映画「インサイド・ヘッド」を地元視点で楽しむ
インサイドヘッド 予告編
さて、次の映画の話。映画「インサイド・ヘッド」は何度も楽しめる、レンタルではなくデジタル購入しておきたい作品でした。日本では、11月11日から配信されるそうです。11歳の少女、ライリーの脳内のヨロコビ、イカリ、ムカムカ、ビビリ、そしてカナシミという5つの感情が、ライリーのために奮闘するストーリーです。
舞台は、ミネソタからサンフランシスコへの引っ越しをしてきて、地元ネタがちりばめられていた点も面白かったです。金色ではないゴールデンゲートブリッジや、くねくねしたロンバートストリート(みんなむしろ、渋滞でもしてもっとゆっくり降りたいと思っていたりする)、お父さんがベンチャーの話をしているなどなど。
個人的に一番驚いた、というかうらやましかったのは、引っ越した先が小さな汚い古い家です。1ルームで月4500ドルと聞いてもさほど驚かなくなるほど家賃高騰のサンフランシスコ。広々としたミネソタの家からすれば、ライリーにとってはガッカリかも知れませんが、市内で戸建てなんて、買ったの? 賃貸だとしたらいくらかかるの? と驚愕するしかありませんでした。
筆者が見たのは米国版だったので、ライリーの嫌いな食べ物はブロッコリーでしたが、日本版ではピーマンに差し替えられているそうです。日本ではあまりブロッコリーが嫌い、という印象はないのですが、米国では嫌いな野菜の代名詞がブロッコリーなのだそうです。ちなみに日本で食べるあのピーマンはこちらでは見当たらず、もっとデカくて甘い、ベルペッパーやパプリカになってしまいます。
心理学もハックする?
筆者は過去に、ピクサーの監督に2回ほどインタビューをしたことがありますが、そのうちの1人が、今回の映画「インサイド・ヘッド」の監督をしたPete Doctor氏でした。
彼らが一貫してピクサーの映画で描いているのは、登場人物、観客、そして制作陣も含めた、人々の「成長」。何作もピクサー作品を描いてきましたが、今回の映画ほど、人の成長を直接的に可視化している映画もなかったのではないか、と思います。
そして、特にオリジナル作品で重視しているのは、自分たちの体験から着想すること、とも聞きました。「インサイド・ヘッド」は、Pete Doctor氏の娘に起きた実話を元にしています。Doctor氏とその娘も、ミネソタからサンフランシスコに引っ越してきて、新しい環境に溶け込むことに失敗したのだそうです。カウンセラーに通ううちに、脳についての知識を得て、これを映画化したのが今回の作品でした(参考:ワシントンポストの記事)。
別のワシントンポストの記事では、インサイドアウトで、コンソールルームに集まっていた5つの感情について、脳のどこの部分が司っているのかを図示しています(参考記事)。この映画では、記憶が大きなガラスの球として格納されていったり、個性を司る重要な記憶が存在していたり、そして感情の駆け引きや暴走がある。脳科学を可視化した点で、非常に大きな意味を持つ作品だと思いました。
サンフランシスコから南に1時間ほど下ったパロアルトにあるスタンフォード大学では、心理学も高い評価を受けている分野です。ウォルター・ミシェル氏の「マシュマロ実験」は1970年前後に大きく注目されたほか、近年では同大学の講師を勤めるケリー・マクゴニガル氏の書籍「スタンフォードの自分を変える教室」も注目を集めました。
いずれも、自制心や意志といったものを明らかにし、自分でコントロールすることで、人生における結果がまったく異なるという例を示しています。ここで登場するのが、シリコンバレーらしい「ハックの精神」。知ることで最適化できる、あるいはそうした道具を作ることができる。そうしたツールで、意志を明確化したり、自制心を高められないか。
紙幅もなくなりましたのでこのあたりにしておきますが、継続してチェックしたいテーマを一つ、見つけたように思いました。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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