ATI/AMDの消極的な姿勢もあって、HPC市場におけるGPGPUはNVIDIA一色になるか……と思いきや、意外な対抗馬が登場した。それがインテルである。ベースとなるのはLarrabeeだ。Larrabeeは以前GPU黒歴史でも解説したが、まずは簡単におさらいしよう。
GPU分野で遅れをとったインテル
2000年に入ってからは、インテルのGPUコアには性能不足が顕著になってきていた。実際ATIは2002年以降Radeonベースのグラフィック統合チップセットをインテルとAMD向けに提供、後追いでNVIDIAが2005年以降にGeForceベースのグラフィック統合チップセットをAMD向けに提供するようになり、この部分でインテルのグラフィック統合チップセットは性能面の不足が強く指摘されるようになっていた。
インテルのグラフィックの元祖は、1998年に投入されたIntel 740である。
登場時点ですでに性能が足りないものを、その後も必死に改良していったのだが、さすがにインテルといえどGPUにまで潤沢に開発者を張り付けるのは難しかった、もしくはGPUに慣れた開発者をそろえるのが難しかったのだろうか、GPUの性能でははるかに小規模なSiSの提供するGPUとほぼ同じ性能だったのはあまり褒められた話ではなかった。
悪いことに、インテルは2000年台後半からプラットフォームを大きく変える予定であった。最終的には2008年のNehalemでQPIとして登場することになった新しいプロセッサー・インターコンネクトは、当初はCSI(Common System Interface)と呼ばれていた。
これが最初に搭載される予定だったものはWhitefieldとTukwilaというコア(Whitefieldがx86、TukwilaはIA64)であり、ところが両方とも2005年にキャンセルになってしまう。
実はこのCSIが普通に立ち上がっていれば、その後にはデスクトップまでCSIを落としてくる予定であった。このタイミングでインテルはバスライセンスを変更し、以後は互換チップセットベンダーにバスライセンスを供給しない予定で、これは最終的にQPI/DMIのタイミングで実現したのだが、そうなるとますますGPUの性能不足が他社に比べて際立つ結果になるのは目に見えていた。
もちろん、この当時もインテルはGPU性能の改善に懸命に努力を続けていたが、SM 3.0対応をうたったIntel GMA X3000のひどい有様を見ると、色々追いついていないことはそれほど変わっていなかったようだ。
加えて言えば、なにしろ元々がIntel 740なので、これをプログラマブル・シェーダーに変更するだけでも一苦労だった(というあたりがGMA X3000の遅れの最大の要因だったのだろう)ようで、ましてやGPGPUに使う場合の最適化など夢のまた夢である。「だったらスクラッチから起こしなおしてもいいのでは?」という発想が出てくるのはある種自然である。
問題はそこで、x86コアに固執したことだ。この当時インテルはなんでもかんでもx86を入れようとしていた。結果として、セットトップ・ボックス向けのIntel CE 3100や通信向けのTorapaiことIntel EP80579など、その当時としても「これはどうだろう」と思うような製品がたっぷり出現した時期でもある。
それ以前は、DECのStrongARMを作り直したXScaleや、やはりDECで開発されていた独自のRISCベースMicroengineを搭載したIXPシリーズ、あるいはXeroxと共同開発しながら発売前にお蔵入りしてしまったMXPシリーズなど、さまざまな非x86アーキテクチャーに手を出しつつ、結局どれもうまくいかなかった。そのため、「インテルはx86以外やっちゃダメだ」という雰囲気が社内に漂っていたとしても不思議ではない。
(→次ページヘ続く 「GPGPUにx86コアを使うのは無理があった?」)
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