先日、あるメーカーの幹部とお話しする機会がありました。「失われた20年」と言われた時代、この会社では新規事業や挑戦的な研究に手を出さず、売り上げを死守することに徹したといいます。その結果、現在の中堅社員はできない理由を見つけて「つぶす」ことばかりに長けてしまい、上層部は会社の将来に相当な危機感を持っているそうです。
1970年代生まれが多いアスキークラウドの読者は、あと20年は現役で働き続けないと定年を迎えられません。事前調査で浮かび上がった「激動の時代にリーダーになるのは無理でも、せめてリーダーに必要とされる存在でありたい」というニーズに応えられるよう、特集では仕える上司を3つのタイプに分類しました。
- ビジョンを掲げる夢想型
- 社内政治に長けた調整型
- プロ意識に徹する実務型
売り上げや利益の落ち込みに直面した企業は、さまざまな改革で生き残ろうとします。改革に成功した企業だけが成長し続けられるのですから、組織をどう立て直したのかは、将来の経営層や管理職の人格形成に大きく影響します。上司の価値観が何かに偏っているとすれば、それは上司が過去、何につまずいたのかの裏返しです。
高い目標や一見できそうにない構想を掲げる夢想型の上司は、ビジョンのない組織が変化に適応できず、あるいは大企業病に陥って各部署が割り当てられた仕事に固執するのが許せません。ソフトバンクの孫 正義社長の下では、とにかくビジョンを実行し、次々と打ち出されるビジョンを支える巨大な黒字事業を死守する人物が「仕事ができる」として評価されるでしょう。
部署同士の利害対立を嫌う調整型の上司は、営業や開発といった機能が歯車としてお互いにかみ合い、全社一丸となって前進する状態に美しさを感じます。少しの赤字は気にならず、むしろ個人プレーで生まれた黒字を快く思いません。日本企業の上級管理職に多いタイプです。こういう上司の下で「仕事ができる」と評価されるには、部下を掌握し、すべてがうまく回っている状況を作り出すことが重要です。
現場で仕事を回すことに長けた実務型の上司は、自分と同じように仕事ができない人が理解できません。仕事をこなせれば干渉せず、自由にできる反面、仕事のできない人には過干渉になりやすく、軋轢が生まれやすくなります。「経営者の仕事とは、同じ失敗を繰り返さないこと」などの発言があるローソン会長の新浪 剛史氏はおそらくこのタイプでしょう。
大本営陸軍部の会議室には、「会シテ議ス、議シテ決スル」と書かれていたといいます。会議、議決、決行とつなげて考えれば、話し合って、決めて、実行するところまで到達しないと、組織というよりも、勝手に行動する個人や部署の集まりです。明確なビジョンに基づいて、組織のリソースをどこに振り向けるか調整し、着実に計画を実行する。3つのタイプそのままの上司はいませんが、自分の上司が何を重視して組織を運営しようとしているのか見極めることは、あと20年生き残る上で欠かせません。アスキークラウド7月号では、「仕事ができる」の意味を、アマゾン、グーグルなどの事例を交えて、紹介しています。

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