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キュレーション戦国時代、アプリ軍師の策を知る=NewsPicks、Gunosy、カメリオ、SmartSearch

2014年12月08日 11時30分更新

盛田 諒(Ryo Morita)/大江戸スタートアップ

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2014年10月31日(金)、大江戸スタートアップが開催した有料セミナー「勝てるキュレーションメディアの作り方」より講演の一部をお届け。スマートフォンアプリを開発するグノシー「Gunosy」、ユーザベース「NewsPicks」、白ヤギコーポレーション「カメリオ」、ヤフー「SmartSearch」。ニュース配信・キュレーションの最先端を行く4社の担当者が、事業の現状と将来についてざっくばらんに語り合う。「アプリ事業を失敗させない3つの要点=NewsPicks」「レッドオーシャンでも生き残る方法はある=カメリオ」に続く、スタートアップセミナー特別企画第3弾。

大江戸スタートアップ・セミナー 次回開催は12月19日(金)
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 「(利用者数)50万人くらいまでは特に広告打たなくても勝手に伸びてくんです」

 Gunosy取締役の竹谷祐哉氏がそう話すと、会場に驚きが広がった。開始当初は人工知能によるレコメンド技術を売りに展開していたが、「50万を超えてからはパタリと伸びなくなった」(竹谷氏)。現状のペースを維持するか、加速するか。将来像を天秤にかけ、Gunosyはマス向けに方向を転換し、プロモーションを強化した。

 モバイル広告に数千万円を注ぎ込んだことで利用者はたちまち倍増した。だが100万人を超えてくると、1日に500~600人が増えても、KPI(重要業績評価指標)で見ると成長は停滞しているように見えてきた。「これは『事件』だと思った」と竹谷氏。成長を続けるため、さらなるプロモーションの必要に迫られた。

 Gunosyはさらにプロモーションを拡大。ミネラルウォーター「い・ろ・は・す」デザインを手がけたカナリア徳田祐司氏にアイコン制作を依頼し、十億円規模でテレビ広告を打った。プロモーション効果で700万ダウンロードを超えたが、同社では来年までに2000万ダウンロードと約3倍の目標を掲げている。

 「広告が多すぎるとも言われますが、あれくらい(広告を)入れないと、逆に(ビジネスとして)成り立たないというのも事実だと感じています」(竹谷氏)


カメリオは「チャネルによる定着率の変化が大きい」

 ニュースをもとにコミュニティーを作るサービスにおいて、ダウンロード数、利用者層の拡大に加えて、課題になるのは利用者層の新陳代謝だ。

 経済ニュース配信「NewsPicks」開発担当の杉浦正明チーフによれば、同サービスの利用者はヘビー・ライトの2つにはっきり分かれており、「ヘビーユーザーは1日に1時間、2時間も」(杉浦チーフ)使っている状態だ。

 昔からいるヘビーユーザーは「コメントの質が悪くなった」、新たに入ったライトユーザーは「内輪ウケが多くて入りづらい」と、それぞれストレスを抱えてしまう。人の手でヘビー・ライトを分けるのではなく「テクノロジーで新陳代謝を促せないかとエンジニアとして考えているところではあります」(杉浦チーフ)。

 一方、「カメリオ」の白ヤギコーポレーション柴田暁代表は「社内ではアプリで何をするかよりどんなユーザーが入ってくるのかをよく議論しています」。最初から使い続ける意思を持った利用者が入ってきているかどうか。カメリオでは、ダウンロードのきっかけとなった導線を分析し、定着率を高める方法を追っている。

 「アプリの『中』を良くすることで、ものすごく定着率が上がることはほとんどないんです。上がることは上がりますが、ゆっくり。一方、ユーザーが入ってくるチャネルによる定着率の変化はものすごく大きい」(柴田代表)


NewsPicksの収支は「まだ真っ赤」

 ニュース配信最大の課題は収益化だ。新聞社のように販売店のネットワークを持っているわけではなく、アプリはアップルやグーグルのストアから基本無料で配信されているため、収入のベースは広告となる。

 杉浦チーフによればNewsPicksの収支は「まだ真っ赤」。基本は同サービスの運営母体であるユーザベースが抱えるメイン事業、企業情報プラットホーム「SPEEDA」が稼いだキャッシュをもとに運用している状態だ。

