先週は東京でした。バークレーと東京を比較すると、最高気温も最低気温も両方ともきっちり10度、東京の方が高いという気候です。5日間の短い滞在でしたが、気温も湿度も高い東京は、空気だけでいえば、熱帯のリゾートを訪れたような気分と言えなくもありません。
夏の日本滞在のうち、2日間は長野県上田市を訪れていました。本連載でも過去に紹介した(関連記事)、筆者が副校長を務めるプログラミング必修の通信制高校「コードアカデミー高等学校」の夏期スクーリングが行なわれているためです。
スクーリングでは、クラウドを介して行なう普段の授業を補う、教室での授業や体育などの実習教科が行われます。また、同級生や先輩、後輩と顔を合わせて学ぶ貴重な機会でもあります。
Pepper、再び高校に
今回、プログラミングの課外授業として、Pepperのプログラミングを行なうことになりました。Pepperは、春に入学した1年生に向けて、入学式で祝辞を読んでくれました。1年生にとっては、今度は自分たちでPepperの動きをプログラムしようという機会になります。
Pepperは感情認識ロボットで、人の顔を認識してこちらをみたり、会話をしたりすることができる仕組みを備えていますが、「ロボアプリ」を開発して自分の思い通りに動作させることもできます。今回は、このアプリを作ってみようという課外授業にチャレンジしました。
講師には、よしもとロボット研究所のチーフクリエイター、髙橋征資氏をお招きしました。髙橋氏は大学時代、ゼミの教授に「ロボットにお笑いをやらせたい」と相談し、ロボットとエンターテインメントの世界でのものづくりを始めたといいます。
髙橋氏のユニット名である「バイバイワールド」(関連リンク)は、プログラミングの最初で「Hello World」を表示させることから、これへのカウンターとして名付けたそうです。
自分の腕の型を取って、自分の拍手の音を忠実に再現する等身大ロボット「音手」(おんず)やデジタル的当てゲームなどの開発を行っている中で、現在の所属であるよしもとロボット研究所で、Pepperのプログラミングに関わるようになりました。
Pepperのアプリ開発では、「アメトーク」「ロンドンハーツ」の放送作家としても活躍する中野俊成氏がチーフプランナーを務めています。お笑いのアプローチからロボット開発に取り組む背景について、髙橋氏は「ロボットに面白さなどの演出から人間味を持たせて、身近に感じてもらえるような工夫がある」と講義で話していました。
いざ、Pepperプログラミング
Pepperプログラミングは、まずは「何をさせるか」という議論から設計していきます。今回のテーマは、「メンバーの紹介をPepperにしてもらう」というもの。基本的には名前を読ませるだけで良いのですが、これにPepperならではの動作を加えていこう、ということでグループでの議論が始まりました。
後述しますが、開発環境が非常に平易に作られているため、Pepperそのものに「何をさせるか」がプログラミングにおける最も重要なポイントになっているからです。
Pepperに限らず、ロボットの動作には、始まりと終わりが明確にあり、一連の動作をさせるプログラムと、ずっと起動している状態で受け答えを行なうようにするプログラムが存在あります。もちろん、これらを組み合わせることもできます。
今回の自己紹介は前者に当たりますが、後者の場合は人との対話などの条件に応じた動作が介在することになります。例えば店頭での接客の場合は、相手となる人に選択肢を選んでもらったり、想定される言葉に応じた案内ができるようプログラムを作っていきます。
PepperはAldebaran社が用意する開発環境、Choregrapheを用いて開発します。一連の動作のプログラムの場合は、言葉や動作のブロックを時系列に結んでいけば、プログラムが完成してしまうほどの手軽さです。
ブロックにはパラメーターが用意されており、喋る内容を直接入力することができます。すでに日本語に対応しているため、文字を入力すればすぐに喋らせることができます。が、イントネーションなどをより自然にするため、ひらがなやカタカナ、あるいは「っ」などを加えながらチューニングをしていきます。
動作では、ちょうどFlashのタイムラインのように動きをフレーム上に記録していきます。可動部は首、腰、膝、腕の6ヵ所となっており、これらを駆使してより人間らしい動作ができるよう、よしもとロボット研究所ではダンサー出身のクリエイターも参画しています。
ただ、例えば腕の6ヵ所の可動部分を画面上のパラメーターを操作しながら思い通りに動かすのはなかなか大変です。そこで、Pepperには、実際人が腕を持ち上げて、その状態を記録するモードもあります。ちょうど、Pepperに動きを覚え込ませるような感覚で、プログラミングができるのです。
(次ページでは、「まったく関係ないアプリを作ったチームも」)
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