僕が子供の頃は、テレビの画面に登場するのはプロばかりの時代でした。たまに、一般の人が出てきても緊張していて、全然喋れない。自分がテレビに出るようになってわかりましたが、それは当たり前のことなんです。天井には何百ものライトが、スタジオをまぶしく照らしているし、放送用テレビカメラのレンズは、直径は30センチくらい。それがこちらに3~4台ほど向けられています。バズーカ砲だったら、秒速で全面降伏するくらいの迫力です。「本番行きま~す!!」フロアディレクターは大声出すし…、普通の人は、緊張しない方がおかしい世界です。
筆者は特番から報道番組まで、100以上のテレビ番組に出演してきましたが、今でもテレビの世界、マスメディア業界は知らないことだらけです。それでも、知っておくと無駄に緊張しないで済む「テレビ出演のスペック」について、今回はチラリと解説していきます。
一番肝心! 出演条件
これ、お金の話じゃありません(笑)。「どの番組」で「どんなコメントを求めているか?」など。大体は、電話やメールで出演依頼があります。ここで安易に承諾してはいけません。なぜなら「出演する」って、企画が進みだしちゃうと、途中で取りやめは、自分にも相手にも迷惑がかかります。
ちなみに、出演料の交渉は筆者のマネージャーがやってくれています。事前に聞くこともあれば、後で交渉することもあるとのこと。
出演可否のチェックポイントは…
・バラエティか、ドキュメンタリーか、報道か?番組のジャンルを教えてもらう。
・もし番組の進行や空気感に不安があるのなら、素直に聞く。
・大まかなオンエア(放送)の時間(持ち時間)を聞いておく。
相手はこちらに気を遣ってモゴモゴと言葉を濁すこともありますが、「10秒のコメントで…」とか「20分のオンエア」とか、具体的に聞いておきます。ちなみに、CMが15秒ですから、10秒のコメントは意外に長いです。専門家のコメントだとしたら、3~4フレーズくらい。かなりの意見を主張できます。
何について、どんなコメントを求めているのか?
「ご自由に」という場合もありますが、「◯◯について賛成のお立場かと…」なんて、番組側がスタンスをリクエストしてきます。これは放送法の中立性(反対と賛成、両論を伝える)の観点から。もちろん、相手はこちらの主張をリサーチした上で連絡してくることが多いです。もし、怪しいソースからの誤解であれば「それは違います」と、ちゃんと伝えておきます。
テレビ出演では、この最初のオファーのやり取りが肝心です。「そのコメントは難しい(ムリ)」とか「それならOK!」など、はっきりと自分のスタンスと主張を相手に伝えておきます。そこからスタート!
メイクは必ずお願いする
ある政治家が、公務の合間にスタジオ入りして、他の出演者に「顔色悪いですね…」なんて揶揄されたコメントされたこともあったらしいです…。こんなマイナスイメージの出演にならないよう、メイクは必須です。これはスタジオのライトのスペクトラムが日常とは違うため。難しい話を抜きにすれば、ノーメイクでテレビに出ると、確実に青白い不健康な顔色や油っぽくテカった顔で画面に映ります。ドーランと呼ばれる撮影用の化粧品なので、男性が塗っても不自然にはなりません。
事前の打ち合わせなどで「メイクをお願いします」とスタッフに頼んでおくのを忘れずに。ピザのトッピングと同じです(笑)。テレビ局やスタジオには専門のメイクさんが常時スタンバッてますから、男性なら髪の毛合わせて5~10分くらいで終了。ロケ(スタジオ外撮影)なら無しでも大丈夫かも。女性ならセルフ・プロデュース(自分メイク)の出演者が多いです。
タレントクロークの人は親切
トイレの場所から控え室の鍵管理まで、もし、わからないことがあれば、タレントクロークの人(美しい女性が多いです)に気軽に聞くのが吉。制作スタッフは、職人気質で番組制作に集中していますし、いろんなスタジオで収録をしているので、クロークに聞いた方が話がスムーズなことが多いです。
ただし、質問するときは、スタジオ見学の人と間違われないように、ちゃんと番組名と自分の名前を言ってから。テレビ局やスタジオのセキュリティは、かなり厳しめです。
控え室でディレクターと最終打ち合わせをします。微妙な番組進行が、直前に変更になるのはテレビ番組では珍しくありません。出演趣旨が180°変わらない限りは、ある程度冷静な対応が必要かも。生放送なら「1分のコメントが、30秒になっちゃいました…」なんてことも。そんなときでも腹を立てずに、ニコニコしてスタジオに向かうのが成功の秘訣です。
自分の出番が終われば、メイク室でメイクを落として(わからなければ、メイクさんがやり方を教えてくれます)終了です。
収録時間とオンエア時間の関係
昔は、10秒のコメントに1時間カメラを回す…、なんてこともあったようですが、お互いのコンセンサスが取れていれば、それほど時間はかからないはず。大切なことは、フレーズの途中で編集しなくても済むように、簡素に言葉をまとめておきます。
言い回しや単語の選び方は「視聴者に意味が伝わるか?」の視点から、ディレクターとの擦り合わせが必要なこともあります。お互いに提案しあって妥協点を見つけます。自分の許容できる範囲で。
前田知洋(まえだ ともひろ)
東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。
著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。現在、ビジスパからメルマガ「なかマジ - Nakamagi 3.0 -」、「Magical Marketing - ソシアルスキル養成講座 -」を配信中。
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