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アプリ事業を失敗させない3つの要点=NewsPicks

2014年11月05日 16時00分更新

盛田 諒(Ryo Morita)/大江戸スタートアップ

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2014年10月31日(金)、大江戸スタートアップが開催した有料セミナー「勝てるキュレーションメディアの作り方」より講演の一部をお届け。ニュースアプリ運営元はいかにビジネスを成長させ、競合ひしめくレッドオーシャンで生き残っているのか? スタートアップ企業の第一線で活躍するリーダーたちの知恵を聞く。

 ユーザベースのニュース配信アプリ「NewsPicks」(ニューズピックス)開発チームの杉浦正明チーフ。「利用者が伸びない」「要望が多すぎて混乱する」「やる気の倦怠期が訪れる」などの悩みを1つずつ解決し、およそ一年間で21万ダウンロードまでじわじわ伸ばした。

 NewsPicksはオンラインメディア60誌の経済ニュース、著名人のコメント、また独自取材のニュースが読めるアプリ。利用者は30代の男性が大半で、若い会社を中心に「若くても意志決定にあたれる利用者層が使っている」(杉浦チーフ)点も特徴的だ。


頭を使って自分たちの商品を理解すること

 NewsPicksが抱える悩みと解決策は、成長の段階ごとに3つあった。

 まずはサービスの設計段階だ。最初の課題は、どうやってアプリの芽を出させるか。ほとんどのアプリがまったくダウンロードされず失敗に終わってしまう中、なんとかNewsPicksを成長軌道に乗せなければならない。

 「サービスを立ち上げて何が起きるかというと、何も起きない。ユーザーがいない、誰も集まってこないのが最初に直面した悩みだった」

 とりあえず広告を出してはみたものの、スマートフォン広告そのものがゲームアプリに最適化されているためか、ビジネス系アプリの費用対効果はとても悪かった。

 サービスを伸ばすカイゼン攻略法「グロースハック」にも手をつけた。ウェブに転がっている「グロースハック事例何選」といった記事を参考にいくつか試してはみたが、結果はやはり失敗だった。

 単にお金をかけてもダメ。他社のマネでもやっぱりダメ。自分たちのサービスの本質を理解して、しっかり伸ばすための考え方を工夫するべきだ。

 杉浦チーフはまず、目標がどれだけ達成されているかを評価するKPI(重要業績評価指標)を、「AARRR」の5点から細かく分類した。

 具体的には、ユーザーの増やし方(Acquisition)、ユーザー体験を向上させる方法(Activation)、リピート率の増やし方(Retention)、クチコミ効果の出し方(Referral)、そして最後に収益化する方法(Revenue)の5点だ。

 5点のうちどこが弱いかを数字で把握。「ファンネル分析」という手法で、最も改善による効果が大きいポイントを探し、人材とお金(資源)を効率的に集中させることで、利用者は順調に伸びていった。


要望を出してきたお客さんの立場で商品に向き合うこと

 2番目の悩みは新機能の追加だ。

 利用者が10万人を超えてくると、利用者からの要望が次々と舞い込んでくる。どの機能を追加すると最も効果が大きいかを考えなければならない。

 「ユーザーが欲しいという機能をつけても、わりと使われないことが多い。社内の偉い人が欲しいと言って作りはじめても、誰も使わなかったり……」

 大事にしたのはユーザーファーストだ。ただ声が多いから、声が大きいからと実装するのではなく、何が必要なのかをユーザー目線で考える。

 たとえば「一部のコメントを見えなくする『ミュート機能』が欲しい」という要望があったとすると、本当にユーザーに必要なものは「自分にとって価値のないコメントを見える場所に表示しない」機能になる。

 自分が体験した気づき、問題提起をもとに新機能のプロトタイプを作り、実験をして、正式に導入するかどうかを決めるのが大事だと杉浦チーフ。

 「表面的なモノではなくユーザーの気持ちになって作れば、使われないことも減るのでは」


倦怠期にはビジョンを具体的に持つこと

 最後の悩みはやる気の維持。事業を始めて数ヵ月が経ち、ある程度まで規模が成長してくると、モチベーションに倦怠期が訪れる。

 「開発メンバーも飽きたように見えはじめ、『これがやりたかったんだっけ』ということになってくる」(杉浦チーフ)

 規模が大きくなれば事業への批判も増える。事業を成長させるために機能追加や方向転換を繰り返すうち、初めに考えていた事業とは違うイメージになっていく。そんな中、やる気を維持する要はビジョンだという。

 「NewsPicksの場合なら世界一の経済メディアを作ること。世界一の経済メディアを作りたいと思っている人が集まり、情熱を燃やしている。いろいろ言われたとしても、そこを目指しているから乗り越えられる」

 広告目当てにページをたくさん分けて読みづらくするなど旧来型のニュースサイトが抱えた問題を解決し、世界中の読者に愛されるメディアになる。そうした具体的なイメージを共有すれば、モチベーションの低下は乗り越えやすくなる。

 現在、競合のニュースサイトは「有料課金がうまくいかない」「広告がジャマで単価も低い」という課題を抱えているが、NewsPicksは月額1500円の有料課金を始め、利用者を徐々に伸ばしている。また広告出稿単価を上げる「ブランド広告」の展開にも挑戦し、IBM、サイボウズ、リクルートを顧客に抱える。

 「事業を伸ばすのは最終的には執着心。世界一の経済メディアへの執着心を持ち、壁があったら乗り越える。それがあればサービスとしては伸びていくのでは」(杉浦チーフ)

 「自分たちの商品を理解する」「利用者目線で商品に向き合う」「ビジョンを具体化する」。いずれも単純に聞こえるが、見逃せば失敗の落とし穴が待っている。成功に近道はない、ただ研鑽あるのみだ。


(次回「レッドオーシャンでも生き残る方法はある=カメリオ」お楽しみに)


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