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その省電力性で2~3年後のスマホを支えるコア「Cortex-A35」の秘密を見る

2015年11月14日 15時00分更新

文● 塩田紳二

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 Cortex-A35は、今回のTechConで発表された最新のアプリケーションプロセッサだ。ただし、ARMのプロセッサコアは、設計が完了したあと、各ファウンダリーや半導体メーカーの自社工場での製造が可能なようにマスクパターンの設計や最適化などが行なわれ、その後、各社がコア部分に周辺回路を組み合わせたSoCとするために、実際の半導体デバイスが出るまでに時間がかかる。

2017年からエントリークラスのスマホに搭載されるはずの
新コア「Cortex-A35」

 ARM社の予測では、2016年の遅い時期には、Cortex-A35コアを内蔵した半導体製品の生産が始まるとしている。最近では期間は短縮されつつあるが、その後、具体的な搭載製品が登場するまでにも時間が必要だ。このためCortex-A35を搭載したスマートフォンなどは2017年頃になると想定される。

 現行のCortex-Aシリーズは、大きく、電力効率で「High Performance」「High Efficiency」「Ultra High Efficeiency」の3つに、アーキテクチャで2つに分かれる。

現在のARMのアプリケーションプロセッサ(Cortex-A)の系列

 このうち、Cortex-A35は、Cortex-A7などと同じく、電力効率が高いカテゴリに属し、かつ、ARMv8-Aアーテキクチャを採用している。電力効率が高い「LITTLE」プロセッサとしてはすでにCortex-A53があるが、Cortex-A35は、それよりも電力効率が高くなっている。

 Cortex-A53は、Cortex-A35よりも性能的には高い。というのも、Cortex-A53はインオーダーながら完全な2命令並列実行を実現しているからだ。しかしCortex-A35は、Cortex-A53と比較してコアサイズで25%小さく、消費電力で32%低い。

これまで64bit(ARMv8-A)での省電力プロセッサだったCortex-A53と比較するとコアサイズで25%、消費電力で32%、電力効率で25%の性能向上がある

 電力効率に関しては25%ほど改善されているという。Cortex-A53とCortex-A35は、結局、コスト/力効率を重視するか、ある程度性能を重視するかといった視点で使い分けがなされるのだろうが、スマートフォン市場に限っていえば、Cortex-A35はCortex-A53をほぼ置き換えることになると思われる。

 消費電力については、Cortex-A35はリテンションを導入した。リテンションとは、回路の電源を切るときに、状態を記憶する部分(フリップフロップ、レジスタ、ラッチなどと呼ばれる)だけは残して電源を切る。

 このため、再度電源を入れるときに初期化する必要がなく、すぐに動作を再開できる。これをシステムのアイドル時に利用することで、アイドル中の消費電力は大きく減らすことが可能だ。ARMの技術者によると、差はゼロではないがそれほど大きいわけでもないという。なお、Cortex-A35も従来通り、回路をブロック単位でオフにする機能は持っている。

 このリテンションを使うことで、回路がオフできないようなタイミングでも使われていないブロックの消費電力を下げることが可能になる。Cortex-A35では、SIMD演算機構のNEONのモジュールやCPUコアなどが、ブロック(パワードメイン)として管理されている。このリテンションを制御するのが「ガバナー」と呼ばれるモジュールだ。ガバナーは、コア外部の電力コントロラーと通信を行ない、リテンション動作を制御する。

リテンションは、CPUコアの外部にあるガバナーユニットが管理する。ガバナーユニットは、Qチャンネルと呼ばれる信号線を使い、パワーコントローラと通信する

 リテンションは、CPUやプログラムからみると自動的に行なわれる。たとえば、NEONを使うSIMD演算命令を実行していない間は、ガバナーによりNEONユニットが自動的にリテンション状態に入る。通常状態への復帰が高速に行なえ、再初期化が必要ないためにリテンションは自動制御することが可能なのである。

 これに対して、Cortex-A35は、従来の回路を電源をオフにする機能も持つ。完全にオフにすることでさらに消費電力を削減できる。ただし、電力をオフにすると、次に電源を入れたときに状態を復帰させるなどのオーバーヘッドが発生する。

 このため、コアの電源オフなどは、OSと連携して行なわれるのが一般的だ。こうした電力制御をCortex-A35は段階的に適用していく。CPUの負荷が低くなったなど条件を満たすとリテンションが行なわれ、さらにCPU負荷が小さくなり、コアのアイドル状態が続くようならば、コアの電源を切るといった具合だ。

Corex-A35では、新たにリテンションと呼ばれる省電力状態が組み込まれた。電力の削減は自動でオンオフされるリテンションが第一段階となり、さらに電力オフも行なわれる

 このような仕組みで、Cortex-A35は電力を削減している。Cortex-A7では、リテンションを実装していない。リテンションは、Cortex-A35でARMコアに最初導入された。Cortex-A7とCortex-A35の消費電力の違いの多くは、このリテンション機能の有無から来ているのだという。

Cortex-A35は、再設計したCortex-A7と比較してマイクロアーキテクチャの違いにより、10%の省電力化が可能になっている

(次ページでは、「64bit対応で高速化が期待できる」)

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