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IoTイベント開催、正式リリース前の「Azure Intelligent Systems Services」紹介

「小さく始めて大きく伸ばす」がマイクロソフト流のIoT

2014年06月17日 06時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 日本マイクロソフトは6月16日、都内でIoT関連カンファレンス「Microsoft IoT Summit 2014」を開催した。記者向けの説明会では、既存のシステム、データからIoT活用を始めることを支援する、同社の“Internet of Your Things”ビジョンや、AzureクラウドによるIoTプラットフォームサービスが紹介された。

マイクロソフト デベロップメント 代表取締役社長 兼 日本マイクロソフト 業務執行役員 最高技術責任者(CTO)、加治佐俊一氏

「身の回りから小さく始めて大きく育てる」IoTを支援

 マイクロソフト デベロップメントの代表取締役社長で、日本マイクロソフトの業務執行役員 最高技術責任者(CTO)も務める加治佐俊一氏は、現在のIoT市場はさまざまな調査会社やベンダーが提唱する定義が交錯しており、顧客は「どこから手を付けていけばいいのか、よくわからない状況」に陥っていると語る。

 そんな中でマイクロソフトが提唱しているのが「Internet of Your Things」ビジョンだ。この“Your”には、「まずは皆さん(顧客)がすでに持っているデバイスやシステム、データ、つまり既存のIT資産からIoTを始めましょう、という意図」が込められていると、加治佐氏は説明する。

 そのためには、最初からIoTに大きな投資をするのではなく、サービスやクラウドを最大限に活用して「小さく始める」ことが重要だ。そして、その取り組みから得られた新しいビジネス洞察を次の取り組みにつなげて「ループを回していく」(加治佐氏)=徐々に価値を拡大していく、というのがマイクロソフトの推奨するIoT戦略である。

既存のデバイスをつなぐことから始め、徐々に価値を拡大していくのが企業のIoT成功戦略だと、加治佐氏は説明した

 加治佐氏は、IoT市場においてマイクロソフトには「3つの強み」があると述べた。1つは、Windows Embeddedなどを通じて従来から組み込みやデバイスの世界に近しい存在であること。次に「小さく始める」ためのクラウドやサービス、ソフトウェアを持っていること。そして、個々の業種向けにソリューションを提供できるパートナーエコシステムを持っていることだ、と言う。

 さらに、マイクロソフトは今年4月開催の「Build 2014」において、IoTデバイスやディスプレイが9インチ未満のデバイスに対する“Windows無償提供”を発表している(関連記事)。スマートデバイス市場でのシェア奪還もあるが、これから急速に立ち上がるIoT市場への浸透をいち早く図る狙いもある。

 「“つながる”ことを前提として作られているWindowsデバイス。そしてAzureクラウドや、SQL Server、HadoopのHD Insight、Office 365のPowerBIといった各種データ/BIサービス。さらに、マイクロソフト以外のデバイスやソフトウェアに対しても、マルチプラットフォームで開発できるツールを提供している」(加治佐氏)

IoTの活用事例やパートナーによるソリューション

業種別IoTソリューションの例。こうしたソリューションはマイクロソフトのプラットフォームに基づきパートナーが開発、提供していく

IoTのプラットフォーム「Azure Intelligent Systems Service」

 マイクロソフトでは現在、限定パブリックプレビューとして「Microsoft Azure Intelligent Systems Service(Azure ISS)」の提供を始めている。加治佐氏はその活用事例として、ロンドン地下鉄(London Underground)がマイクロソフトの協力を受け開発中の業務アプリケーションを披露した。世界初の地下鉄として150年前に開通したロンドン地下鉄では、IoTとAzure ISSを活用したアプリケーションの導入により、設備管理の近代化を図ろうとしている。

 ダッシュボードには、現在の列車運行状況やマップが表示されている。マップをタップして1つの駅にドリルダウンすると、センサーが取得した駅舎内の気温や騒音レベル、各設備からのアラート情報などが表示される。アラートに従って障害(予兆)を確認し、メンテナンスタスクや担当者の割り当てができる仕組みだ。「最も重要な点は、設備の劣化がライブデータにより即座に発見できるようになったことだ」(ロンドン地下鉄担当者)。

デモでは、IoT活用を推進するロンドン地下鉄の業務アプリケーションが紹介された。駅や列車のセンサー、カメラなどから得られた情報のダッシュボード

ロンドン地下鉄のアプリケーション。アラートが発生しているエレベーターを地図上でクリックすると、障害の内容(ここでは異常振動の発生)や影響分析の結果が表示される。そのままチケッティングシステムでメンテナンスのタスクや担当者を登録できる

 加治佐氏は、「IoTの大きな可能性がある一方で、(テクノロジーやシステムが)断片化されていて(IoTの実践には)難しい状況がある」と語る。そのため、Azure ISSはクラウド上で、接続、構成、活用、管理のツール群と、それを活用したパートナーによる拡張(業種別ソリューション)をまとめて提供する方向性を打ち出している。

 Azure ISSのパブリックプレビュー提供は「近日中に始まる」(加治佐氏)予定で、技術的な詳細はその時点で明らかにされる予定。加治佐氏は、すでにAzure ISSのコンピテンシーパートナーが世界で198社いることを挙げ、これから順次、業種向けのソリューションを拡充していくことを強調した。

Azure ISSでは幅広いデバイスとの「接続」、デバイス管理の「構成」、SQLやHD Insightによるデータの「活用」、そして「管理」と「保護」を一元提供する

デバイス製造のハードウェアベンダー、アプリケーション開発のソフトウェアベンダー、そしてSIベンダーという3種類のパートナーと共に業種別ソリューションを提供していく

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