この連載が本になりました!
「ランキングが上がらない」「開発費が回収できない」アプリを作って終わりにしない現場のノウハウを凝縮。 「DL数が伸びない」「DAUが増えない」「課金されない」スマホアプリビジネスの悩みを、ASO、広告運用、内部改善など、豊富な事例をもとに解説。iOS/Androidマーケの全体像がつかめる国内唯一のアプリマーケ実践本です。連載時から大幅に加筆修正し、最新情報を盛り込みました!
事例に学ぶスマホアプリマーケティングの鉄則87
価格:2,700円 (本体2,500円) /形態:B5変 (208ページ)
ISBN:978-4-04-866451-6
スマートフォンアプリのマーケティングノウハウを紹介する本連載。前回の記事では、アプリを「広める」ための施策として、広報活動について解説しました。
今回から5回にわたり、もう1つの手法である「広告宣伝」について紹介します。アプリマーケティングにおける広告宣伝とは、検索連動型広告やアドネットワークなどからアプリストアへ誘導し、アプリのダウンロードを促す施策のことです。さまざま手法がありますので、第10回では代表的なアプリ広告の手法と、広告を出す前に知っておくべき専門用語を紹介します。
広告宣伝は、アプリのリリース時、通常運用時、アプリアップデート時のどのタイミングでも実施できます。プロモーションしたいアプリによって効果的な手法やタイミングは異なりますので、実際に出稿してPDCAを回しながら、費用対効果の高い手法を選定しましょう。
代表的な広告用語
アプリ広告の世界ではさまざまな専門用語が飛び交います。最初に、アプリ広告を出す前に知っておくべき用語をまとめて紹介します。Webマーケティングで使われる用語もありますが、意味が違う場合もありますので、確認しましょう。
用語 ※()内は略語 | 解説 |
---|---|
インプレッション数(imps) | 広告の掲載回数。ユーザーがサイトやアプリに訪問した際に、広告が1回表示されることを1インプレッションとする。 |
タップ数 | 掲載された広告をユーザーがタップした回数。 |
タップ率(TTR=Tap Through Rate) | 広告の掲載回数に対するタップ数の割合。計算式は、タップ数÷インプレッション数×100。単位はパーセント。TTRが高いほど、ユーザーにとって興味のある広告であり、効率が高い広告と言える。 |
コンバージョン | 広告などの目標や、目標に到達すること。アプリではアプリのインストール完了数をコンバージョンとすることが多い。 |
コンバージョン数(CV=ConVersion) | 目標に到達した回数。 |
コンバージョン率(CVR=ConVersion Rate ) | 目標に到達した割合。計算式は、コンバージョン数÷タップ数×100。単位はパーセント。CVRが高いほど、広告やコンバージョンまでの導線が優れていると言える。 |
クリック単価(CPC=Cost Per Click) | 1タップあたりの料金。計算式は、クリック(タップ)数÷広告費用 単位は円。CPCが低いほど効率が高い広告と言える。 |
インストール単価(CPI=Cost Per Install) | 1アプリインストールあたりの費用。計算式は、広告費用÷インストール数。単位は円。WebではCPAに相当し、CPIが低いほど効率の高い広告と言える。 |
インプレッション単価(CPM=Cost Per Mille) | 1000回表示あたりの広告費用。計算式は、広告費用÷インプレッション数×1000. 単位は円。CPMが低いほど効率の高い広告と言える。 |
例えば、10万円の広告予算を使い、100万回広告が表示され、5万回タップされ、1000回ダウンロードされた場合、各指標は以下のように計算します。
TTR=50,000タップ÷1,000,000imps×100=5%
CVR=1,000DL÷50,000タップ×100=2%
CPC=10万円÷50,000タップ=2円
CPI=10万円÷1,000DL=100円
CPM=10万円÷1,000,000imps×1,000=100円
広告枠や媒体、広告画像やテキストなどの広告のクリエイティブや出稿時期によって、実際の効果は異なります。広告を出稿するときは、安く広告を出稿したいならCPMを下げる、安くユーザーを獲得したいならCPIを下げるなど、期待する効果を決めておきましょう。
主なアプリ広告の一覧
アプリマーケティングで実施する主要な広告宣伝手法を紹介します。具体的な出稿方法や事例は今後の連載で詳しく説明しますので、まずは大まかな特徴を理解しましょう。
リワード広告
アプリやWebなどの広告媒体でユーザーが広告をタップし、リンク先でアプリのインストールや会員登録などのコンバージョンに達すると、広告媒体に報酬が支払われる仕組みです。広告媒体がアプリをダウンロードしたユーザーに、「インセンティブ」(媒体内で使えるポイント等)を還元します。
ポイント欲しさにアプリをダウンロードするユーザーによって、瞬間的にダウンロード数を伸ばし、ランキングの上位表示を狙う手法(いわゆるブースト)に使われます。成功報酬単価が高いほどユーザーの目につく場所に掲載されることが多く、出稿のタイミングや成功報酬単価などを調整して効率を高めます。
