迫真に迫る低音、臨場感の表現が巧み
というわけで、Answerの音の魅力についてより詳しく聴きこんでみる。
Gregory Porterの「Liquid Spirit」はブルーノートレーベルとしては新しい録音で、96kHz/24bitの収録。オーディオ関連のデモでは定番の楽曲でもある。シンガーの野太い感じの声に加え、ブリブリ・ゴリゴリっと響く特徴的なベースライン、タンバリンなどの打楽器やピアノなどのリズム感や細かな楽器の表現、そしてベースと手拍子だけでフェードアウトしていく最後の曲の演出など聴きどころが多い。
まず2~3万円クラスのダイナミック型イヤフォン数機種と比較してみると、低域の質が明らかに異なる。太い。そしてリッチだ。そんな声の魅力を存分に感じる。
音の立ち上がりも速く、なまりや雑味がない。特に曲の最後ではベースと手拍子だけが、静寂な空間にバシッと浮かび上がる。S/N感の高さや音の立ち上がりの速さを感じる。音のあるところだけでなく、音がない部分にも曲としての意味があり、魅力があるという点が伝わってくるようだ。
この魅力的な低域をより深く体験したいということで、バスクラリネットの独演を聴く。Eric Dolphyの「Stockholm Sessions」から「GOD BLESS THE CHILD」(44.1kHz/24bit)。期待通りというか、ここでもAnswerは充実した低域の再現を示してくれた。
適切な量感があり、かなり深い低域まで音が沈む良質な低域はもちろんだが、この楽器が持つ2面性をうまく描き分けているように感じる。速いパッセージで顕著な「芯があって荒々しい輪郭」の表現と、ロングトーンなどで感じる暖かくて「豊かな響き」の対比だ。
低音楽器といっても実際の音には、基音の上に複雑な倍音が重なる。空気感につながる残響もある。単に音が鳴っているだけでなく、演奏の緊張感や臨場感を強く感じるのは、低音の強さや深さだけではなく、全周波数帯域を通じて癖がなく、高域までバランスよく抜けるユニットの素性のよさがあるはずだ。ブラス楽器の複雑な音色の再現、そして魅力的な演奏の表現は傑出していると感じた。
もちろんこれらは情報量の豊富さと解像感、低域から高域まで自然につながるワイドレンジの再生といった基礎体力の高さが裏打ちしている。しかしどの曲を聴いても、単純な性能の高さではなく、聴いている曲にどんな音楽性があるか、演奏者がこめたパッションはどんなものかをより強く意識する点を強調したい。
ダイナミック型イヤフォンでは究極の選択肢のひとつ
Answerシリーズはダイナミック型ユニットを搭載したイヤフォンであるが、聞き込むほど、その枠を大きく超えた表現力を持つ製品だと実感する。(もちろんダイナミック型だから実現できている面があるとはいえ)冒頭で述べたような筆者の狭い知識と経験による先入観を軽く超えた点にも心服した。
そういう意味で、ほかのイヤフォンが実現できない上質な体験を提供できる魅力的な製品を送り出せるブランドがDITAであり、この目標のためにパーツ選定からこだわりぬいたのがAnswerと言えるのかもしれない。その名のとおり、ダイナミック型イヤフォン究極的な答えを示す1台となり得る。
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