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「プレミアムな乗車体験」は東京に浸透するのか

単なるタクシー配車サービスではない、Uberという「選択肢」

2014年03月03日 22時43分更新

文● ASCII.jp編集部

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Uber Japanの記者発表会の会場は、米国大使館だった

アプリからハイヤーを呼べる
「Uber」が東京で正式サービス開始

 「Uber」(ウーバー)は、2009年にアメリカで創立されたサービスだ。Uberのアプリ(iOS/Android対応)を操作すると、指定した場所にハイヤーを呼べるというもの(関連記事)。3月3日現在、31ヵ国81の都市で利用されている。

 日本でもUber Japanが昨年11月から試験運行を開始していたが、3月3日より正式に東京でサービスを開始。同日、米国大使館で記者発表会を開いた。会場で、米Uber Technologiesアジア地域統括最高責任者のアレン・ペン氏と、Uber Japan代表取締役社長の塩濱剛治氏に話を聞いた。発表会の様子も交えてお届けする。

Uberのサービスは
“Effortless”をもたらす

 まずは今回の東京におけるサービス開始にあたり、ペン氏に、東京という都市をどう考えているか質問したところ、「まず、アジアは我々としても最も優先順位の高い地域。その中でも東京は、アジアの都市の“King of the City”といえる。人口もそうだが、移動手段も発達している。だからこそ、我々にとって東京に参入するのは当然のことだった」と語り、「品質の高さ、効率の高さに対する需要がある都市だ。Uberはそれに応えられる」と話した。

発表会のスライドから。サービス開始5ヵ月におけるサービスに登録した人数が、世界の主要都市と比べても東京は多かったという。「東京におけるサービスと需要のマッチが、ベストだったということを示唆している」(ペン氏)

 「Uberの野望は、世界中の主要な大都市全てにおいて、我々のサービスを提供すること」と話すペン氏だが、とはいえ、東京を始めとした主要都市のタクシー業界でトップに立つことを目指しているわけではないという。ペン氏は、「顧客」には“3つのセグメント”があると考えている、と話す。

 その3つとは何か。1つ目はカスタマー、利用者。彼らには、クオリティーの高い交通手段として、消費者に新たな選択肢を提供できる。2つ目はハイヤー会社、パートナー企業だ。彼らはUberと協力し、さらに効率化していくことで、売上を伸ばしていくことができる。3つ目はビジネスを展開する都市そのものだ。Uberのビジネスが成長することで、都市の住民の交通の選択肢が増え、より住み良い場所になるのだという。これらの「顧客」に価値を提供するのがUberの仕事だ──とペン氏は説明する。

米Uber Technologiesアジア地域統括最高責任者、アレン・ペン氏

 したがってUberは、進出した都市の交通手段を変えようとしているのではなく、「より品質の高いサービスを提供することで、より良い場所にしようとしている」。ペン氏は、Uberは「差別化された特別なエクスペリエンスを提供できる」という点において、消費者に新たな選択肢としての移動手段を提供できるサービスだとした。

 インタビューの最後に、「Uberというサービスを一言で表現するなら?」という質問をしたところ、ペン氏は少し考えて、“Effortless”という単語を挙げた。直訳すれば、「手間がいらない」、「骨を折る必要がない」といったような意味だ。

 「Uberを使えば、ユーザーの観点からしなくてはいけないことは、アプリを起動してボタンを押すだけだ。そうすれば素晴らしい車がやってくるから、それに乗って、リラックスしたりエンジョイしたりして、あとは降りるだけでいい。そういう意味で、Uberの良さはこの単語に凝縮されているかな」とペン氏は話す。

Uberの「プレミアムな乗車体験」は
あくまで「選択肢」

発表会のスライドの1つには、「Premium Ride」という言葉が掲げられていた

 では、Uber Japanはサービスを東京でローカライズしていくに辺り、何に注力していくのだろうか。

 Uber Japanに関して「あくまで、やっと今からスタートしたという認識でいる」と語る塩濱氏は、サービスを広く薄く宣伝するリソースはないということを踏まえ、「ある程度コアな顧客に理解してもらった上で、その人から発信してもらう」という波及効果に重点を置いていると話す。そのため、むやみに宣伝をするのではなく、オフィシャルサイトに近いと語るブログを中心に、Twitter、Facebookなどのソーシャル向けに情報を届けていきたいとした。

発表会のスライドでは、SNSにおけるユーザーの声を主に紹介していた

 さらに、塩濱氏もペン氏と同じく、「Uberはあくまで選択肢。タクシーマーケットをかっさらおうなどという考えは全くない」と話す。例えばいつもは普通のタクシーや他の交通機関を使い、記念の日にはUberを使う……といった使い方でも構わないと言う。

Uber Japan代表取締役社長、塩濱剛治氏

 それでは、Uberを他の交通手段と差別化するものは何か。塩濱氏が提示するのは、ハイヤーを使った「プレミアムな乗車体験」だ。「ハイヤーというサービスは、一言で言ってしまえば法人のもので、今まではプレミアムなものだった。それを一般の方にも、オンデマンドで使えるようにする」と塩濱氏は語る。

 つまり、ハイヤーを持つ企業とそこで働くドライバー、消費者を結びつけるプラットフォームのサービスがUberであるというわけだ。それにより、一般の消費者でもスマートフォンでUberを使うことで、「誰でも自分専用の運転手を持っているかのような感覚で、心地よく移動ができる」。それがUberのいう「プレミアムな乗車体験」なのだという。

 その体験を、「選択肢」として提供するのがUber Japanの目指すところなのか──という質問に頷いた塩濱氏は、インタビューの最後で、以下のように説明した。「たとえば、ルイ・ヴィトンはプレミアムなものである一方で、今の日本では誰も買えないというものではない。Uberもプレミアムなサービスなのだけれど、当たり前に誰でも使えるようになれば、それは成果なのかなと思う」。

 なお、エリア拡大の計画について話を聞いたところ、いたずらに拡大するのではなく、順次、人口密度が高く、それでいてサービスの需要がある場所をカバーしていくという方針だという。「そういう意味では、サービスを提供するエリアが飛び地になるということもありうる」とし、拡大は今後の展開次第だとした。

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