ナデラCEO自らがひとりでデモストレーション
ところで、ナデラCEOの基調講演の中で、いくつか興味深い点があった。
ひとつは、ナデラCEO自らがひとりでデモストレーションを行なったことだ。もともとスクリプト原稿などは一切用意せずに基調講演を行なうナデラCEOだが、製品のデモストレーションを自ら行なうというのは久しぶりのこと。しかも、BtoCの製品となればなおさらだ。最近のマイクロソフト主催のイベントでは、デモストレーションを行なう社員の横で、ナデラCEOがその進行の相手役を務めることが多かったが、今回は1人ですべてのデモストレーションを行なってみせた。
「ここにはたくさんのデバイスがある。もう少しリハーサルをちゃんとやれば良かった」とジョークを飛ばしながら、正式発表前の「Office 2016」の機能を紹介。途中で接続が切れたり、音声認識がうまくいかなかったりというトラブルはあったが、そのあたりも無難に切り抜けてみせた。
「Dreamforce 2015」基調講演に、米マイクロソフトのサティア・ナデラCEOが登壇。ナデラCEO自らがひとりでデモストレーションを行なった。音声認識がうまくいかないというトラブルも |
Officeのアイコン満載の「iPhone Pro」を紹介!?
ふたつ目は、ナデラCEOが、なんとiPhoneを使ったデモストレーションを行なった点だ。
「このiPhoneは、私の私物ではない」と、ナデラCEOにしては珍しいジョークで会場を沸かせたあと、「この中には、マイクロソフトのOfficeのすべてのアプリが入っているので、『iPhone Pro』と呼ぶことにする」と、アップルが提供しているiWorkをさりげなくけん制。iPhoneで、Officeを動作させてみせた。
マイクロソフトのCEOが、アップル製のデバイスを使ったデモストレーションを行なうのは異例だ。ただ、ナデラCEOがデモストレーションに使用していたiPhoneの画面は、マイクロソフトのOfficeのアイコンだらけのものだった。しかもその後には、「Windows Phone」を持ちだしてデモストレーションを継続。「こちらの方が慣れている」と語り、また会場を沸かしてみせた。
米マイクロソフトのナデラCEOの基調講演は、雑誌「Wired」のシニアライターであるジェシー・ヘンペル氏との対談方式で行なわれたが、ヘンペル氏が「今日、この日を迎えられたのは、マイクロソフトの変革抜きには考えられない。2年前には、この場にマイクロソフトのCEOがいるとは考えられなかったのではないか」と指摘。確かに、マイクロソフトの変革抜きには今回の参加はありえなかっただろう。
ナデラCEOは、アドビやアップルのイベントにも参加するなど、エコシステムを重視した動き方を積極化している。また、自らが挑戦者であるというポジションからの発言も増えている。
今回のDreamforceでも、「我々はプラットフォームの会社。プラットフォームの会社として成功するためには、セールスフォース・ドットコムをはじめとする、あらゆる企業とのパートナーシップ、政府機関などとの連携が大変重要だ。これがプラットフォーム企業の役割である」と語る。
エコシステムを重視し、挑戦者の立場で様々なパートナーと手を組むのが今のマイクロソフトの基本姿勢。今回のDreamforceでも、マイクロソフトの変革を感じることができたといえよう。
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