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石井英男の『研究室研究所』

この研究者・開発者がスゴイ!――石渡昌太氏

海外と日本でクラウドファンディングに成功した「RAPIRO」の秘密

2014年05月01日 11時00分更新

文● 石井英男

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金型製作と射出成形を担当している株式会社ミヨシの杉山耕治さん(左)

本格的な金型を利用して外装を量産

 RAPIROの魅力の1つに、かわいらしい外観が挙げられるが、この外装は、大手メーカーの量産品と同じく、樹脂を射出成形して作られているため、表面が滑らかで精度も高い。射出成形を行なうには、金型を製作する必要があるが、本格的な金型の製作には多額のコストがかかるため、かなりの出荷数が見込めないと、金型を利用することは難しい。そのあたりを担当したミヨシの代表取締役社長・杉山耕治さんにも、お話を伺った。

―― 外装の樹脂はABSの射出成形ということですが、その場合は金型が必要ですよね。金型にもいろいろあって、たくさんショットを取れるけどとても高いものと、そこまで数は作れないけど、安くできる金型があると聞きましたが、RAPIROの金型は、どのようなものでしょうか。

杉山 「RAPIROの金型はアルミ金型を利用しています。少量生産するためにシリコン型、樹脂型などで成形する場合もありますが、今回我々は、鉄の一歩手前の強度を持つアルミ合金で作っています。ですから、表面の品質なども普通の金型と変わりません。ただ、鉄に比べるとやはり柔らかいので、何百万回は厳しいですね」

RAPIROに使われている金型の一部ちょうど金型のクリーニング作業中だった

―― ということは、数万回は行けると?

杉山 「10万回行ければいいなという感じですね。今回の形状であれば1万、2万は確実に行けます」

―― それはすごい。こういったロボットで、数万体も売れたものってほとんどないですよね」

杉山 「以前、ロボット格闘技を企画している方と知合った際に、『ロボットは大体いくらで買えるんですか?』とお聞きしたら、最低でも10万円くらいは必要、しかもプログラムもやらなくちゃいけないと言われまして、これは動かしたいけど僕には無理だなと一旦諦めた経験があるんです。

 翻ってRAPIROは4万円台で買えて、しっかりした外装も付いているロボットなので、購入に対してのハードルは低いと思いますね」

RAPIROの外装に使われているABS樹脂ペレット。色にもこだわっており、右写真のようなクリーム色寄りの白ではなく、あくまで左写真のようなハッキリした白の発色を求めて試行が繰り返された

見た目で“ジャケ買い”する人も多い

―― やはり、アニメのロボットを見慣れていると、ロボットはきちんとした外装があるのが当たり前と思っている方も多いので、アルミと黒いサーボモーターが剥き出しで15万円とか言われると、躊躇しますよね。それから、動かしているとサーボモーターが壊れることも多いですから。

石渡 「それはこのRAPIROでも一緒ですよ(笑)」

―― でもRAPIROはそんなに激しく倒れたりはいませんよね?

杉山 「ああ、人間の等身に近いロボットだとすぐ倒れますよね」

石渡 「とはいえ、サーボモーターは燃えるし、壊れるものというのは、常識といいますか。でも、RAPIROって逆にそこが難しいのです。従来のロボットキットを買っている方々は、ある程度猛者というか、“わかっている”人たちですよね。

 一方、RAPIROは秋葉原のテクノロジアさん、ロボットセンターさん、千石電商さんなどの店頭に置いていただいているのですが、そうすると割と衝動買いされる方が多いのです。もっとも、我々もパッケージ含めて値段と見た目で選んでいただけるように作ってはいるのですが……」

射出成形機に頭部の金型をセットしたところ整形されたプラスティックは、写真のように裏から多数の棒が伸びることで、金型からはがされる

―― タイミング的には新入学の御祝いとか。シーズンは過ぎましたが、クリスマスに間に合っていれば、ちょっと大きな男の子へのプレゼントとしてもいいですよね。

石渡 「そうです。クリスマスに関しては、ここから次のクリスマスに向けて準備していくという感じですね。いわゆるジャケ買いというか、見た目で判断して買う方が多いので、このRAPIROを機に、通電中に無理に力をかけたらサーボモーターが壊れるよとか、そういう基本を学ぶためのキットになればいいなと思います。

 それから、プログラムできることも含めて、値段の中に含まれているものと含まれていないものがあります。プログラムに関しては、基本的なプログラムはもう公開していますし、あらかじめ書き込まれていますが、自分で勉強していただかないといけない部分も結構あります」

―― ユーザーフォーラムがありますよね? 英語で書いてる人も多くて、外国の方が多いなあと思いました。

石渡 「そうですね。やはり、現時点では海外の人がかなり多いです。質問もありますし、いろいろユーザープロジェクトも動いているようです。RAPIRO上で何々を動かすみたいな、Linuxのプログラムの中でRAPIROで使ってみたらどうなるみたいな議論も」

―― それはやはり、Raspberry PIを載せられるという特徴ならでは、ですよね。スイッチサイエンスやAmazon、店頭販売の調子はいかがでしょうか?

石渡 「売れ行きはすごく好調です」

―― 大体どれくらいの時間で組み立てられますか?

石渡 「およそ3~4時間。工学部の学生さんにアルバイトで組み立ててもらうと1~2時間ですね」

杉山 「基本はタッピングビスですが、じつは一箇所だけ、頭のところにナットが埋めこんであります。これはRaspberry PIを何回も出し入れするだろうから、強度を上げておきたいという、石渡さんのこだわりですね」

この小さなサーボモーターが……外装内に収まって関節を動作させる

―― こういうロボットって結局、サーボモーターのコストがかなりの割合を占めますよね。いかに安くていいサーボを探すかみたいな。

石渡 「そうですね。RAPIROは値段相応のスペックですので、そこはご理解していただいて。トルクもそんなにありませんし、樹脂ギアですから。ただ、値段にしてはいいものを使っていると自負しています」

―― RAPIROは、目にフルカラーLEDが入っているのも面白いかなと思います。色でだいぶ表情が変わりますし。

杉山 「ここも石渡さんがこだわったところで、最初、目の色はもう少し濃い白だったんです。光拡散といって光が透過する素材なのですが、ぼやーっと見える感じで結構暗めだったところを、明るい部屋では判別しづらいということで、2回くらい調色を改めています」

石渡 「そうですね。ここは綺麗に光の色が見えなくちゃいけないということで、樹脂材質を調整しました」

RAPIROの両目にはフルカラーLEDが入っており、さまざまな色に光る
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