Microsoftが正式に、Windows Phoneブランドの「Nokia Lumia」を「Microsoft Lumia」とする方針を認めた。年末商戦に向けて、MicrosoftがプッシュするスマートフォンからNokiaの文字は消え、さらには「Windows Phone」も「Windows」として売り込むようだ。シェアがなかなか伸びないWindows Phoneだが、ブランディングにより状況は改善されるのだろうか?
ついにLumiaからNokiaの文字が消える
「Nokia Lumia」として提供されてきたWindows Phoneが、Microsoft Lumiaになる……この情報は、Nokia FranceのFacebookページが最初に報告した。Microsoft Lumiaに向けてブランディングを進めており、Facebookページの名称が変更になることを予告するという内容だった。その後、Nokia UKも続き、10月24日にNokiaデバイスの公式ブログであるNokia Connectionで正式に発表された(関連リンク)。
すでにアプリでは「Nokia Camera」が「Lumira Camera」になるなど、Nokiaの名前が消えつつあるが、ドメイン名やSNSでもNokiaが使われなくなる。そして、端末ブランドからもNokiaの文字はなくなるとMicrosoftの携帯電話マーケティング担当シニアバイスプレジデント、Tuula Rytila氏は説明している。
MicrosoftがNokiaのデバイスとサービス事業の買収を完了したのが今年4月。当初からハイエンドのLumiaについてはNokiaのブランドを次第にMicrosoftにしていく方向性を打ち出していたので、それ自体は計画どおりといえる。
The Vergeが入手したMicrosoftの年末商戦のマーケティング資料によると、ブランドの変更はLumiaだけではなく、Windows PhoneもWindowsとしてプロモーションされるようだ。MicrosoftはOSからアプリまでをWindowsに統合する”One Windows”戦略を掲げており、これも方向性に沿ったものだ。
Microsoftが10月23日に発表した直近の四半期決算で、Lumiaの販売台数は四半期ベースで過去最高となる930万台を記録した。前年同期からは5.6%のアップとなる。それでも、Androidと比較できるレベルではない。第2四半期のスマートフォン市場は27%の2億9520万台を出荷したが、そのうちの2億4960万台がAndroid、iPhoneは3520万台だった。
Windows CEからWindows Mobile、そしてWindows Phoneと名称を変更してきたが、モバイルでのMicrosoftのシェアは増えない。Nokiaと手を組んだことで欧州でのWindows Phoneが2桁に到達したこともあったが、世界市場で見たOSのシェアでは大きな影響は無い。アプリのエコシステムが育っていないという問題はいまだに解決していないし、消費者のスマートフォンに対するマインドセットは相変わらずiPhoneかAndroidのようだ。
ローエンドではNokiaブランドは残るが……
先週、たまたまシンガポールに行った。シンガポールはかつてはNokiaがアジアの拠点としていたところであり、インフラ事業を切り離してNokia Siemens Networkにするという発表を当時のCEO、Olli-Pekka Kallasvuo氏が行なったのもここだ。
アジアやアフリカ市場でNokiaは、安価でしっかりした端末としてブランドも高かった。だが、現在ではNokiaの存在感は薄い。スマートフォンブームは確実に押し寄せており、最初の携帯電話から数台のNokia端末を使っていたというタクシードライバーは、2010年からiPhoneユーザーだ。現在はiPhone 5を私用に、ハンドル近くに固定されていた業務用端末はSamsung製だった。
このドライバーは、NokiaがWindows Phoneのスマートフォンを提供していることも、Microsoftに買収されたことも知っていたが、Windows Phoneは選択肢にないという。なぜかと聞いてみたが、理由らしい理由は特にない様子。ハイエンドのスマートフォンといえば、Apple、Samsung、HTC、ソニーで、現在iPhoneを選んでいる理由は、「Androidが好きではないから」。そして彼は、本当に欲しいのはソニーが作るiOS端末だと笑った。
スマートフォンを選ぶときに選択肢に入っていないというMicrosoft/Nokia Lumiaの現実を代弁しているし、伝統的に強かった市場は低価格化するAndroidに奪われている。
MicrosoftはNokiaの買収時、ローエンド向けに10年間、Nokiaブランドを利用する権利を特許とともに獲得している。これに基づき、Microsoftはブランド力がまだあるローエンドではNokiaブランドを残す。だが、Microsoftになった後のローエンド端末の開発スピードは明らかに鈍化している。Microsoftはすでに、AshaシリーズやAndroidからフォークしたOSを採用するNokia Xシリーズなどのローエンドの取り組みを打ち切ることを発表している。
ゆくゆくは世界中でスマートフォンがデファクトになることを考えると、ローエンドにリソースを注ぐ理由はないし、Microsoftの資金が得られる現在、ハイエンドが成長するまではローエンド事業に依存するという戦略も必要なくなった。であれば、ローエンドのWindows(Phone)端末を開発する方が得策だろう。つまり、携帯電話としてのNokiaは消えていくと考えてよさそうだ。
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