無意識の偏見がビジネスをゆがめる
続いて「Unconcious Bias」というテーマで講演したのは、Googleでダイバシティの日本統括責任者を務める山地由里氏。3人の子供の母親でもある山地氏は、「私の子供が大きくなった頃には、(ダイバシティ責任者という)私の仕事がなくなればいいなと思っている。誰もが意識せずにダイバシティを理解し、実践されていく世界が来て欲しい」と語る。
ダイバシティというと、女性に働きやすい職場環境の構築といった切り口で捉えられることが多いが、山地氏が考えるダイバシティは、内的、外的、組織的、文化的など幅広い要素がある。実際、性別や人種、外見、身体能力など目に見える偏見は10%に過ぎず、考え方や宗教、学歴、婚姻関係、出身地、即歴、社会的経済環境、性的試行など目に見えないものが90%に上るという。また、人間が1秒間に受け取る1000万ビット以上の情報量の中で、意識的に処理できる情報量は40ビット程度に過ぎない。つまり、99.999996%は無意識であり、そもそも偏見自体を認識できないという事情もある。
こうした無意識の偏見は、脳の認識プロセスにおける関連づけという作業で自然に醸成されてしまうもの。関連づけがマイナスに機能すると、無意識のうちに偏見を持ってしまい、ビジネスでも採用面接やチームミーティング、プロジェクトの担当・役割決め、製品のアイデア出しなどで影響を及ぼしやすいという。
たとえば、同僚がプリンターの前で困っていた時、同じように助けても男性は女性よりも評価が上がるという調査がある。一方で、助けないと男性よりも女性の方が評価が下がるという。「女性は人を助けて当たり前だという関連づけがある。だから、助けないと男性よりも評価が下がる。一方、男性はそういう関連づけがないので、ボーナスの評価が行なわれる」と山地氏は指摘する。
これを解消するには、「成功の基準を事前に設け、同じ基準にすべての人を当てはめる」「自身の第一印象を疑い、他人のフィードバックをもらう」「意思決定のスピードを落としてみる」「意思決定を共同で行ない、お互い指摘しあう」などの方法があるという。その後、山地氏は「無意識の偏見がこれまであったかどうか」「こうした偏見を減らすためにどうしたらよいか」というテーマに基づいたワークショップを実施。「現状」「「とるべきアクション」「得られる効果」の3つについて参加者同士で話し合った。
山地氏が「ダイバシティバブル」と指摘するくらい日本でも「ダイバシティ」の議論は高まっているが、具体的なアクションに結びつく企業はまだまだ多くない。しかし、Googleのようにイノベーションを武器にグローバルで活躍する企業が率先して議論を発することで、従来よりも前向きな施策に結びつくことを期待したいところだ。