第2世代のクラウド戦略には4つの成功要因がある
サーバーワークスとAWSの関わりをひとしきり説明した大石社長は、いま押し寄せている第2世代のエンタープライズ事例に話を移す。
これまでAWSの事例の多くは、オンプレミスのサーバーをクラウドに移行するというパターンがほとんどだった。同社が手がけた中では、200台超の仮想サーバーを3ヶ月でAWSに移行し、コストを3割カットしたインテージや、グループ内の2000台のサーバーをAWSに統合した丸紅などの事例がこうしたパターンになる。しかし、2015年以降のユーザー事例は今までとやや違うという。大石氏は、第2世代のエンタープライズ事例の特徴を説明した。
30弱のWebサイトをAWSに統合するプロジェクトを進める味の素。同社では単にAWSに統合するだけではなく、エンタープライズグレードのCMSとAWSのオートスケーリングを統合し、コスト効率とガバナンスを両立したという。また、AWSのアカウントを開発者向けのアカウントと分離して、数多くの個人情報を保護。さらにアプリケーションレイヤーと個人情報のレイヤーをAWSの「VPC Peering」で接続しているという。
VPC Peeringは、AWSのプライベートクラウドの単位であるVPC(Virtual Private Cloud)同士を相互接続することができる。「AWSのアカウントが分けられても、接続できる。オンプレミスのネットワーク接続をクラウドに持ってこられる。つまり、SDNがAWSの中で完成したことになる」と大石氏は説明する。
横河電機もWebサイトの統合案件だが、AWS内にWAF(Web Application Firewall)をデプロイしているのがユニーク。Webサイトを個別のVPCに割り付けつつ、上流にインパーバのWAFを複数のAZ構成で展開。「WAFでトラフィックをクレンジングして、正常なトラフィックだけを、VPC Peeringで個別のサイトに転送している」(大石氏)とのことで、世界初の事例になるという。
さらに横河電機はさまざまなログをS3に収納し、Splunkでビッグデータ分析まで行なっている。「今まではストレージ容量が限られていたので、データは捨てるのが正義だった。でも、容量無制限のS3があれば、そこにデータが溜められる。溜めることが正義になり、いろんな分析をビジネスに活かすレポートで出せるようになった」と大石氏は説明。グローバルでの売上が国内での売上よりも拡大する中、クラウド上のSplunkでビジネス側の要求に応えるスピードを実現したという。
ゲストとして登壇した横河電機 経営管理本部 YGSP部 山下じゅん子氏は「サーバーワークスはSE、営業ともとにかく熱意がある。単にサーバーを立てるだけではなく、どういう背景でそのサーバーを立てるのか、どういう成果を出すのか、私たちと同じ立場で考えてくれる」と高く評価した。
そして大石氏は、これら最新のユーザー事例で共通しているポイントとして、「ガバナンス」「セキュリティ」「ビッグデータ」「自動化」の4つを挙げる。「ガナバンスを取り戻すためにAWSをお使いになっている。オンプレミスよりもAWSの方がセキュリティが高いことはすでに多くの方が同意してもらっている。AWSを使い、セキュリティをどのように拡張するか考えている」と大石氏は指摘する。
4つ目の「自動化」に関して大石氏が紹介したのは、サーバーワークスお手製の運用自動化ツール「Cloud Automator」だ。大石氏は「AWSで提供されているAPIを活用することで、ストレージのバックアップや土日に必要ない開発サーバーのオンオフを自動化できる」と説明する。また、DRにも最適で、万が一東京リージョンで障害が発生しても、別のリージョンでサイトを自動リカバリできる。
Cloud Automatorはリリース1年でロート製薬や丸紅など約300のユーザーを誇り、すでに12万以上のジョブを自動化しているという。「1ジョブに5分かかっていると考えると、自動化している時間は20万時間におよぶ」と大石氏はアピールする。
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