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Uberizationによる業界破壊で日本企業が生き残るには?

選ばれる会社になるためSlackを選んだサーバーワークス

2019年08月26日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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 2019年3月に開催されたSlackのユーザーイベント「Why Slack?」ではクラウドインテグレーターのサーバーワークス CEOの大石良氏が登壇。「Uberization」と呼ばれる業界破壊を生き残るためにSlackを導入した背景とオープンなSlackによってもたらされたカルチャーについて説明した。

サーバーワークス CEO 大石良氏

対岸の火事ではないUberization 優秀な人材を確保するには?

 Why Slack?に登壇したサーバーワークス代表取締役社長の大石良氏はまず会社概要から説明した。2000年に創業したサーバーワークスは、大学の合格発表のためのシステム構築を手がける中で、大量のサーバーが必要になる課題を解決するクラウドに行きついた。2008年からはサーバー購入禁止令を出して、社内システムをクラウド化し、2009年にはAWS専業のインテグレーターに舵を切った。

 当初はクラウドの認知に苦労したものの、2011年の東日本震災時に日本赤十字社の義援金募集サイトをAWSで短期間に構築。「われわれは3月14日に初めて日赤さんに伺い、15日にはサイトを復旧し、17日には義援金の募集サイトができた。約3200億円の義援金は私たちがAWS上で作ったシステムで集められ、被災者に届けられている」と大石氏はアピールした。

 こうした実績の積み重ねにより、現在はエンタープライズ企業を中心に、700社を超える導入実績を誇る。2014年からはAWSのパートナーとしては最上位の「AWS Premier Consulting Partner」に選ばれており、3月には東証マザーズへの上場も果した。

3月には東証マザーズへの上場を果した

 そんなサーバーワークスも含めた日本企業のこれからの課題は、いわゆるデジタルトランスフォーメーションだ。大石氏が示した「Uberization」とは、Uberのような新世代のプレイヤーがITを武器にして既存のビジネスを破壊してしまうことを指す。大石氏は、「アメリカの西海岸に行って感じたのは、流しのタクシーが全滅したこと。サンフランシスコの定宿の前にあったレンタカー屋も、ついにつぶれてしまった」と語る。

 こうした業界の破壊はあちこちで顕在化しており、タクシーやレンタカーの業界を破壊したUberやLyftのほか、ホテルを次々に廃業に追いやる民泊大手のAirBnB、レンタルビデオや映画会社、ケーブルTVなどに引導を渡しつつあるNetflix、ゲームの市場を変えようとしているアップルなどが、業界で台頭しつつある。

私たちに襲いかかるUberization

 逆説的に考えると、ITが破壊する領域が拡大し、若者が減っているということは、エンジニアの価値や若手人材の価値が相対的に増していることを意味する。大石氏は、「優秀なエンジニア、若手人材を育成し、リテンション(定着)するプランを持っていない会社は、これから立ちゆかないと思っている。これから人が減ってくると、会社が人を選ぶのではなく、人が会社を選ぶようになる。しかも、この状況は元に戻ることはない」と指摘する。

 大石氏は、これからの日本の会社は人材育成や競争力の源泉にリソースを集中し、若くて優秀な人が興味を持って仕事に集中できるインフラを作る必要があると強調する。「わけのわからない決め事のあるメールなんて、若い人はもう使わない。選ばれる会社になるための制度と風土を経営トップから作っていく必要がある」(大石氏)。

 サーバーワークスでは、自らがはたらきやすい会社になり、それを社会に伝播させ、これらをクラウドで実現するという想いを「クラウドで、世界を、もっと、はたらきやすく」というビジョンに込めた。そして、選ばれる会社になるための風土を実現すべく、フレキシブルで働きやすいオフィスの構築とともに、導入を進めたのがSlackだ。

サーバーワークスのビジョン

サーバーワークスがSlackを導入した3つの理由

 Slackを導入した理由の1つ目は「原則オープン」であること。「メールはToやCCに入った人しか読めないので、原則クローズ。でも、Slackはパブリックチャンネルを作れば、誰でも入れるので原則オープン。急成長した会社にあとからジョインしたメンバーでも、履歴をトラックできる」と大石氏は語る。実際、Slackを導入する際に、大石氏が社内で行なったプレゼンでも、社員に問うたのはオープンとクローズのどちらがよいかだった。もちろん、答えは言うまでもない。

原則オープンなSlackのメリット

 Slack導入を行なったサーバーワークスは、現在3600近いオリジナルの絵文字を社内のやりとりで使っている。「トップの絵文字は『あざます』です。74歳の監査役の方も普通にあざますとか使っています(笑)。慣れたらこっちの方が楽だねと言ってくれました」とのことで、社内メールを禁止し、完全にSlackに寄せたことで利用も拡がった。

 2つ目の理由は「SNS誤爆リスク」だという。当初はSNSのビジネス版を使う案もあったが、ユーザーインターフェイスが似ているものは誤爆のリスクが高いと大石氏は指摘する。「プライベートにあげるつもりがパブリックにあげちゃうというのは、やはり設計のリスクだ。Slackってなにものにも似ていないところがいい」と大石氏は語る。

SNS誤爆リスクを避けるためにSlack

 3つ目の理由はやはりインテグレーションが豊富な点。サーバーワークスでは、「/tel」で電話メモ、「/boxnote」で議事録を残したり、業務のFAQをボットで実装したりしている。「t2.nanoっていくら?」と聞くと、ボットが答えてくれるというものだ。最近ではプロジェクトの採算管理もSlackから行なっており、「今からプロジェクト管理Aを始めます」「今日は帰ります」とつぶやくと、作業時間を集計して原価管理システムのTeam Spiritに登録される。これをBIツールでパイチャート化すると、プロジェクトの採算まで明瞭になるという。

プロジェクトの原価管理もSlackとTeam Spiritとの連携で実現

 「最近はちょっと調子に乗る輩もでてきた」ということで紹介されたのが、IoTデバイスと連携して、男子トイレの空き状況を調べる「/toilet status」のコマンドだ。さらに「/toilet reserve」を使うと、個室予約やモバイルプッシュまで可能。「これぞIoT(Internet of Toilet)ですよね」と大石氏はアピールしたが、まさに実用性と遊び心の両立と言えるだろう。

好調な業績と働きやすさを両立したサーバーワークス

 オフィスや制度、風土、そしてSlackの活用まで含めた働き方への前向きな姿勢が評価され、サーバーワークスは「Great Place To Work」にも2年連続ランクイン。好調な業績と働きやすさを両立しているとアピールする。

 最後、大石氏はまとめとして「Slackの活用は本質的なことに時間を使うための最適解。しかもSlackのインテグレーションはイントラネットの代替になるレベルだと思う。いけてない業務システムを乱立させるより、Slackに束ねた方がよっぽど合理的」と語る。その上で、「若くて優秀な人に選ばれる会社になるためには、Slackのオープンさを積極的に毎日出していくことが、みなさまの会社にとってもポジティブになる」と語り、セッションを終えた。

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