この連載が本になりました!
「ランキングが上がらない」「開発費が回収できない」アプリを作って終わりにしない現場のノウハウを凝縮。 「DL数が伸びない」「DAUが増えない」「課金されない」スマホアプリビジネスの悩みを、ASO、広告運用、内部改善など、豊富な事例をもとに解説。iOS/Androidマーケの全体像がつかめる国内唯一のアプリマーケ実践本です。連載時から大幅に加筆修正し、最新情報を盛り込みました!
事例に学ぶスマホアプリマーケティングの鉄則87
価格:2,700円 (本体2,500円) /形態:B5変 (208ページ)
ISBN:978-4-04-866451-6


スマートフォンアプリのマーケティングノウハウを紹介する本連載。第10〜15回では、リスティング広告やリワード広告などの広告宣伝活動でアプリを広める方法を解説しました。
第16回は、他社と協業し、双方のアプリのインストールを促進する「アプリ間相互送客」の手法を紹介します。
他アプリとの協業でアプリを広める「相互送客」とは
アプリ間相互送客とは、自社アプリと他のアプリの間でユーザーを送り合い、インストールを促進する手法のことです。インストールバーターやクリックバーターなどの条件のもと、他のアプリの広告を自社アプリに掲載する代わりに、相手のアプリに自社アプリの広告を掲載してもらいます。
自社アプリ同士の相互送客
自社でリリースしている複数のアプリ間で相互送客を実施する場合、なんらかのポイントがマッチするアプリの組み合わせで最適な効果が得られます。たとえば、
- ビジネスツールとしてマッチする(ニュースアプリと翻訳アプリ)
- 属性ターゲットでマッチする(女子トピアプリと寝たまんまヨガアプリ)
- 趣味趣向としてマッチする(レシピアプリと料理投稿アプリ)
といった組み合わせが考えられます。
もちろん、マッチするポイントがないアプリ同士でも、アクティブユーザー数が多ければ一定の効果が見込めます。ただし、露出が多すぎてユーザーに邪魔な広告だと認識されないように、1週間に3回のみ、1日に1回のみといった表示条件をセグメントごとに調整する必要があります。ユーザーがもっとも利用する場面で、一気に露出し、あとは表示しないなど工夫しましょう。
他社アプリとの相互送客
自社アプリの場合と同様、マッチするポイントがあることは重要です。アクティブユーザーの多いタイミングや露出場所事前に検討しながら、手のかからない手法で取り組みましょう。効果を見つつ、クリエイティブや掲載場所を変更しながら進めます。
広告バナーを掲載した結果、ユーザーに邪魔だと思われると、自社だけでなく協業他社アプリのユーザー満足度やブランドイメージを下げることになります。そこで、「ユーザーが一番集まるカテゴリーに24時間固定で表示する」といった条件に限定して掲載します。
相互送客の相手は、自社アプリとの相性がよさそうなアプリに直接問い合わせてみたり、アプリの技術系、マーケティング系のセミナーや勉強会に参加して探したりするといいでしょう。エキサイトでは定期的に外部セミナーに参加し、情報交換しています。
エキサイトで実施した自社アプリ同士の事例
エキサイトで実際に実施した、自社アプリ間の相互送客の例を紹介します。以下のように条件がマッチするアプリ同士での送客効果を狙い、「姉妹アプリ」「エキサイトの自信作」といった表現で「運営者側からの有益な情報」である点を強調しました。
アプリ名 | ⇔ | アプリ名 | マッチするポイント |
---|---|---|---|
女子トピ | ⇔ | カワイイ | 「女子」がターゲット |
翻訳ブラウザ | ⇔ | エキサイトニュース | ビジネスユーザーがターゲット |
また、この取り組みでは単なる送客効果だけでなく、以下のような広告クリエイティブの仕様についても検証しています。
- 画面いっぱいに表示させる広告の効果
- 「<」「>」やスワイプで複数のアプリを紹介したときの効果
- アプリを一覧で見せるように切り替える仕様の効果
- 露出期間:3日間
- 露出頻度:1日に1回表示
相互送客を実施した結果、CTR30%、CVR50%ほどの効果があり、ノンインセンティブCPI型広告に換算すると、40万円相当の広告効果が得られました。
一方、広告クリエイティブの仕様については以下のことがわかりました。
- 画面全体を覆う広告は、ユーザークレームに繋がりやすい
- 「<」「>」やスワイプに気付かないのか使われない
- 一覧表示は、打ち出したいアプリに焦点がいかず、効果が分散する
そこで現在は、送客先を1アプリのみに絞り、時間や日にちをセグメントごとに変えて配信しています。
他社のアプリとの協業での成功事例
アプリの勉強会や業界同士の繋がりで、担当者間で意見交換をしながらアプリコラボ・アプリ間相互送客を実施した事例を2つ紹介します。
マンガでマッチしたアプリでアプリ間コラボを実施
写真やイラストで一言ボケをするアプリ「ボケて」と、モーニングの電子版アプリ「Dモーニング」でアプリ間コラボを実施しました。「ボケて」にDモーニングからコンテンツ提供した漫画イラストでお題を出し、お題の下にボケてからトラフィック提供として「Dモーニング」アプリへの誘導バナーを設置してもらいました。
結果、バナーが数千回クリックされ、アドネットワークに換算すると、数十万円相当の広告効果を生みました。
情報系でマッチしたアプリで相互送客を実施
アプリレビューサイトのアプリ「ミートアイ」と、経済や政治・スポーツ等のニュースアプリ「エキサイトニュース」でアプリ間相互送客を実施しました。
情報系アプリではあるものの、アプリに対するユーザーの要望は異なると判断し、生じたクリック数を消化しあう手法「クリックバーター」を条件としてアプリインストール数を獲得しました。
この例では、双方ともに記事を配信するアプリである特性を活かし、アプリの紹介記事を双方のアプリに掲載しました。
エキサイトニュースユーザーの中でも、特にアプリ情報を好むユーザーがミートアイをダウンロードしたことが分かりました。また、記事を読んで納得したユーザーがダウンロードするため、一般的なアドネットワーク広告よりも定着率が高くなると考えられます。
エキサイトでは、広告効果を一般的なダウンロード単価の150〜200円をベースに、獲得数とかけ合わせて、広告効果を想定広告費用で評価しています。今回の結果は、数万閲覧数、数千クリックされ、広告費用に換算すると、数十万円相当の広告効果が得られました。 マッチするアプリ同士の相互送客は効果的なため、エキサイトではマッチするアプリとの相互送客を広告メニューにすることも検討しています。
相互送客は、お互いのメリットを考えながら、他アプリとの協業を考えましょう。何よりもユーザーのメリットとなることもお忘れなく。
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次回は、広告出稿や施策を打つための原資獲得方法である、マネタイズ手法について紹介していきます。