ポイントなどのインセンティブをもらう目的で大量のユーザーがアプリのインストールや会員登録をするため、ブースト効果を期待でき、ランキング経由での新規ユーザーの獲得が狙える。一方で、ロイヤルユーザーの獲得は見込めません。。
※この手法はiOSではデベロッパガイド(3.10)で禁止され、アプリストアからアプリが突然削除されたり、デベロッパアカウントを抹消されたりするケースが報告されている。
リスト型広告(Wall広告)
リワード広告に似ているが、ユーザーには報酬を与えず、広告媒体にのみ成功報酬を支払う広告。ユーザーは純粋に広告を見て気になればアプリをインストールしたり会員登録したりする。ブースト効果は期待できないが、一定の新規ユーザーの獲得は見込める。
更新履歴:リワード広告に関する解説を一部修正、リスト型広告の解説を追加しました。(2015年2月20日)
記事広告
レビューサイトやニュースサイトなどの媒体にアプリの紹介記事を有料で掲載し、ダウンロード数を稼ぐ広告手法です。記事を読んで納得した上でユーザーがダウンロードするので、継続率が比較的高い、良質なユーザーを獲得できます。ほとんどのサイトがCPI型の料金体系を採っており、ダウンロード数とダウンロード単価をかけ合わせた広告費を媒体に支払います。
アドネットワーク広告
複数の媒体を集めて形成された「アドネットワーク」に対して広告を配信する手法です。多種多様な媒体に一斉に広告を配信できるため、相当量のインプレッションが見込めます。
アドネットワーク広告は、インプレッション回数に応じて課金が発生する場合と、広告のタップ回数に応じて課金が発生する場合があります。アプリのダウンロードやインストールを増やすためには、TTRを高め、CPIをいかに低く抑えるかがポイントです。広告クリエイティブ(テキスト文言やバナー等)のA/Bテストなどを実施し、クリエイティブの質を高めていきます。
アプリ広告を扱っている主なアドネットワークを3つ紹介します。
- Google AdWords:グーグルが提供するアドネットワークサービス。連携しているアプリ、Webサイト、検索サービスの結果ページ、YouTube上の動画広告等に配信可能。広告費用は設定した上限クリック単価もしくはインプレッション単価とその回数により決まる。iOS向けのアプリ、Android向けのアプリ両方対応している。
- iAd:アップルが提供するアドネットワークサービス。iOS向けのアプリに対応している。タップ課金方式。iAd Producerを利用することで、簡単にクリエイティブを作成できる。
- Yahoo!ディスプレイアドネットワーク(YDN):ヤフーが提供するアドネットワークで、タップ課金広告サービス。膨大なトラフィックを持つYahoo!に加え、提携するアプリやWebサイトに掲載される。
以下のように、1つのページに複数のアドネットワーク広告が表示される場合もあります。
アドネットワーク広告は、どの媒体に広告が掲載されているか把握できるものもありますますので、実際に表示されているサイトを確認し、効果の高いクリエイティブを作成しましょう。
Facebookモバイルアプリインストール広告
Facebookアプリ内のタイムライン上やFacebookのWebページ上に、アプリの広告を配信する手法です。Facebookが持つユーザーの趣味趣向データを活用できるので、年代・性別・地域に加え、使用端末や言語、好きな映画や音楽・本などのセグメントで絞り込むことで、効率よくダウンロードを促せます。
Facebookモバイルアプリインストール広告は、インプレッション数や広告のタップ数によって広告料金が決まります。Facebookアカウントでのログインに対応したアプリなど、Facebookとの親和性の高ければ特に有効な手法です。
店舗(リアル)アフィリエイト
携帯電話ショップや飲食店等の店舗に来店したユーザーに対し、店舗スタッフがアプリの内容を説明し、ダウンロード・会員登録への誘導する手法です。成果数に応じて店舗に広告出稿費を支払います。
アプリの内容を説明し、ユーザーの許諾を得た上でダウンロードするので、残存率や継続率が高いと言われます。ただし、「月額○○円で複数のアプリがまとめて使える」といった「パック」の場合は、実際にはユーザーにほとんど使われないこともあります。CPIが高めに設定されることが多いため、月額課金のアプリの場合は継続率を調べ、費用対効果を判断します。
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エキサイトでは、アプリのリリース時点ではユーザーの行動を分析したり、アプリの不具合を防いだりすることに専念し、安定性が確保された時点で、数十万円から広告をテスト出稿しています。テスト出稿で効果の高い手法を発見できたら、その手法に予算を多めに配分し、クリエイティブのA/Bテストを繰り返して効果を高めています。
次回は、Facebookモバイルアプリインストール広告について、エキサイトの事例を交えて紹介します。