FileMakerといえば、蔵書などのライブラリー管理や住所録、あるいは請求書などの帳票を作るためのお手軽なデータベースソフトというイメージが強い。1980年代からあるカード型(という言葉も懐かしい)データベースソフト[*]の代表格だ。実際、その昔に蔵書検索システムを作った経験を持つ人や、いまも請求書の作成に使っている人は多いだろう。
ところが、今回FileMakerに関する書籍を編集することになり、著者が挙げた構成案に目を通して驚いた。「AWS(Amazon Web Services)を利用してFileMaker Server環境を構築する」「Oracle DatabaseのデータをFileMakerのデータのように扱う」など、本格的な業務システムとして使うための機能が充実していたからだ。
中でも目を引いたのが、「iPadやiPhoneで使える業務システムの構築」。iOSアプリを開発するには、Objective-CやSwiftなどのプログラミング言語を習得する必要があるが、FileMaker本体と無償の「FileMaker Go」があれば、データベースを使った本格的な業務用iOSアプリが、プログラミング不要で実現できるという。
[*]FileMakerはバージョン3からリレーショナル(関係データベース)機能も備えた。
営業支援からショップのキオスク端末まで
実際、FileMakerで作ったモバイルデータベースは、すでにさまざまな企業で活用されている。たとえば小売業向けのシステムでは、納品された商品をiPhoneやiPadのカメラで撮影し、バーコードを読み取り、数量を入力するだけで、商品データベースへの在庫登録が完了する。もちろん、逆にiPhoneやiPadでバーコードを読み取り、在庫状況も確認できる。
ほかにも、顧客管理や在庫管理、営業支援をはじめ、活用の幅は広い。スタッフ向けだけでなく、店頭で顧客に直接操作してもらうキオスク端末のようなシステムも作れる。
通常のiOSアプリはダウンロードもアップデートもApp Storeを経由しなければならないが、FileMakerであれば、データベースファイル(.fmp12ファイル)をiTunes経由やメール添付などでiOSデバイスのFileMaker Goに転送するだけ。もちろん、FileMaker ServerとAWSを利用して、クラウド上での運用も可能だ。
Web Professional編集部から10月に刊行された『FileMaker データベース問題解決ガイド』では、iPhoneやiPadで活用するモバイルデータベースの構築方法について紹介している。FileMaker Go 13が備える新しいキーボードタイプ(ASCII、URL、電子メール、テンキー、数字キーパッド、数字と句読点、電話)の設定や、iOSデバイスをキオスク端末(美術館やコンビニなどにある据え置き型の情報端末)として利用するときのノウハウも掲載した。
FileMakerは、知識のない人でも容易にデータベースを構築できる点で非常に導入しやすいデータベースソフトだ。柔軟性が高いため、実際の開発業務では設定や手法で悩む場面もある。そこで『FileMaker データベース問題解決ガイド』では、正しく安全確実なデータベースをFileMakerで開発し、運用するときのポイントを詳細に紹介することにした。
FileMaker データベース問題解決ガイド
Pro/Advanced/Server/Go
木下雄一朗 著
- 定価:3,780円 (本体3,500円+税)
- 発売日:2014年10月2日(電子版2014年10月14日)
- 形態:B5変型 (440ページ)
- ISBN:978-4-04-866611-4
- 発行:株式会社KADOKAWA