レノボが舵を切る先は?
レノボの基本戦略は、「PC+」と呼ばれる。
PC+とは、PCおよびPC以外の製品群を指す。
売上高の約8割を占めるPCは、「守り(プロテクト)の戦略」とし、レノボが得意とする新興国市場を中心に、幅広く市場シェアを拡大することを狙う。
一方で、PC以外の領域として、タブレット、スマートフォン、スマートテレビを位置づけ、これらの製品は、中国市場を中心に成功事例を構築。その経験をもとに、先進国市場においても展開していくというものだ。これを「攻め(アタック)の戦略」と呼ぶ。
PC+においては、最も成長が著しいのがスマートフォン。タブレットを含んだモバイル事業の売上高は全体の16%とまだ低いが、期を追うごとに構成比を拡大している。出荷台数という観点でみれば、PCの出荷台数は、すでに、スマートフォンとタブレットをあわせたモバイル製品が上回っている
Motorola Mobilityの買収は、さらにモバイル事業を加速する上でも大きな威力を発揮するだろう。
エンタープライズ市場はレノボの主戦場ではなかったが
一方で、IBMのx86サーバーの買収は、レノボにとって新たな挑戦となる。
レノボにおけるエンタープライズ事業の構成比は、現時点では「その他事業」の5%以下のなかに含まれており、同社が得意とする分野ではない。
では、それにも関わらず、レノボはなぜ、IBMのx86サーバー事業を買収したのだろうか。
それにいくつかの理由があると、ラピン社長は語る。
ひとつは、レノボが強みとするグローバル規模でのサプライチェーン、および効率性の高さによって、x86サーバー市場における競争力を発揮できると考えている点だ。「レノボの効率性によって、サーバーそのものでも収益を上げ、成長できると考えている」とする。
2つめには、x86サーバー市場が、新興国を中心に、今後5年間は成長を続けると見ており、とくにレノボが得意とする新興国市場において事業拡大が見込めると考えているからだ。
「この2つの観点から、レノボだからこそ、x86サーバー市場での価値が発揮できる」というわけだ。
そして、x86サーバー事業の買収に伴い、IBMとの戦略的提携も行うことを発表している点も見逃せない。
「レノボが長けているハードウェアビジネスに加えて、IBMが持つ保守やサービス、ソリューションを活用し、これまで以上の価値を提供できる。これは長年にわたるIBMとの強力なパートナーシップによるもの」だとする。
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