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買いやすい、売りやすいパッケージ作りで売り上げを伸ばす

EMC VSPEXはなぜ成功したか?ネットワンに成功の秘訣を聞く

2014年05月23日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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2013年のEMCパートナーアワードで「ソリューション部門 IT Transformation VSPEX賞」を受賞したネットワンシステムズは、「VSPEX」を自治体や教育機関向けのVDI/仮想基盤ソリューションとしてしつらえ、大きな成果を上げた。成功の秘訣についてネットワンシステムズの2人に聞いた。(インタビュアー:TECH.ASCII.jp 大谷イビサ)

パッケージ化で自治体と教育機関にフォーカス

ASCII.jp 大谷:まずは「ソリューション部門 IT Transformation VSPEX賞」の受賞おめでとうございます。受賞された感想を教えてください。

ネットワンシステムズ 理事 技術本部長 大塚 浩司氏:2012年12月に市場投入したVSPEXですが、自治体や教育機関に特化したVDI(Virtual Desktop Infrastructure)/仮想基盤ソリューションを作り、「ネットワンのVSPEX」として出させていただきました。1年目は4ユーザーでしたが、2年目は20ユーザーまで受注できました。社内目標までは到達していないものの、2年間継続した成果として賞をいただいたので、うれしく思っています。

ネットワンシステムズ 理事 技術本部長 大塚 浩司氏

ASCII.jp 大谷:VSPEXはパートナーが構成を自由にカスタマイズできるのが大きな売りですが、ネットワンさんは自治体や教育機関向けソリューションにフォーカスしたんですね。

大塚氏:VSPEXはパッケージが作りやすく、必ずしも大規模向けではないという特徴があります。ですから、エンタープライズの製造業で何万人という規模ではなく、自治体や教育機関など何千人というクラスが最適でした。そこでEMCのストレージとシスコの「UCSサーバー」、仮想化ソフトと仮想デスクトップはVMwareの「vSphere」と「Horizon View」をセットし、さらにネットワンの設計・構築・保守、運用監視サービスまでをすべてパッケージ化しました。パッケージ化により、納期短縮を可能とし、コスト面でも安価にソリューションを提供することが可能となりました。

ASCII.jp 大谷:どのようなユーザーが導入したのでしょうか? 名前を出せるところを教えてください。

大塚氏:仮想基盤では福岡県の自治体向けクラウドサービスや所沢市の基幹システム・情報システムの仮想化、愛知県のプライベートクラウド基盤、大学の情報基盤などで導入していただきました。VDIでの先行ユーザーは、XPのサポート切れという課題が大きかったですが、今導入している自治体はワークスタイルの変革を狙っています。正直、多くの自治体はVDIがなかったら、ファットで運用コストの高いPCをそのまま使い続けていました。我々がソリューションと市場を作ったことで、選択肢が生まれたと思っています。

ASCII.jp 大谷:こうした事例では、どういった背景でVDIに移行したのでしょうか?

大塚氏::たとえば、最近では教育委員会での実績が増えています。教育委員会にとっては、自宅で仕事をするために教職員がUSBメモリなどを持ち帰って、紛失などによる情報漏えいが問題となっています。かといって学校に来なければ仕事ができないというのも時流に合いません。こうした課題に対して、セキュリティを確保しながら、どこでも仕事ができるVDIは最適なソリューションであり、この市場にVSPEXはしっかりはまる製品です。オープンで、検証済みで、安価にご提供できるということで、市場にマッチしていると考えています。

EMCとのおつきあいは戦略があるから

ASCII.jp 大谷:ここまで導入実績を増やせたのは、なぜだと思いますか?

大塚氏::とにかく社内的に売りやすいものに仕上げたからだと思いますよ。単にハードウェアの組み合わせだけではなく、設計・構築・保守や運用監視サービスを組み合わせました。要件定義から導入期間、価格まですべて含まれているので、評価も高かったですし、営業マンも売りやすかったようです。実際、営業先としてピックアップした400の自治体や教育機関のうち、8割近くまでコンタクトができました。プロスペクトも100件以上になり、今年度以降大きな期待をしています。

また、弊社の「Solution Briefing Center」で、お客様にソリューションを体験していただいているのも大きいです。教務や校務のアプリケーションを載せて、自宅や外出先を模して使っていただけます。もともと、企業向けだったのですが、自治体や教育機関向けにデモを作り直しました。お客様が最後に導入を決める大きな要因となっています。

ネットワンシステムズ 経営企画本部 商品企画部 部長 張 偉氏:VDIはサイジングがなにより重要です。その点、われわれは数多くの事例で蓄積したノウハウと検証結果、アセスメントなどのサービスを持っていますので、そこらへんも評価されていると考えています。

ネットワンシステムズ 経営企画本部 商品企画部 部長 張 偉氏

ASCII.jp 大谷:EMCの優位点をどう考えていますか?

張氏:我々がEMCさんとおつきあいしているのは、EMCには明確な戦略があるからです。パートナーに製品を供給するだけではなく、パートナーの立場で今までホワイトスペースだった部分をどのように開拓しているか、いっしょに考えてくれています。さらにそれをサポートするための投資をしてくれます。EMC製品単体での優位点やメリットはたくさんありますが、我々は製品の機能や価格を紹介するより、ワークスタイルの変革やコストの削減などのソリューションを紹介しています。ですから、お客様には我々は製品を提案するわけではなく、ソリューションを提案しています。

ASCII.jp 大谷:EMCさんとの連携でうまく進んだところはどんな部分でしょうか?

張氏:ネットワンではEMCジャパンだけではなく、米国のEMCとも緊密に連携し、Go To Marketのイニシアティブのもと、さまざまなプロモーション活動、エンジニアの育成、サポート体制の強化、お客様への共同提案等の活動を行ってきました。その結果、3~4年でビジネスを大きく伸ばすことができました。

大塚氏:VSPEXに関しては、EMC社だけではなく、Cisco社、VMware社、トレンドマイクロ社とも緊密に連携してパッケージが構成されています。先日もネットワンの音頭で、各社に集まってもらい、さらにパッケージの強化を図っています。

ASCII.jp 大谷:なるほど。2014年も期待できそうですね。

張氏:現在は自治体や教育機関向けソリューションとして展開していますが、すでにクラウドサービスの基盤としてVSPEXを使っているお客様もいますし、エンタープライズ向けの製品も開発していきます。今後はVSPEXを我々のクラウドインフラ基盤の標準構成として提供していきます。また、VSPEXの強化はもちろんですが、今後はよりEMCとの協業を深めていきます。たとえば、ViPRを軸とした「Software-Defined DataCenter」についても積極的に取り組んでいく予定です。

大塚氏:VSPEXに関して言えば、今までは小規模な構成でご検討いただいたお客様が多かったですが、構成を変えれば、5000台や1万台という規模のVDIも可能です。実際、こうしたお客様も出てきているので、今年は件数だけではなく、金額面でも期待できると思います。とにかく、これまでEMCジャパンのハイタッチセールスとの協業がうまく行っているので、今後も継続的に市場開拓におつきあいいただきたいです。

今後も継続的に市場開拓におつきあいただきたいです(大塚氏)

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