攻めのIT投資で成長する企業が投資家といっしょに育つ
だが、日本の企業においても、攻めのIT投資の機運がないわけではない。
「ITを攻撃のツールとして利用している企業は、我々のイメージよりも多いことに気がついた。日本の企業価値の向上に大きな役立っていると期待している」と、東京証券取引所・清田瞭社長は語る。
今回、攻めのIT経営銘柄に選ばれたのは、積水ハウス、アサヒグループホールディングス、東レ、エフピコ、ブリヂストン、JFEホールディングス、小松製作所、日立製作所、日産自動車、ニコン、トッパン・フォームズ、大阪ガス、東日本旅客鉄道、アルファポリス、三井物産、三井住友フィナンシャルグループ、東京海上ホールディングス、東京センチュリーリースの18社。
経済産業省・宮沢洋一大臣は、「選定された18社の投資パフォーマンスは、日経平均銘柄の1.2倍の好成績。攻めのITに取り組む企業が、投資家や市場との対話を通じて、さらに成長することを期待している」と述べた。
「攻めのIT経営銘柄」の選定に際して設置した「攻めのIT経営銘柄選定委員会」の座長を務めた一橋大学大学院商学研究科特任教授 CFO教育研究センター長の伊藤邦雄氏は、「3年間の平均ROEが8%を超える稼ぐ企業は、攻めのIT経営に積極的であることが、いくつかのデータから明らかなった」とする。
たとえば、ITの活用や技術動向について、経営トップが最も関心や知見があるという企業は、ROE8%以上の会社では42.3%に達するのに対して、ROE8%未満の企業では21.0%に留まったという。
伊藤氏は、「ROEが高い『稼ぐ力』がある企業には、共通の特徴が見られている」と前置きしながら、その共通項として以下の点をあげる。
「経営トップ自らがITについて、高い関心を有している」
「事業部門にIT人材を配置している」
「社内においてIT人材を育成している」
「経営トップ自らが情報システムの刷新に取り組んでいる」
「経営トップが情報セキュリティリスクを認識し、対応している」
「積極的に株主などに向けてITに関する取り組み説明をしている」
「事業革新のためのIT活用を他社に先駆けて開始している」
成長する企業には、攻めのIT投資がもはや必須条件。そして、それを実行に移すには、経営トップが積極的にITに関わることが求められている。
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