物理+仮想を柔軟/迅速に組み立て、あらゆるワークロードに対応するIT基盤目指す
「仮想化の一歩先へ」HPがコンポーザブル・インフラ製品を発売
2015年09月30日 06時00分更新
日本ヒューレット・パッカードは9月29日、同社の「コンポーザブル・インフラストラクチャ」ビジョンに対応し、その構成要素となる管理ソフトウェア「HP OneView 2.0」および「HP Helion CloudSystem 9.0」を発売した。物理+仮想リソースを柔軟かつ迅速に組み立て可能なインフラの実現を目指す、同ビジョンの“第1フェーズ”がスタートする。
「仮想化の一歩先」を志向する、コンポーザブル・インフラとは
コンポーザブル・インフラストラクチャ(Composable Infrastructure)は、米HPが今年6月の「HP Discover」で発表した、エンタープライズ市場における新しいITインフラビジョンだ。企業における幅広いワークロードのニーズに、柔軟かつ迅速に対応できる汎用的なITインフラを、“Software-Defined”の力で実現していくものとなる(関連記事)。
日本HP HPサーバー製品統括本部 統括本部長の橘一徳氏は、「柔軟性とスピードを有する“新しいプライベートクラウド環境”を実現していくのが、コンポーザブル・インフラのビジョンである」と説明する。「仮想化技術はITインフラの世界に大きなインパクトを与えた。だが、われわれは『仮想化の一歩先』を志向していかなければならない」(橘氏)。
コンポーザブル・インフラの大きな特徴は、仮想リソースだけでなく物理リソースも単一のコンソールで統合管理可能になる点にある。業務アプリケーションなど従来型のビジネスワークロードは、仮想化されたITインフラへの統合ができた。しかし、Hadoopクラスタによるビッグデータ解析など、物理リソースを必要とする新しいワークロードが登場した結果、それらのためのITインフラを別途用意し、維持しなければならなくなっている。コンポーザブル・インフラの実現によって、この課題が解決できるというわけだ。
HPでは4つのフェーズに分け、コンポーザブル・インフラを実現するための中長期的な製品/ソリューション開発プロジェクト「Project Synergy」を進めている。最終的には、巨大かつ柔軟な物理リソースプールを実現する次世代コンピューター“The Machine”(関連記事)の技術との統合を果たす計画だ。
Helion CloudSystemやChefから物理サーバーをプロビジョニング
同社エンタープライズサーバービジネス開発部 部長の中井大士氏は、コンポーザブル・インフラにおけるHP OneView 2.0とHP Helion CloudSystem 9.0の役割を説明した。
ITインフラの統合管理/セットアップ自動化ツールであるOneViewは、「HP BladeSystem」「HP ProLiant」サーバーや「3PAR StoreServ」ストレージなどの一元的な監視やセットアップを行う。新版の2.0では統合APIが実装され、このAPIを介してHelion CloudSystemなどのソフトウェアと連携できるようになった。これにより、あらかじめOneView上でテンプレート化されている物理リソース構成を、Helionなど上位のツールからの指示に基づいて動的にプロビジョニングできる。
Helion CloudSystem 9.0は、“Juno”ベースのOpenStackを採用したプライベートクラウド基盤ソフトウェアである。上述したOneView連携による物理サーバープロビジョニングのほか、VMwareやHyper-V、Linux KVMのハイパーバイザ(仮想化)環境、AWSやAzureといったパブリッククラウド環境も合わせ、統合管理することが可能だ。
さらにHPでは、OneViewのAPIに対応するサードパーティツール/ソフトウェア群のパートナープログラムも開始しており、すでに「Chef」が対応している。今後、ヴイエムウェアやマイクロソフト、パペットなど、対応するツール/ソフトウェアをさらに拡大していく方針。
なお現状では、Helionなどの上位ツールからAPI経由で実行できる物理プロビジョニングは、あらかじめOneView上で定義された構成のみとなる。これについて中井氏は、より抽象的な指示に基づくより柔軟なリソース切り出しを可能にすることは、将来的な検討課題になっていると語った。
「コンポーザブル・インフラの第一弾製品として、まずはソフトウェア環境をしっかり用意することからスタートした。重要なのは、いずれも既存ソフトウェアのバージョンアップであり、まったく新しいソフトウェアが必要というわけではないこと。またハードウェアも既存のProLiantサーバーなどに対応している」(中井氏)
なお、コンポーザブル・インフラによる自動化インフラ環境の構築や運用を支援する「HPデータセンターケア インフラストラクチャ オートメーション(DC-IA)」も発表された(2015年中に提供開始予定)。24時間保守サポートのほか、Chefとのパートナーシップに基づく自動化やコード化のアドバイス、レビューなどのサービスを提供する。
希望小売価格(税抜)は、OneView 2.0が7万9000円から、Helion CloudSystem 9.0が19万9000円から(10 OSインスタンスライセンス)となっている。DC-IAは個別見積もり。
なお同日、2Uサイズに最大4サーバーノード/96コア、2.5インチHDD/SSD×24本を搭載する中規模仮想環境向けアプライアンス「HP ConvergedSystem 250-HC StoreVirtual System」も発売された。Software-Defined Storage(SDS)のStoreVirtualやVMware vSphereなどがプリインストールされており、仮想サーバー50~100台の環境をすぐに構築できる。希望小売価格は1707万6000円から。