「経営破綻」の4文字はセンセーショナリズムの常とう句です。自社や取引先が破綻すればわが身に降り掛かるので多くの人が関心を持ちます。「あの立派な会社まで経営が危うい」のは記事にしやすいのです。しかし、日本企業3284社が公表している財務諸表をさまざまな指標で分析して分かったのは、実は余裕のある会社が多いことです。どこかの会社が黒字でも、給料やボーナスが増えるのはその社員だけ。たとえ過去最大の利益を上げてもそれだけでは短いニュース記事にしかならず、黒字企業の話はなかなか伝わってこないのです。
余裕は怠慢を生みますが、一方で次の中核事業を育てるチャンスでもあります。規制に守られ、高給と安定の代表だった電力会社は、いったん原発が止まり、円安になると電気料金の値上げ以外に打つ手がなくなったといいます。いま安泰だからといって、変革を怠っていいわけがありません。
イノベーションにはギャンブルの側面があります。必ず成功する新規事業はなく、確度を高める努力をしつつ、何度もトライしなければいけません。経営者に継続してイノベーションを図る意志があるのか読み取るために「純利益÷人件費」で算出した「イノベーションまでのタイムリミット」を見ると、ゲームや菓子、素材・素材加工品メーカーが上位に現れました。こうした業界では、長期にわたって従業員を育て、事業の柱をつくり続けることが経営の方針として受け継がれているのでしょう。日本的経営を続ける優れた企業が健在であることが指標から読み取れ、各社の話を聞きに行こう、と編集部で話し合った特集でした。
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