イライラ棒に挑戦できた唯一の義手
2016年10月にスイス・チューリッヒで、第1回サイボーグ五輪「サイバスロン」が開催されるのはご存知だろうか。ロボット技術による高度な補装具を付けた障害者スポーツ選手が競う選手権で、「強化義足レース」「パワードスーツレース」「パワードアーム競技」「強化車椅子レース」「電気刺激バイクレース」「脳波コントロールレース」の6種目が予定されている。
そのリハーサルが2015年7月に実施されたのだが、メルティンも「パワードアーム競技」に出場。義手を使って「物を運ぶ」「食器を棚から出してトレイで運ぶ」「ドアを開ける」といった障害物競争を行う中、昔テレビで流行った「電流イライラ棒」のような競技もあり、それにトライできたのがメルティンだけだったという。
「この競技にチャレンジするには、義手の手首を動かすことが絶対条件でした。ところが、他のチームは手首の動きの自由度が低いので、最初からこの種目を棄権したんです。挑戦したのが当社だけだったので、その途端テレビカメラが一斉にこちらに注目したほどでした(笑)」(粕谷氏)
このため、2016年の本大会に参加する20カ国以上・約60チームのうち、メルティンも参加することが決まっている。そこで「金メダル」を狙いつつ、イベントを通じて、宣伝や技術のブラッシュアップにつなげたい考えだ。
「リハーサルは2日行程だったのに本番は1日で行うなど、スケジュールに若干の不安はあるようです。当社としては、電流イライラ棒がなくならなければいいんですけどね(笑)。参加者が自分たちで大会を作り上げようとコミュニティのような雰囲気があって、参加してて楽しいですよ」。
メルティンにとっては、サイバスロンの金メダルが最初の目標となる。そのため、より一層、技術を洗練化させていきたいところだ。では、そこに向けて、または上肢切断者への実際の適用に向けて、課題があるとしたら何だろうか。
(→次ページ、IBM Watsonも活用して高機能化へ)