末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢 第137回
久々にLumiaフラグシップを発表 Windows 10はマイクロソフトのモバイル事業の問題を解決するか?
2015年10月14日 10時00分更新
Microsoftが1年半ぶりにフラッグシップのスマートフォン「Lumia 950」「Lumia 950 XL」を発表した。「Windows 10」を搭載した初のスマートフォンとなる。
この間、スマートフォンを取り巻く情勢は変わっており、Microsoftの戦略にも大きな変化があった。総じて、スマートフォンへのフォーカスは以前とは変わっており、Microsoftが描くライフスタイルをユーザーが受け入れるかどうかが重要となりそうだ。
「Windows 10」を搭載
自宅ではマウスやキーボードも使える
10月6日、Microsoftは「Lumia 950」「Lumia 950 XL」を発表した。これまでMicrosoftはWindows Phoneとしてスマートフォン用のOSを採用してきたが「Windows 10」(Windows 10 Mobile)はPCやタブレットともアプリ互換性を持つ。これは、PC、タブレット、スマートフォンで同一のOSをという”One Windows”戦略に基づくもの。Windows 10をローンチして4ヵ月後に発表されたLumiaスマートフォンはその戦略に沿った特徴を持つ。
画面サイズはLumia 950が5.2型、Lumia 950 XLが5.7型。プロセッサはLumia 950が1.8GHz動作でヘクサコアのSnapdragon 808、Lumia 950 XLは2GHz動作でオクタコアのSnapdragon 810を搭載。メインメモリーは3GB、ストレージは32GB。カメラには最新世代の手振れ防止技術や4K動画撮影、最適な色「トリプルLED RGBナチュラルフラッシュ」が付くなど、高スペックを備える。
バッテリー容量は950が3000mAh、950 XLが3340mAh。ともにUSB Type-Cコネクタを備え、30分で50%充電が完了するという。ワイヤレス充電もサポートする。
こうしたスペック以上の特徴が、Lumiaスマートフォンをキーボード、マウス、ディスプレーに接続し、PCのように利用できる「Windows Continuum」という機能だ。HDMI、DisplayPortなどの端子を備えた「Microsoft Display Dock」も発表した。フルのOffice、Outlookなどを含む、ユニバーサルアプリを利用できるLumiaを自宅でも活用できる機能となりそうだ。Windows 10で提供する顔認識によるログオン「Windows Hello」もベータ版を用意した。
1機種前のLumiaフラッグシップ「Lumia 930」の登場から1年半。Microsoftは買収完了したNokiaの減損処理を行なうことを発表している。同時に端末の数を減らし、3カテゴリー(ビジネス、ハイエンド、ローエンド)にフォーカスして数機種に絞るという方針を打ち出していた。
そのような流れの後で登場した最新のLumiaは、単にOSが新しくなり、スペックもアップグレードしただけではない。One Windows戦略を反映したものといえる。
アプリのエコシステムは解決に向かうのか?
One Windowsで注目されるのが、これまでWindows Phoneの課題とされてきたアプリ問題だ。Windows 10では”ユニバーサルアプリ”として開発すると、PC/スマートフォン/タブレットなどWindows 10が動くあらゆる端末でアプリが動くとする。OS標準の新ウェブブラウザ「Edge」はもちろん、イベントではFacebookが、Facebookアプリに加え、Messenger、Instagramなどのユニバーサルアプリを開発する計画が明かされた。
ここで気になるのが、Googleだ。MicrosoftとGoogleは9月末、係争中の特許訴訟取り下げで合意したことを発表した。これにはMotorolaと間で繰り広げていたモバイル関連のものも多く含まれていた。合意により、GoogleがGmail、Google Mapsなどの人気アプリをユニバーサルアプリとして提供する可能性が出てくるという向きがある。実現すれば、Windowsエコシステムがぐっと充実しそうだ。
また、Microsoftはイベント中、いくつかの数字を発表している。たとえばWindows 10がインストールされたデバイスは1億1000万台となり、「Windows Store」アプリストアの訪問数は12億5000万に達しているという。
(次ページでは、「スマートフォンはデバイスの1つに――ライフスタイルを描く」」)
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