まつもとあつしの「メディア維新を行く」 第51回
不可能と思われた“中学生総獲り”を実現する“ガンダム超え”タイトル
『モンスト』アニメがTVではなくYouTubeを選んだ理由
2015年11月01日 12時00分更新
わずか2年でトップアプリに成長したモンスト
アニメは毎週土曜に7分間、YouTube配信のみ! 制作はUSP
ミクシィのXFLAGTMスタジオが展開するスマートフォンアプリゲーム『モンスターストライク』。本連載では、ミクシィがPCからスマホへ、ブラウザからアプリへと舵を切った際にも詳細に話を聞いたが、それから間もなくモンストが大ヒットし、現在に至っている。
そのモンストがアニメ化、しかもTV放送ではなくYouTubeを選んだということで、あらためてそこにある狙いを聞いた。
今回ご登場いただいたのは、XFLAGスタジオの総監督にして『モンスターストライク』のプロデューサーを務める木村弘毅氏、『428~封鎖された渋谷で~』などを手掛けたゲームクリエイターであり、モンストアニメではストーリー・プロジェクト構成を担当するイシイジロウ氏、そしてアニメを制作するウルトラスーパーピクチャーズのプロデューサー平澤直氏のお三方。
なお、アニメ第1話は配信翌日に累計再生回数140万超を記録、YouTube公式チャンネルの登録者数も8万人を突破。第1~4話の合計は500万再生を超えている。
アニメ『モンスターストライク』STORY
かつて住んでいた街・神ノ原に戻って来た主人公・焔レン。彼は違和感を抱いていた。確かにこの街に住んでいたはずなのに、その頃の記憶がない。
そんな中、レンのスマホに突然、見知らぬゲームがインストールされる。その名はモンスターストライク。
レンはバトルを経て気付いていく。自分の中に眠るナゾの記憶の正体は――。そして、モンスターストライクとは一体なんなのか――。
その鍵を握る水澤葵、影月明、若葉皆実とともに、レンは今まさにナゾへの一歩を踏み出した。その先に、想像もしない真実が眠っているとも知らずに――。
スタッフ
監督:市川量也、ストーリー・プロジェクト構成:イシイジロウ、シリーズ構成・脚本:加藤陽一、キャラクターデザイン原案:岩元辰郎、モンスターデザイン原案:近藤雅之、アニメーションプロデューサー:宮﨑裕司、プロデューサー:平澤直、アニメーションキャラクターデザイン:大貫健一、アニメーションモンスターデザイン:大倉雅彦、美術監督:加藤浩/保木いずみ、音響監督:明田川仁、音楽:坂本英城、制作:スタジオ雲雀/ウルトラスーパーピクチャーズ
キャスト
焔レン:小林裕介、水澤葵:Lynn、影月明:河西健吾、若葉皆実:木村珠莉、オラゴン:福島潤、焔三月:能登麻美子、焔火燐:村川梨衣 ほか
配信
YouTubeの公式チャンネルにて毎週土曜19時に最新話更新中
“4人で遊ぶ楽しさ”を広めるための動画戦略と
“ユーザーはYouTubeを見ている”という調査結果が重なった
―― 配信開始直前(取材時)のお忙しいなか、ありがとうございます。さっそく、YouTube配信のみというウィンドウ設計になった経緯から教えてください。
木村弘毅(『モンスターストライク』プロデューサー) ミクシィ、そしてモンストを開発するXFLAGスタジオは、“コミュニケーション”の提供にコアバリューを置いています。モンストの場合、それは“4人集まって、ワイワイ楽しめる”ことです。これはいままでのスマホの文化ではなかったことですが、集まって遊ぶのってごく自然なことですよね。にもかかわらず、一番流行っているデバイスでそれが行なわれていないことが疑問符だったんです。
そんなところから、みんなで遊べるモンストを作っていきました。モンストのマーケティングを行なう上ですごく重要だったのがメディアミックスです。特にYouTubeやニコニコ動画を活用した動画でのプロモーションですね。
“4人で遊ぶ”ということを説明する手段として、マックスむらいさんの「モンストニュース」や僕らが手掛けている公式チャンネルで、みんなで集まって遊んでいる様子を動画で流したんです。それがどんどん視聴数を伸ばし、現在では日本国内のゲームカテゴリーだと、ダントツで視聴されるコンテンツになりました。
そういったもの(動画コンテンツ)も、僕らはコミュニケーションだと思っています。ゲームの中だけじゃなくて、ゲームの外で、どうやって攻略したらいいのかとか、どう楽しむかといったことが、動画を通じてさらにディスカッションされていく。そこがメディアミックスの重要なところで、ゲームの外側でもコミュニケーションを生んでいくべき……そんな風に考えているんです。
“アニメを作ろう”となったときも、イシイジロウさんたちとターゲットについて相談していたのですが、ユーザー傾向を見たときに、キッズ=低年齢層ではないよね、ということがまず確認されたわけです。つまり、小学校高学年から中学生をターゲットとして狙っていきたいと。
さらにユーザーインタビューなどの調査を重ねていくうちに、「あんまりテレビ見てないのかな」というのが、なんとなく浮き彫りになりました。ではどのメディアなら、いまの小学校高学年から中学生くらいが見てくれるんだ? という疑問の答えが、YouTubeだったんですね。
僕たちが展開している動画戦略と、調査から出てきたYouTubeというキーワードが交わったときに、このアニメはYouTube専用タイトルとして展開したら良いんじゃないか、という話をした記憶がなんとなくあります――イシイさんどうでしょう?(笑)
(次ページでは、「ミスマッチなアニメができているように見えた」)
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