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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第289回

スーパーコンピューターの系譜 IBMが作ったもう1つのASCI Blue

2015年02月02日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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POWER2/P2SCとPowerPC 604の
2つのベースが存在

 POWER2/P2SCベースのRS/6000とPowerPC 604ベースのRS/6000の最大の違いは、プロセッサー数である。POWER2/P2SCベースは前述の通りマルチプロセッサーに未対応なので、マシン1台あたり1CPUという構成である。

 ところがPowerPCは当初からマルチプロセッサーに対応しており、RS/6000の中にも複数プロセッサーを搭載したモデルがラインナップされている。

 PowerPC 604世代の場合、タワー型のType 7012 Model G40は最大4プロセッサー、ラックマウント型のType 7015 Model R4xは最大8プロセッサーが利用可能になっている。この結果、プロセッサー単体の性能は以下のようになる。

プロセッサ単体の性能(出典:SPEC CPU95 Result)
System Processor SPECint_base95 SPECfp_base95
RS/6000 591 POWER2(77MHz) 3.19 11.2
RS/6000 595 P2SC(135MHz) 5.88 15.4
RS/6000 C20 PowerPC 604(120MHz) 3.47 3.50

 整数演算性能はともかく浮動小数点演算性能ではPowerPCは大きく見劣りするが、プロセッサ数が増えればその分上乗せも大きくなる。

 また、当初のPowerPC 604は133MHzあたりまでが普及帯だった(*)が、1996年にはプロセスを0.50μmから0.35μmに微細化するとともに、命令/データでキャッシュを分割したPowerPC 604eを投入、動作周波数は233MHzに達した。
*:スペック上は180MHzまで用意されていたが、ほとんど出荷されなかった。

 さらにIBMはこの後、0.20μmプロセスに微細化し、最大400MHz駆動となるPowerPC 604evをリリースし、どちらもRS/6000に採用される。こちらでは急速に性能を上げており、例えば1997年に投入されたRS/6000 43P-140(PowerPC 640ev 332MHz)の場合、1PでのSPECint_base95で12.9、SPECfp_base95で5.99まで改善している。

 PowerPC 604ベースのSP2では、このPowerPC 604ev 332MHzを2/4P構成とした製品が用意されており、トータル性能ではPOWER2やP2SCを上回ることになった。

アップグレードで性能が飛躍的に向上

 これで、ようやく連載288回で話をしたASCI Blueの提案依頼書のタイミングになった。この時点ではまだP2SCは完成しておらず、またPowerPC 604ベースのSP2は存在しない。なので実在するシステムはPOWER2ベースのSP2しかないのだが、IBMはP2SPやPowerPC 604の完成を前提に、最終的にはPowerPC 640evベースのSP2を提案した。

 この提案に沿って、まず1996年9月20日には、最初のシステム(ID:Initial Delivery)がローレンス・リバモア国立研究所に納入されている。これは契約締結からからわずか6週間のことで、その2週間後には稼動を開始している。

Blue PacificのIDシステムの様子。エネルギー省のRandy Christensen氏による論文“Computer SImulations in Support of National Security”より抜粋

 もっとも時期を考えると、これは112MHz駆動のPowerPC 604ベースのHigh 1というモデルと思われ、しかも1ノードあたり1プロセッサーの構成だった。

 IDの構成は512ノードでピーク性能は136GFLOPS、メモリーは67GB、ストレージは2.5TBで、キャビネットは340とされており、340キャビネットの半分弱がプロセッサー、残りがストレージとネットワークと思われる。

 ちなみにこのIDは非公式にはASCI Blue Snowと呼ばれていたらしい。このシステムは1998年3月にアップグレードが行なわれ、112MHz駆動のPowerPC 604×1のカードが、334MHz駆動のPowerPC 604ev×4のカードに交換されている。

 ただこの時には単にカード交換だけではなく、ノードの追加とおそらくネットワークの追加もなされていると思われる。

 1998年10月にASCI Blue Pacific CTR(Combined Technology Refresh)として構成されたシステムは、1344個(336ノード)のPowerPC 604ev 332MHzから構成され、LINPACKで468.2GFLOPSを叩き出して1998年11月のTOP500では8位に入っている。

 CTRとは別に、最終的にASCI Blueで求められた3TFLOPSマシンは、1999年に稼動を始めたASCI Blue Pacific SST(Sustained Stewardship TeraOp、非公式名称はASCI Blue Sky)で、こちらは5856個(1464ノード)のPowerPC 604ev 332MHzから構成される。

Blue Pacific SSTの設置イメージ。出典は先の画像と同じ論文

稼働中のBlue Pacific SSTの様子。出典はDelivering Insight:The History of the ASCI

 この膨大な数のノードは、TB3MXと呼ばれる双方向の150MB/秒のリンクで接続されており、これは続くASCI Whiteでも継承されることになる。

 ちなみにASCI Blue Pacific SSTの設置面積は1万2000平方フィート、消費電力は5.65MWという壮絶なものである。理論ピーク性能は3.86TFLOPSだが、LINPACKでは2.14TFLOPSを計測。1999年11月~2000年6月のTOP500では2位の座を維持した。

 このASCI Blue Pacific SSTを(ASCI Redの時と同じように)10TFLOPSにアップグレードするという話も出ていたが、それは最終的にASCI Whiteとして実現することになった。その理由は比較的明確である。1999年11月におけるTOP500の結果を抜き出してみよう。

1999年11月におけるTOP500の結果
CPU数 LINPACK
(GFLOPS)
理論値
(GFLOPS)
効率
(%)
ASCI Red 9632 2379 3207 74.2
ASCI Blue Pacific SST 5808 2144 3856.5 55.6
ASCI Blue Mountain 6144 1608 3072 52.3

 ご覧のとおり、MPP(Massively Parallel Processing:超並列コンピューター)のASCI Redの効率の良さが明白だが、それを抜きにすると、同じSMP(Symmetric Multiprocessing:対称型マルチプロセッシング)+クラスターであればASCI Blue MountainよりもBlue Pacific SSTの方が少ないコア数で実効性能も高い。

 おまけに1999年といえば、もう次のPOWER3チップがリリースされ、POWER4チップの設計も始まっていたから、プロセッサーコアをこれに代えるだけで性能が向上することが期待できた。

 他方ASCI Blue Mountainの方は、1998年にMIPS部門を再度切り離しており、プロセッサー単体のさらなる向上があまり期待できなかったため、これをアップグレードする案は望み薄だった。

 したがって、ASCI Blue PacificはそのままスムーズにASCI Whiteに移行した反面、ASCI Blue MountainはASCI Qに期待をかけることになる。

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