次期バージョンでは、数百ペタバイト環境も簡単に構築・運用可能に
今年1月、ScalityではRINGのバージョン5.0をリリースした。「今回のテーマは『簡素化』だった」スペシアレ氏は述べ、自動インストールツール、サーバーへのコンフィグプッシュ機能などを新たに追加することで、主要なSDS機能の導入と運用をシンプルなものにすることを目指したと説明した。ちなみに、インストールの自動化によってファイルシステムのセットアップが数時間から数分に短縮されたという。
さらに、今年年末には次期バージョンの6.0をリリース予定だという。ここでは、ファイルシステムやI/Oエンジン、グローバルキャッシュエンジンなどの機能強化を図り、より大きなスケールアウト性を確保する計画だという。
「RINGの顧客はより大きなスケーラビリティを求めている。たとえば米国のメディア企業、コムキャストでは、すでに600億個以上のオブジェクトをRINGで保存している。数千億オブジェクト、数百ペタバイトクラスのストレージを導入したいというニーズは多く、そうした要望に応えていく」(スペシアレ氏)
同時に、数百ユーザーが同じデータにアクセスした場合のデータの一貫性維持、数千ノード構成を実現するための運用管理の自動化の推進といった課題も、バージョン6.0では実現していくという。
「導入や運用管理の『自動化』は非常に重要なテーマだ。規模が拡大すると手作業では不可能になる。また、導入の自動化によって、各ノードのシステム構成が均一であることも保証される」(スペシアレ氏)
同時に、バージョン6.0では従来から提供してきた「Amazon S3」互換APIも刷新を図る。オブジェクトの保存や読み取り、消去といったコア機能だけでなく、バージョニングやライフサイクル管理、セキュリティ/ACLなど、現在のS3が持つAPIに100%対応する予定だ。
ちなみに、10月にはOpenStack Manilaへの対応をすでにアナウンスしており、OpenStack環境においてあらゆる種類のストレージ(オブジェクト/ファイル/ボリューム)に対応する。また、昨年のインタビューでCEOのルキャット氏が示唆していたエンタープライズ向けのデータサービス(スナップショット、クオータ、地理分散レプリケーションなど)については、「2016年に機能提供するロードマップになっている」とスペシアレ氏は述べた。
日本市場における最大の障壁は「顧客の固定概念」かもしれない
3月の日本法人立ち上げで代表取締役に就任した江尾浩昌氏は、立ち上げ以後、顧客数は「2倍くらいになっている」と述べた。日本市場では特に顧客に対するサポートの手厚さを重要視しており、日本法人の社員も約半数がサポートを担当しているという。
江尾氏はまた、IoTデータ分野におけるRINGの採用の広がりに期待を持っていると語った。
「高度なセンサー技術を持つ日本の企業がIoT分野を牽引していく可能性がある。これまではビッグデータを蓄積する姿勢のなかった日本企業も、データの蓄積場所としてRINGを提供することで、そうした動きが促進されるのではないか。まずはスモールスタートし、必要に応じてスケールアウトしていける点もメリットになる」(江尾氏)
市場における競合は誰か、という質問に、江尾氏は「競合よりも顧客の『固定概念』が最大の障壁かもしれない」と語った。顧客にとってRINGのアーキテクチャは新しい概念であり、まずはその理解を進めることが重要だという。「いったん理解していただければ、その後は話が早い」(江尾氏)。
キング氏も、ネットアップがNASを投入してからの20年間、大きな変化のなかったストレージ市場において「最大の転換期が来ている」と述べ、新世代のストレージに対するさらなる理解浸透と普及に務める姿勢であると強調した。