iPhone 6sのメモリに注目すべき理由
一般的にデスクトップPC用のOSでは、プロセスを起動するとメモリ上に作業領域が確保される。プロセスが増えれば作業領域の総面積、つまりメモリ消費量も増すため、空きメモリ領域は次第に減少する。プロセスが終了されると、その作業領域が開放され空きメモリ領域が復活する、という流れだ。物理メモリ容量には限りがあるため、デスクトップPCではHDDなどのストレージ(バッキングストア)にデータを移動し、メモリ不足に対処してきた。
しかし、iOSにバッキングストアは存在しない。メモリが不足しそうになると、システムはアプリに対しメモリを解放するよう要求し、これに応えられない場合は強制的に停止してしまうのだ。だから、ユーザはメモリ容量のことなど気にせずどしどしアプリを起動してかまわないが、前面に表示されていないアプリは終了されてしまう可能性がある。メモリ容量の増加はその確率が減るということであり、アプリの切り替えで待たされる回数は減るはずだ。
もうひとつ、iPhone 6s/iPhone 6s Plusの「謎」を解くための鍵となりうる知らせが飛び込んできた。発売間もないiPhoneの分解レポートで著名なウェブサイト「iFixit」で、iPhone 6sに搭載されている2GBのメモリはLPDDR4だと報告されていたのだ。
転送速度もアップしている。iPhone 6のSoC「Apple A8」にパッケージングされているRAM(LPDDR3/1GB)は、転送速度が1.6GB/秒で12.8GB/秒というバンド幅だが、LPDDR4は転送速度が3.2GB/秒でバンド幅が25.6GB/秒と2倍速に。CPUコアの性能アップはさておき、LPDDR4がパフォーマンス向上に寄与することは確実だろう。
演算性能を中心に計測するベンチマークアプリ「Geekbench 3」には、メモリのバンド幅向上がはっきり見てとれる。いくつか用意されたテストのうち、メモリの転送速度を検証する項目では、Stream Copy(8.96GB/秒→13.8GB/秒)、Stream Scale(5.52GB/秒→9.42GB/秒)、Stream Add(5.52GB/秒→10.5GB/秒)、Stream Triad(5.69GB/秒→10.4GB/秒)と、シングルコアの速度はいずれも2倍近くアップしていた。
ベンチマークテストには現れないが、LPDDR4の省エネ性能にも注目したい。動作電圧がLPDDR3の1.2Vから1.1Vへと引き下げられるため、バッテリーのもちに影響するからだ。
ここに着目すれば、iPhone 6sのバッテリー容量(1715mAh、基調講演のデモ映像を注意深く見るとバッテリー表面に見える)がiPhone 6の1810mAhから減少したにもかかわらず、連続通話時間や連続待ち受け時間に変化がないという「謎」にも納得できる。“メモリに注目”という意味もより深く伝わるはずだ。
Geekbench 3 | |||
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価格 | 120円 | 作者 | Primate Labs Inc. |
バージョン | 3.3.4 | ファイル容量 | 11.8 MB |
対応デバイス | iPhone 4S以降、iPad(第3世代以降)、iPad mini以降、iPod touch(第5世代以降) | 対応OS | iOS 8以降 |
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