お天気ビーコンで
さらに細かな予想が可能になる!?
そんなウェザーニューズは、お天気レポートを寄せてくれるユーザーのうち、2000ポイントを貯めたユーザーに対して、気象観測センサー「WxBeacon」を無償でプレゼントし始めました(関連記事)。
このビーコンは、アプリックスIPホールディングスの協力によって開発しており、気温/湿度/気圧を24時間観測することができます。
Bluetoothを通じて観測データをストリームしており、ウェザーニュースアプリで、お天気のリポートをする際、センサーで観測したデータを添えて、写真やコメントを送信することができるようになります。
このセンサーのデータは、2000ポイントを獲得した会員以外のウェザーニュースユーザーでも受信できるため、たとえば街中のお店などに設置されていれば、ウェザーリポートを行なう人がリアルタイムデータを送信できるのです。
つまり街中に配布されればされるほど、体感とセンサーによる実測値の両方を組み合わせたデータが収集できるようになります。
確かに中学の夏の自由研究の際、温度計/湿度計/気圧計を持ち歩き、時間ごとに空のスケッチと観測データを記録しながら、夕立雲が発生する様子を観察していた覚えがあります。
このセンサーがあると、アプリで簡単に、データと写真を組み合わせて記録でき、また自分の周囲の人たちの観測データや写真も見つけることができるため、夏場であれば夕立雲の発生しそうな「気配」から観察できそうです。
また、ゲリラ雷雨や台風などの激しい気象が接近しそうな警戒時間に、細かくビーコンデータを観察することで、そうした気象の予兆やピークを知ることもできるかもしれません。
ウェザーニュースも、リアルタイムデータの観察の仕方などをアプリを通じてレクチャーしながら、ビーコンの深い活用を行えるよう、ユーザーとコミュニケーションを取って行くと効果が上がるでしょう。
もはや、自由研究という特別な目的ではなく、日々の生活の中で日常的に利用できる手軽さを実現しつつあります。こんなことができてしまうと、学生にとっては自由研究のハードルが上がってしまったようにも思いますが……。
「5秒で雨が止む」も夢ではないかも
災害も引き起こす気象現象は、草の根レベルだけで太刀打ちできるほど優しい問題ではありません。
しかし観測を通じて、自分が住んでいる場所の「パターン」のようなものを発見したり、周囲の人たちの様子から、次の30分に体験するであろう天気を知るなど、ユーザーひとりひとりの関心と理解は非常に深まることは間違いありません。
結果的には、天気を注視し、災害を防ぐ行動を取ることができる人々を増やしており、かつ周囲の人々へ「観察」という形で貢献している点が、気象観測のクラウドソーシングの大きな効果だと思いました。
2015年は映画「Back to the Future 2」でタイムトラベルした先の未来の年であるとして話題になっています。映画の中の2015年では、ドクが5秒後に雨が止むと、天気予報を参照してマーティーに言いました。
米国で暮らしている限りでは、とてもこんな精度での天気予報は実現されていませんが、人口密度が高い日本で、クラウドソーシングによる空の監視網を持ってすれば、夢ではない段階に来ているのではないでしょうか。
たとえば、300mおきにウェザーリポーターがいれば、秒速5メートルの風で流れてくる雨雲を分単位でとらえることができます。あと1分で雨が降ると予測することは、すでに可能なのかもしれません。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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