AppleWatchの発表と市場参入で急激に盛り上がったスマートウォッチ市場だったが、昨今は日本はおろか世界中に広いスペースを割いたAppleWatch売場だけが閑古鳥が鳴いているありさまだ。
理由はいろいろあるだろう。たとえば、すでに腕時計という商品カテゴリーは、メインターゲットである若年層にとって必需品ではないこと。また、通知を知るだけなら、常時、腕に装着していなくても、必要な時にポケットからスマホを取り出して眺めてもその利便さは大差ないこと。
さらに、今や何でもできちゃう感の強いスマホをいじりまくるマニアックさと暇つぶしの方が腕時計以上に楽しいこと――などなど、挙げればきりがない。
しかし、おおよそ当初の予想通り、とにかくスマートウォッチの売上は過去の“腕コンピュータブーム”と同じく、ピタッと止まってしまったのが現実だ。
そんな中、従来よりGoogle&Appleの推すスマートウォッチとは一線を画す、スマートフォンと連携する「スマートフォンリンクモデル」と称するカシオの腕時計シリーズがある。そして、それが意外と人気があるらしいと聞いたので衝動買いしてみた。
カシオはすでに3年ほど前から、BluetoothでiPhone 5と接続し、音声やメールの着信通知、時刻合わせ、iPhoneの紛失検索等、限定機能に絞った「G-SHOCK GB-6900」(関連記事)を発売している。
スマホアプリで設定が行なえる
多機能腕時計「CASIO EDIFICE ECB-500」
今回、筆者が新たに衝動買いした「CASIO EDIFICE ECB-500」(以下、ECB-500)は、コンセプト面から見れば、従来の同社のモデルとも、昨今のスマートウォッチの共通概念からも少し距離を置いた腕時計らしい商品だ。
ひと目見ても、同社のドル箱モデルである「G-SHOCK」とは対局にあるモデルであることは明らか。従来からある少しドレッシーなEDIFICEシリーズの仲間であり、昨今人気の立体的な文字盤構造を採用している同社の「MTG-S1000」シリーズ(関連記事)とも部分的に似通っている。
ECB-500を一言で表わすなら、デュアル・ダイアル・ワールドタイムでカレンダー、タイマー、アラーム機能などが付いたタフソーラーシリーズの多機能防水腕時計だ。ほかのラインナップとして、ECB-500の色違いであるブラックモデル「ECB-500-DC」、液晶表示のまったくないメカニカルデザインだけの「EQB-510」、スポーティーデザインの「EQB-500」(初期モデル)がある。
最初に発売されれたモデルであるEQB-500のみがメール確認機能を搭載している。それに引き換え、最新機種であるECB-500は一般的なスマートウォッチの基本機能中の基本と一般に認知されているメール確認機能すら搭載されていない。しかし、そこにこそカシオの考えるスマートウォッチのコンセプトが見え隠れして興味深い。
スマートフォンリンクモデルの目的は、EDIFICEのような多機能腕時計の操作を腕時計本体だけで行なうのではなく、より操作感の分かりやすいスマートフォン上のアプリを介して、誰もが簡便に操作することを目的としているようだ。
多機能化と複雑化の一途をたどるデュアルタイムやワールドタイム、ストップウォッチやタイマー、マルチアラームの設定などを、腕時計本体の複数のボタンだけで設定するのは極めて難しい。
普段からその腕時計を四六時中操作していて習熟していなければ、海外出張の前日になってその腕時計を持って行く決断はなかなかできないのが現実だ。多くのユーザーは付属の操作ガイドブックやPDF版の操作マニュアルを読み、試行錯誤しながらたどたどしく操作するが一般的だろう。
スマートフォンリンクモデルは、スマートフォン上で動作する操作解説書の延長のようなアプリ上で、設定したい項目を選択、実行し、その結果をBluetoothを介してEDIFICE腕時計に転送できる。
同じような設定操作でも、腕時計上の小さなボタンでするより、大きくて使い慣れた操作性のいいスマートフォンでする方がカンタン、というか、今までにない発想で極めて面白い。
現代の一般的なスマートウォッチが、親機であるスマートフォンの機能をリモコン操作のようにして利用しようとするのに対して、スマートフォンリンクモデルは、小さく操作性の低い腕時計を、より使い慣れたスマートフォン上のアプリから操作、設定するというまったく逆の発想だ。
次ページへ続く、「スマホとの連携はあくまで補助的な機能」

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