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レッドオーシャンでも生き残る方法はある=カメリオ

2014年11月06日 07時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)/大江戸スタートアップ

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2014年10月31日(金)、大江戸スタートアップが開催した有料セミナー「勝てるキュレーションメディアの作り方」より講演の一部をお届け。ニュースアプリ運営元はいかにビジネスを成長させ、競合ひしめくレッドオーシャンで生き残っているのか? スタートアップ企業の第一線で活躍するリーダーたちの知恵を聞く。「アプリ事業を失敗させない3つの要点=NewsPicks」に続く、スタートアップセミナー特別企画第2弾。

 ニュースアプリ「カメリオ」が先月、2月のリリースから8カ月で10万ダウンロードを突破した。ニュースアプリは「SmartNews」「Gunosy」「Antenna」「NewsPicks」など競合がひしめくレッドオーシャン。カメリオは徹底したニッチ戦略で生き残りを図っている。

 カメリオ運営元、白ヤギコーポレーションの代表は柴田暁CEO。元物理学博士、ニューヨーク大学研究員という変わった経歴の持ち主だ。セミナー冒頭では「ニュースアプリをやってはいけない」とうそぶき周囲の笑いを誘った。しかし柴田代表の発言は半分本気だ。


パーソナライズニュース系のスタートアップはなぜほとんどが失敗したのか

 柴田代表は、米Q&Aサービス大手クオラに上がった「パーソナライズニュース系のスタートアップはなぜほとんどが失敗したのか?」という記事を引く。

 米大手記事配信プラットホーム、アウトブレイン社のヤロン・ガライCEOが質問に答えて言うには「ニュースはレコメンドにそぐわない」。

 まず、ニュースは昨日と今日で求められるものが変わる「生もの」であり、一般商品と違いレコメンドが難しい。次に、ソーシャルグラフを使って記事をレコメンドしても案外「アタリ」は少ない。そして最後に「それもう見たよ」という記事を見せられると、ユーザーはすぐに飽きてしまう。

 いくつもの理由から、Twitter、Facebookのタイムラインでニュースを眺めるだけで十分という結論になってしまう。「Gunosy」も当初はパーソナライズを売りにしていたが、通常のニュース配信に方向転換した。


「特化型」には「総合型」と別の生き方がある

 やはり個人ではなく大衆に向けたニュースしか勝ち残れる道はないのかというと、そうではない。

 柴田代表はSmartNewsやGunosyのようなマス向けニュースアプリを「総合型」、経済ニュースに特化したNewsPicksやカメリオのようなニュースアプリを「特化型」と区分けし、総合型には総合型、特化型には特化型の生き残り方があると考える。

 カメリオの場合は、個人が気になるキーワードをテーマとして登録することで、関連するニュースだけを配信するサービスで勝負している。柴田代表によれば、追われているテーマの半数が一人にしか追われていない超ロングテールなものになっている。

 結果、個人に配信される記事はとても趣味的で、アプリを利用している著名人にも、知識人・趣味人の利用者が目立つ。

 ジャーナリストの佐々木俊尚さんは同社のインタビューに答え、「ファッション、生活文化系の記事って集約されたポータルサイトが案外ありません。カメリオでマイページにしておくと、そのジャンルの記事が一覧できて『おっ、こんな記事までちゃんと集めてくれるのか』と有用性に感心しました」と話している。

 記事1本あたり10回前後でのシェア回数といったほかでは見つからないような記事が見つけられるように、個人の趣味・趣向が分かりやすく、大手に比べて記事1本を読む滞在時間も長いという特徴がある。


収益化に向けてじわじわとコミュニティーを醸成する

 メディアを趣味に寄せるのは収益面でも有効だ。

 商品のクチコミ源になってくれるような濃い読者がプラットホームに集まっている。広告展開をするときも濃い読者を相手にしたマーケティングが可能になる。

 現在、総合型ニュースアプリ大手はバブルだ。投資家や投資会社から調達した資本を元手に数億円単位でCMを打つなど急成長・急拡大をはかるが、一方で課金や広告による収益化が追いつかない、アプリそのものが平準化してしまい飽きられるなどリスクを懸念する向きはある。

 一方、特化型のカメリオはじわじわと時間をかけてメディアとしての立場を醸成している。収益化にはまだ時間がかかりそうだが、カメのようにゆっくりと、しかし確実に存在感を増している。

 「ニッチをすべて取りに行きたい。自分のマニアックなところをもっと深めていってほしい」(柴田代表)

 ウサギとカメの逸話が真実かどうかは数年以内に判明するだろう。


【お詫びと訂正】カメリオの記事1本あたりでのシェア回数について説明を一部修正致しました。お詫びして訂正いたします。(2014年11月6日)。


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