外販に踏み切った背景はあのイベントの座談会
こうして社内に溜まってきたノウハウを外販したのが、ドコモ・クラウドパッケージになる。きっかけは昨年開催したAWS Summitでのエンタープライズ同士の座談会。登壇した東急ハンズ長谷川秀樹氏の「うらやましいわ。そんなノウハウ、ドコモさんだけに貯めとかんと、外にも出してくれはったらいいのに」というコメントで、外販の検討を始めたという。
こうして生まれたドコモ・クラウドパッケージは、前述した280におよぶセキュリティ項目をクリアした同社のノウハウをガイドライン、ツール(セキュリティデザインパターン/セキュリティテンプレート)、コンサルティングという形でパッケージ化したもの。
最大のメリットは「時間の短縮」で、クラウド導入につきまとうセキュリティの課題解決をNTTドコモのノウハウで一気に短縮できる。秋永氏は「どこからとっかかていいかわからない人にオススメ。ちょっとしたマネージャであれば決済できる価格」と価格も19万円と低廉だ。2年目以降に10万円を支払うことになるが、「先ほど後藤さんがお話ししていたように、AWSの進化は非常に速い。われわれも提供するツールを逐次更新している」とのことで、十分な価値が得られるという。
また、cloudpackが開発に携わっているCost Visualizerも販売を開始している(価格は31万円)。クラウドのコスト可視化ツールはいくつかあるが、従来のSaaS型と異なり、Cost Visualizerはソフトウェアライセンスとして提供する。AWSのVPC内に構築できるため、高いセキュリティを実現できるという。
Cost Visualizerは大手も含め、すでに34社の導入があり、実績も上がっているという。秋永氏は「ハンズの長谷川さんに踊らされてやっただけで、最初は売れるかどうか半信半疑だったが、多くのユーザーが本当に困られているのがよくわかりました」と語る。
ソラコムも登場!AWS IoTの登場で大丈夫か?
イベント後半ではソラコムの玉川憲氏が登壇し、IoTに最適化した同社の「SORACOM Air」や「SORACOM Beam」、SORACOMパートナープログラムについて説明した。
玉川氏はre:Invent 2015で紹介された新サービス「AWS IoT」の登場についても言及し、奥さんに「3人の子がいるのにSORACOM大丈夫か」と心配されたエピソードを披露。これに対して玉川氏は、SORACOMのサービスがAWS上に構築されているため、むしろAWS IoTに直結できるというメリットをアピールした。
昨年までは、エバンジェリストとしてAWS re:Inventに行っていた玉川氏だが、今年は初の不参加。現地で配布された「AWS IoTボタン」がうらやましかったということで、スマホ上に擬似的にAWS IoTボタンを実装したという。スマホ上のAWS IoTボタンを押すことで、SORACOMからAWS IoTを経由し、メールが配信されるデモを披露した。
イベントでは、そのほか日本経済新聞社でのAWS導入事例が披露されたほか、グループ会社リムレットの紹介、バンダイナムコエンターテインメントによるAuroraの検証、新日本有限責任監査法人によるマイナンバー制度に対応する情報管理体制などの講演が行なわれた。最後は、アイドルグループ「アキシブ Project」のメンバーとお笑いグループ「Hi-Hi」、アイレット後藤氏による「みんなのクラウド教室」の公開収録が実施。聴衆は「メールは基本読まない」「あえてLINE未読もあり」「スマホ画面は画像加工アプリだらけ」という若者とのITギャップに格差を感じつつ、懇親会に突入した。