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TOKYO AUDIO STYLE 最終回

「いい音」を探る楽曲制作プロジェクト

東京女子流はハイレゾ好き? 「加速度」音源を聴き比べ!

2015年05月28日 11時00分更新

文● 構成●荒井敏郎
写真●Yusuke Hommma(カラリスト:芳田賢明)

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メーカーと音楽制作者の間にある「音質」に関する価値観の違い

 最後に、連載初期から携わっていたラックスマンの小島氏に、今回のプロジェクトの総括をしていただいた。

小島 今回ラックスマンは、本格的なオーディオ機器で音楽を楽しむために、現在のJ-Popを中心にしたヒット曲の音質に対する問題提起をさせていただきながら、その制作過程を順に追っていくという、貴重な体験をさせていただきました。

 一般論として、アイドル・ミュージックのジャンルでは、音質を指向して制作された音源が少ないというイメージがありました。そこで今回は、アイドルというジャンル限定で、ある程度制作に関与させてもらいながら、最終的にその音源をリリースするところまで行ければという目論見でプロジェクトをスタートしました。

 まず、企画段階から一緒にお話をしていた作曲家の山田 巧さんと、その次にASCII.jpから協力メンバーとして紹介されたのが、プロデューサーである与田 春生さんとアレンジの松井 寛さんをはじめとするチーム「東京女子流」の面々でした。多くの方がご存知のように東京女子流のサウンドは非常に緻密に作り込まれていて、最初から十二分にオーディオ向きの音源でした。

 しかしながら、制作の立場である与田さんと再生の立場であるラックスマンの間には、音質に対して異なる価値観があったように思います。ある意味何が正しいかも含めて音楽を「ゼロ構築」する制作側と、できあがった完成物を既定の基準に照らして正しく復元しようとする再生側の、根源的な違いが両者の距離だったように思います。

 実際にプロジェクトが進むにつれ、個人的にもオーディオに造詣のある与田さんとは、話をするほどに価値観を擦り合わせていけた気がします。今回の課題であった音質の改善については、素材、録音、ミックス、マスタリング、といった複数の作業段階の中で、特に昨今問題視されている、最終的なミックス時に加えられるコンプレッサーによる音圧処理と、マスタリングスタジオでの音圧処理を、スタジオに持ち込んだラックスマンのモニター環境で音を聴きながら、最終的にはほぼバイパスさせる形で仕上げることを目指しました。

 東京女子流のように最初からこだわって作られている楽曲であっても、CDメディアとしてほかのJ-Popパッケージと並べてビジネスを成立させるためには、商品としてのお化粧が必要であり、通常の場合、それが音圧処理として施されていたのだと思います。

 今回そのような処理を大胆に排除して完成形とする過程では、やはり制作環境全体とボーカルトラックを96kHz/24bitで用意していただけたのが大きかったと思います。特にダイナミックレンジ方向で余裕を大きく取りながら仕上げてもらったことが、リリースされたハイレゾ版の音質に大きく影響しました。

 理想を言えば、よりハイレゾの空間を活かした素材録りやミックスなどに踏み込むことができたら、今回とは異なる完成物となったかもしれません。ただそれが「東京女子流」というアーティストにふさわしい「音」となるかはまた別の問題であり、当たり前のことながら、「音質」と「音楽性」はまったく別次元のものである、と再確認できたのもいい経験でした。

 結果として、ハイレゾ配信版は東京女子流のファンの方だけでなく、オーディオ的な興味からこのプロジェクトを見続けてくれた方にも、好評をいただけたようで安心しました。再生環境によっては、CD版との違いがあまり大きく出ない場合もあり、それが、違いの十分に出るはずのオーディオ環境への興味となってもらえれば、まさにそれが今回のプロジェクトのひとつの成果であったとも思います。

 今回のハイレゾ版は、CD版と比べると平均音量がだいぶ小さく収録されています。ただし、最小音量と最大音量の差はCDの数倍になっていますので、ボーカルのレベルがちょうどよくなる程度まで音量をあげると、広いダイナミックレンジを感じながら聴いていただけると思います。またヘッドフォンとスピーカーではスピーカーのほうが再生可能なダイナミックレンジは圧倒的に広いですから、ぜひ環境が許せば、スピーカーによる迫力のクオリティーを楽しんでいただければと思います。

東京女子流

 2010年1月1日結成。エイベックスから久々に誕生した、小西彩乃・山邊未夢・新井ひとみ・中江友梨・庄司芽生からなる5人組ガールズ・ダンス&ボーカルグループだ。楽曲制作では、ROCKミュージシャンでLUNA SEAのベーシストでもあるJ提供曲や、BaseBallBearの小出祐介作詞作曲、ボカロPの八王子Pやきくおなど幅を広げることに挑戦するなどのほか、メンバーソロでfeatボーカルとして参加しているMaltine Girls Waveなど、幅広く音楽活動をしている。

メンバー紹介

中江友梨(なかえゆり)
東京女子流のメンバーでステージ・リーダー。'97年6月28日生まれ、大阪府出身。サイプレス上野とのヒップホップユニット「サ上と中江」を結成し、ミニアルバム「ビールとジュース」をavex traxよりリリース予定

ニューシングル「Stay with me」発売中!
1stベストアルバム「キラリ☆」発売中!

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