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編集者の眼第60回

他人に冷たくても日本人は温かい動画が大好きと判明

2015年11月11日 13時00分更新

文●中野克平/Web Professional編集部

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動画広告に予算をかける企業が増えている。ほぼ世界中で利用できるYouTubeのユーザーが増え、ある意味テレビ以上の影響力を持つようになったこと、何回見られたか、Like、Shareなどのソーシャルリアクションを何人がしたのかを、テレビよりずっと正確に数値化できるのも、グローバル企業が動画広告に力を入れる理由だろう。

たとえば以下の3作品は、近年世界中で話題になったので覚えている人も多いだろう。

フォルクスワーゲン「The Force」

「The Forth」(2011年2月公開)の再生回数は6317万回以上。今話題の自動車メーカー・フォルクスワーゲンの動画広告だ。フォース(映画『スターウォーズ』シリーズに登場するある種の超能力)を使えると信じる子どもが超能力で自動車のエンジンをかけるおかしさで、自動車をリモコン操作できることを印象づける内容だ。

ダヴ「Real Beauty Sketches」

「Real Beauty Sketches」(2013年4月公開)の再生回数は6643万回以上。ヘアケア製品などで知られるユニリーバのダヴ部門の動画広告だ。FBIで訓練された似顔絵作家に、本人と友人がそれぞれ顔の特徴を説明して描かれた似顔絵は、本人より友人の説明に基づいたほうがずっと魅力的になる、という内容を通じて「あなたは自分が思うよりずっと魅力的な女性ですよ、自信を持って」と訴えている

エビアン「baby&me」

「baby&me」(2013年4月公開)の再生回数は1億1483万回以上。食品メーカー・ダノンのミネラルウォーターブランド、エビアンの動画広告だ。街を歩く人そっくりの赤ん坊がバスのドアやショーウインドーなどのガラスに映り込み、ダンスを始める内容。やや分かりにくいがブランドメッセージである「Live Young」を表現しているのだろう。

UnrulyのSharaRankとは?

どれも単独で数千万回以上再生された動画だが、実は同じ企業が関わっていた、としたらどうだろうか? その企業はアンルーリー。動画がシェアされる要素を科学的に解明した技術「ShareRank」を武器に、動画制作時の助言、もっとも動画に共感しやすい層への配信などを請け負う。最近は米ニューズ・コーポレーションに9000万ドル(約111億円)で買収されたことでも話題になった。

アンルーリーが公表しているShareRank周期表には、「喜び」、「陽気」といった強くシェアに作用する感情から、「混乱」、「うんざり」など、逆にシェアを妨げる感情など、動画の要素が7つに分類されている。

ShareRank周期表

周期表の使い方は明らかにされていないが、The Forthは、自動車の購入を検討中のファミリー層に、家族、子ども、自動車の特徴と「心暖まる」や「ほほえみ」といった要素を混ぜて作られたのだろう、と推定できる。

ただし、シェアされやすい感情は各国で異なる。11月に日本法人を設立したアンルーリーによると、欧米では「嬉しい」、「愉快」といった感情を含む動画を「製品やサービスを勧めたい」、「会話のきっかけに」という動機でシェアされるのに対し、日本では「温かみ」や「感動」のある動画を「他の人の意見を聞いてみたい」理由でシェアされるのだという。

イギリスのチャリティー団体Charitable Aid Foundationが毎年発表している世界寄付指数によれば、日本は他人を助けることに関しては対象の135カ国中134位、総合指数でも90位と、経済規模の割に振るわないことが発表された。しかし、シェアされる動画は欧米とは異なり、日本では優しさが一番。本当は優しくしたいけど、他人に優しくするタイミングがつかめない、シャイな一面が原因なのかもしれない。

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