 とはいえマネタイズは「やっていかないと継続的な事業にはならない」(杉浦チーフ)と考え、メディアそのものにスポンサーを入れるブランド広告を開始。兼ねてからビジネスメディアへの出稿を考えていたというIBMやリクルートなど大手が提供に名を連ねており、収益源の大きな柱になると期待を寄せている。

 一方、先行するGunosyは広告を中心に月間数億円規模を売り上げているという。今後はモバイルポータル事業を展開し、売上規模をニュース以外の領域でも拡大していく方針だ。


ヤフー検索「受け身で待っているだけじゃだめ」

 ニュース配信ベンチャーが爆発的な速度で成長していく一方、検索ポータルの雄ヤフーもスマートフォンに合わせた「検索」のありかたを模索している。

 パソコンではウェブブラウザーを開けばヤフーにつながるという時代もあったが、Androidはグーグル検索、iPhoneもマイクロソフト「Bing」を採用するようになった。

 「受け身で待っているだけじゃだめだと、TwitterやFacebookを検索できる『リアルタイム検索』、検索画面を初音ミクや自分の好きな柄に変える『着せ替え』などをやってきた」(ヤフー 佐野岳人氏)

 ヤフーが今年から新たに展開しているのがスマートフォンアプリ「SmartSearch」。検索行為そのものを楽しむことをコンセプトに、ウインドウショッピングのように検索結果を横断して見られるアプリを開発した。「(検索結果を)行ったり来たりする中で、面白い情報に出会う流れを追及するのがいいんじゃないかと」(佐野氏)


キュレーションはこれからも成長していく

 大手から零細まで参入が相次いで、競争相手がひしめき、ニッチの少ないレッドオーシャンになっているニュースキュレーション。未来の業界はどう変化していくのか。

 NewsPicksの杉浦正明チーフは「良いものがあり、欲している人がいる。それを媒介するのがメディアの本質」ではないかといい、より進化したメディアが実現するのではないかと話す。

 誰がいつどこで記事を読み、どんな感想を抱いたかを把握すれば、理想的な広告が掲載できるはずだ。「それが数年以内に実現されるんじゃないか、というところが未来だと思います」(杉浦チーフ)。

 カメリオの柴田暁代表は、ニュースキュレーションの価値が上がるのと合わせて、モバイルメディアの広告価値がますます上がっていくのではないかと期待をかける。米アウトブレイン社のようにコンテンツのレコメンドをベースとした広告ソリューションにも注目しているという。


検索も必要なのか、キュレーションがあればいいのか

 Gunosyの竹谷祐哉氏はさらに思考を進め、キュレーションが「検索」概念をスキップできる存在になれるのではないかという野心を抱く。

 旅行予約サイトなどサービス事業者からすれば、広告を打つだけで適切な顧客を集めてきてくれるGoogleやYahooのような検索サービスは優秀だ。しかし「なぜそのユーザーが『旅行』で検索したかが分からない」(竹谷氏)という課題がある。事業者と顧客の間に不要な一手間があるというのだ。

 利用者が商品やサービスに関心を抱くきっかけをデータ単位で把握して「Gunosyの中でコンバージョンまでの流れを作ってあげると、利用者からすると不必要なところが減る」(竹谷氏)のではないか、という考えだ。

 一方、SmartSearchの佐野岳人氏はニュースは利用者にとってハードルが高いと考え、「気さくで楽しい、特定の趣味を持つ人たちの中で作られるような空間」(佐野氏)が実現されてもいいのではないかと話す。

 たとえば佐野氏はYouTubeなどで流行している「ゲーム実況」も、キュレーションの一部と考える。「自分が好きなゲームをしゃべりながら見せるのも、ある種キュレーションだと言えるのでは」(佐野氏)というわけだ。

 キュレーションの未来について考え方は四者四様だが、流通速度の速い情報商品をベースにメディアが成長するというビジョンでは各社ともに共通していた。同業界には広告や資本が集まって成長が加速しており、バブルの様相を呈している。過剰な成長速度に振り回されず、着実に成長していける企業はどこなのか。


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