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Wi-Fiインフラにビーコンを追加、スタジアムや店舗、企業内でも活躍

顧客と無線で“つながる” アルバが提案する位置情報サービス

2014年12月25日 06時00分更新

文● 高橋睦美

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ピンポイントのマーケティング手段をソリューションとして提供

 アルバのチーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)、ベン・ギブソン氏によると、Aruba Mobile Engagementの活用範囲はそれだけにとどまらない。

Aruba Beacons with Bluetooth Low Energy(BLE)の説明。 iBeacon APIとの互換性も

 最も分かりやすい例は小売店舗での活用例だ。アメリカのある家具販売ストアでは、店内で商品の置き場所を案内するのに活用しているという。アメリカサイズの巨大な店舗では、商品がどこに置いてあるのかが分かりにくい。案内板やスタッフだけに頼るのではなく、モバイルアプリが手助けすることで、顧客とのつながり(エンゲージメント)の強化に役立てているという。

 ギブソン氏はさらに、「CRMやレコメンデーションエンジンと連動させることで、今来店している顧客が新規客かリピーターかを把握し、リピーターならば過去にどんなものを購入したかという履歴に基づいて、オススメ商品を提案することもできる。私が棚の近くを通ったときに『ワンサイズ大きな服が出ていますよ』と知らせることだって可能だ(笑)」と述べた。これは、クーポン券やプッシュ型広告にも活用できる手段だろう。

 Aruba Mobile Engagementはこのように、店舗側、企業側に新たなデジタルマーケティングの機会を提供する。加えて、収集した屋内位置情報に分析を加えることで、店舗レイアウトやスタッフ配置の最適化も可能になるとした。例えば、来店者が最も多く通る場所に売れ筋商品を置いて売り上げ向上につなげたり、レジの混雑状況に応じてリアルタイムにバックオフィスから応援スタッフを呼び寄せる仕組みを作ることも可能という。

 アルバではこうした用途のために、位置情報分析エンジン「Analytics & Location Engine(ALE)」を提供。さらに、サードパーティ製のビジネスアナリティクスツールを組み合わせることで、顧客の行動と位置情報、時系列に相関分析を加え、ビジネスに役立つ情報を引き出すことができるという。

ショッピングモールの中の人の流れを測定し、分析することも可能だ

 アルバの創業者でCTOを務めるケーティ・メルコート氏は、位置情報テクノロジーを組み合わせることによって、「Wi-Fiは、単なるネットワーク技術にとどまらず、ビジネスイネーブラーになる」と述べた。

情報セキュリティなど、企業内での活用アイデアも

 なお、ここまで紹介してきた活用例はB2C分野のものだが、ユーザーの居場所を「コンテキスト」の1つとしてとらえれば、企業ネットワークで活用することも可能だ。

 カンファレンスで紹介された例は、ビーコンではなく既存のWi-Fiをベースにしたものだが、例えば政府機関など厳密なセキュリティが求められる施設では、ユーザーやデバイスに加え、位置情報も加味した認証を行うことでダイナミックなアクセス制限を行ったり、フリーアドレスを採用しているオフィスでスペースの最適化を図るといった具合である。Splunkのログ管理ソリューションと連携し、アプリケーションの利用状況や認証結果に基づいてアクセス制御を実現する仕組みもベータ版として提供しているという。

企業ネットワーク内で位置情報を活用することで、より厳密なアクセス制限を実現できる

 このように多彩な応用が考えられるAruba Mobile Engagementだが、1つ、見落としてはいけない重要な課題がある。ユーザーのプライバシーをどのように尊重するかだ。ユーザーによっては「余計なお世話」とも受け取られかねない。

 「プライバシーは重要な問題。われわれは基本的にオプトイン方式を採用している」(メルコート氏)。「二重、三重のオプトインを経ない限り、情報は収集しない。まず、ユーザーにアプリケーションをダウンロードしてもらう必要がある。そしてそのアプリに、位置情報サービスの利用を許可してもらう必要がある。最後にMobile Engagementへのログインを経ない限り、情報は収集しない。また収集したデータには匿名化処理を加える。こうした仕組みによって、健全なバランスを取ろうと試みている」(ギブソン氏)。

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