USBスピーカーの常識をひっくり返すピュアな音質、そして1万円以下で買える圧倒的なコストパフオーマンスで人気の、OlasonicのUSBスピーカーシリーズに、最新機種「TW-S9」が加わった。
TW-S9は、2010年4月発売のOlasonicブランド第一号機「TW-S7」の上位機種で、従来の60mm径のフルレンジユニットに25mm径のドーム型ツイーターを追加して再生レンジを広げ、96kHz/24bitのDACを載せることでハイレゾ対応にしたもの。高域の再生限界はUSB接続時は45kHzで、アナログ接続時は50kHzと発表されている。
価格はオープンプライスで、想定価格は2万円台前半。基本となる設計思想はTW-S7の時代から変わりはない。新しいTW-S9をチェックする前に、OlasonicのUSBスピーカーの基本を復習しておこう。
小さくてもハイファイなのはエンジニアリング主導だから
Olasonicは、電子機器の設計を行なう東和電子のブランドで、ソニーのオーディオ開発部門から移籍してきた前社長の山本 喜則氏を筆頭に、音響関係の設計を得意とするエンジニアが数多く在籍している。ゆえにOlasonicの製品はエンジニアリング主導で開発され、音を良くするための当たり前の理屈の積み重ねと、それを実現するための独自技術で成り立っているのが魅力だ。
まず、たまご型のエンクロージャーは、箱型に比べて強度が高く、箱鳴りが防げるという利点がある。そしてバッフル面が曲面なので音の回折が起きにくく、同時に内部も曲面なので、音の反射で起きる定在波の発生も抑えられる。結果的に入力信号以外の余計な音の発生を防ぎ、理想に近い音源が得られるため、定位感も向上する。
小型スピーカーで問題になる低音不足は、背面にパッシブラジエーターをマウントすることで解消した。これはメインスピーカーの背圧を受けて共振するもので、今でこそ小型スピーカーのユニット構成では定石になっているが、SW-S7の発売当時はまだ珍しかった。
SCDS(スーパーチャージド・ドライブ・システム)という独自の電源設計で、USBスピーカーの欠点であるパワー不足を解消した。USBバスパワーで使える電力は2.5Wまでに限られるので、一般的に2W(1W+1W)程度の出力しか得られない。その限界を超えるため、瞬間的に充放電の可能な大容量キャパシターを使い、弱い信号が続く時には電力を蓄え、強い信号が来たら放電するという仕組みで、20W(10W+10W)という大パワーを得ている。
パワーが大きいイコール大きな音が出るということではなく、その瞬発力の高さがダイナミックレンジの広い、奥行き感のある音像を生んでいる。
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