何の役にもたたない“なんちゃって真空管”
でも、光るとドヤ顔に!
最近の腕時計にはよくある製造形態だが、テスラも内部のクォーツムーブメントは日本製、組み立ては中国本土で行なわれているようだ。
駆動方式はごく一般的なクォーツ腕時計と同じだが、2個の酸化銀ボタン電池である「SR626W」(時分用)と「SR521SW」(秒針用)で分業している。そして、より変則的なのは、それらとは別に「CR2032」リチウムボタン電池を余分に使っていることだ。
CR2032は、テスラからツノのように生えている2本の“なんちゃって真空管”内部にインテグレーションされたLEDを点灯させるためだけに使われている。
テスラの12時インデックスのすぐ上にあるON/OFFスライドスイッチを右側のONの方向に倒すと、自動的に2本のなんちゃって真空管が淡いオレンジ色の光を発する仕組みだ。
省エネのためになんちゃって真空管は5秒ほど点灯したら、その後は自動的に消灯するように初期出荷設定されており、オーナーが変更することはできない。
テスラが、長年筆者愛用の日腕時計と並ぶおバカ腕時計の仲間入りができるのは、この面倒な機構のLEDが一切何の役にも立たないことだ。
ぼんやり5秒間点灯するLED照明は、周囲を照らせるほどの照度があるわけでもなければ、暗闇で文字盤を見やすくする効能もまったくないのだ。
今の世の中、何かといえば“コスパ”が大義となり、意味のあるモノや効果のあることにだけ開発努力やコストをかける楽しさや余裕のない商品開発ばかりになってきている。
そんな時代のど真ん中にいても、テスラは無駄を楽しみ、無意味なことに開発時間やお金をかける姿勢に共感を覚えてしまった。
しかし、思い切ったおバカ仕様を採用したために、必然的に普通の腕時計とは思えないような不規則で大きな筐体になってしまった。そんなテスラは人が腕に装着するために別の努力や研究もしている。
次ページへ続く、「時刻合わせは特殊な“ネジ巻きキー”が必要 それがまたいい雰囲気を醸し出す」

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