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セグメント情報を読み解こう

VW問題はアウディ、ポルシェに波及するか?

2015年09月30日 07時00分更新

文● 長谷川正人

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フォルクスワーゲン(以下VW)の排気ガス不正試験が問題になっている。VWは65億ユーロ(約8700億円)の引当金を計上する一方、米国当局だけでも最大180億ドル(約2兆1600億円)の制裁金を課されると見られる。同社は、日本のトヨタ、米国のGMとともに、世界で年間1000万台前後の自動車を販売するビッグ3の一角であり、ブランドイメージの失墜によって世界的にVW離れが生じれば、VWの業績だけでなく、世界の自動車市場にも大きな影響があるだろう。

VWグループ連結業績

VWグループ連結業績

上場企業としてのVWグループは、事業セグメント(主要ブランド)ごとに販売台数、損益等を個別に開示する珍しい企業だ。「アウディ」、「ポルシェ」など12ものブランドを抱えるVWグループにとって、問題を「VW」ブランドに限定できるかどうかがカギになる。

セグメント(ブランド)情報によれば、「VW」はVWグループの連結販売台数(約1000万台)、売上(約27兆円)のそれぞれ半分を占める大黒柱だ。しかし、営業利益は約3300億円、営業利益率はわずか2.5%であり、約1兆7000億円のグループ連結営業利益の2割弱に過ぎない。グループ利益に大きく貢献しているのは、「アウディ」(営業利益約7000億円、営業利益率約10%)と「ポルシェ」(同約3700億円、16%)。VWグループにとって、「VW」は台数と売上を稼ぐブランドであり、連結営業利益の6割以上は高級車ブランドの「アウディ」と「ポルシェ」で稼いでいる。

アウディ、ポルシェもVW傘下企業

VWグループの収益構造が分かると、今回の事件の見方も変わるだろう。今回の問題がVWグループの業績にどう影響するかは、利益率の高い「アウディ」と「ポルシェ」への波及をかわせるかにかかっている。

実は、問題となった不正ソフトは、「VW」ブランドだけでなく、「アウディ」「シュコダ」「セアト」にも搭載されていた。VWグループは「アウディ」や「ポルシェ」の広告を別々に展開するなど、もともと「VW」と同じメーカーのクルマであることを強調していない。今のところグループ企業名でもある「VW」ブランドがいわば泥をかぶることで「アウディ」「ポルシェ」への影響は避けられているが、不正問題がアウディの他車種に広がったり、ポルシェにも飛び火したりすれば、VWグループの収益源を直撃する。

私が昨年刊行した『「強い会社』はセグメント情報で見抜きなさい」では、粉飾決算やリコール隠しによって存亡の危機に立たされたオリンパスや三菱自動車が再建を果たせた理由を、セグメント情報に基づいて解説している。株式投資や企業の研究では、セグメント情報に着目することで、表面的な報道よりも深く問題の本質を理解できるのだ。

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