理ができる。システムをクラウドに置きながら、データの一部はオンプレミスに置くといったソリューションがAvePointの強みだ。「これから10年間はすべてクラウドに置くのは現実的ではない。いかにクラウド、オンプレミスを用途にあわせて使い分けるかが鍵になる」とイー氏は語る。実際、14年の間、16ものレガシーECMからの移行をサポートしてきた実績もある。「1万4000もの組織で、企業の情報管理の複雑さを解消するサポートをさせてもらっている。ハイブリッドクラウドやパブリッククラウドへ移行する際のノウハウも持っている。
最近では、Office 365との連携を強化している。Office 365のバックエンドでAvePointベースのSharePointを動作させることで、粒度の細かいバックアップや権限管理、コンテンツの移動など運用管理の機能を追加し、コンプライアンスやSLAを確保できるという。「マイクロソフトはOffice 365を生産性強化のツールとして販売している。SharePointとOffice 365は緊密に連携しているので、SharePoint上にコンプライアンスの機能を載せることで、レガシーのECM(Enterprise Contents Management)のリプレースを図っていく」とのことで、統合を推し進める。
具体的な公開事例として、イー氏は世界的なホテルグループであるマンダリンオリエンタルでの利用例を挙げる。「Office 365でイントラネットを作るお手伝いをした。フェーズ1ではライブポータルや社内用のブログ、SNS、フェーズ2ではSharePointベースのコラボレーションやドキュメント管理を実現した。エンドユーザーはOffice 365で普通に仕事をしているだけだが、バックエンドで自動的にガバナンスが効くようになっている」(イー氏)。
クラウドストレージ専業ベンダーは今後厳しい
現在、同社がフォーカスしているのが、Office 365で動くレコード管理の分野だ。ここではワークフロー上でドキュメントが生まれてから削除されるまで適切な状態で管理するドキュメントのライフサイクル管理を自動化する。「レコード管理ではデータアナリスティックでドキュメントを分析し、どれくらいの賞味期限があるか、どれくらいのセキュリティ要件があるかなどを調べる。会社組織のポリシーにあわせて、ドキュメントの扱いを決め、定期的にモニタリングする」とイー氏は説明する。
AvePointのレコード管理は社内でのドキュメントのみならず、外部とのコラボレーションによって得られたさまざまなドキュメントも、統合して管理を行なう。「コラボレーションは乱雑に散らかった会社の机のようなもの。これに対してレコード管理は棚(キャビネット)だ。外部から来たドキュメントを自動的にラベル付け・仕分けし、見られてはいけないモノを鍵のかけられる場所に置いたり、使い終わったらきちんと破棄する。われわれの製品は、この机と棚の橋渡しをするような存在だ」とイー氏は語る。
最近は市場が劇的に変化しており、クラウドストレージ企業との競合も見据える。「われわれのSharePointベースのOfficeを提供できること。一方でBoxの強みはクラウドストレージで提供できることだ。初期のBoxはSharePointに対抗できるコラボレーションプラットフォームとして生まれたはずだが、少なくとも現在のBoxをレコード管理の会社と呼ぶことはできない」とイー氏は指摘する。
BOXがストレージを中心とするのに対し、AvePointはあくまでドキュメントに立脚しており、ストレージの種類は選ばない。各社のストレージはもちろん、AzureやAWSなど幅広いクラウドストレージに対応しているので、複数を使い分けることが可能になる。「いわゆるEFSS(Enterprise File Sync & Share)のニーズはGoogleDriveやOneDriveなどでカバーしつつある。今後、規模が小さく、無料に近い形で提供しているEFSS専業のベンダーは厳しいはず」とイー氏は市場を分析する。
Office 365連携、Lotus Notesやファイルサーバーの移行で日本市場を攻める
グローバルと比べてSharePointの導入が多くなかった日本市場では、従来のAvePointのグローバルメッセージと乖離があった。しかし、昨今はOffice 365の導入が伸びてきたことで、エンタープライズでのニーズが拡大しているという。
もう1つはレガシーシステムからのリプレースだ。「日本は今でもLotus Notesのユーザーが多く、残された最後の市場と言える。Lotus NotesからSharePointへの移行はグローバルでもかなり多く、AvePointに移行可能な16のプラットフォームに入っている。Notesアプリケーションは書き換えが必要だが、実際に使われているのは10%にも満たないことがほとんどだ。一方、NotesメールはExchangeやSharePointに移すことが可能だ」とイー氏は語る。
さらにファイル共有からの移行という大きなテーマにも取り組む。「もうファイルサーバーは使いたくないと語るエンタープライズのCIOは多い。中身は古くなるし、ガバナンスも効きにくい。ファイルサーバーの中身をクラウドに移すことで、管理を効率化できる。中のファイルを時間をかけて精査することで、よりシンプルに使うことができる」とイー氏は訴える。